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ルカ傳
🔝
〘108㌻〙
第1章
1
我
われ
らの
中
うち
に《[*]》
成
な
りし
事
こと
の
物語
ものがたり
につき、
始
はじめ
よりの
目擊者
もくげきしゃ
にして、[*或は「篤く信ぜられたる事」と譯す。]
2
御言
みことば
の
役者
えきしゃ
となりたる
人々
ひとびと
の、
我
われ
らに
傳
つた
へし、
其
そ
のままを、
書
か
き
列
つら
ねんと、
手
て
を
著
つ
けし
者
もの
あまたある
故
ゆゑ
に、
3
我
われ
も
凡
すべ
ての
事
こと
を
最初
さいしょ
より
詳細
つまびらか
に
推
お
し
尋󠄃
たづ
ねたれば、
4
テオピロ
閣下
かくか
よ、
汝
なんぢ
の
敎
をし
へられたる
事
こと
の
慥
たしか
なるを
悟
さと
らせん
爲
ため
に、これが
序
ついで
を
正
たゞ
して
書
かき
贈
おく
るは
善
よ
き
事
こと
と
思
おも
はるるなり。
5
ユダヤの
王
わう
ヘロデの
時
とき
、アビヤの
組
くみ
の
祭司
さいし
に、ザカリヤという
人
ひと
あり。その
妻
つま
はアロンの
裔
すゑ
にて
名
な
をエリサベツといふ。
6
二人
ふたり
ながら
神
かみ
の
前󠄃
まへ
に
正
たゞ
しくして、
主
しゅ
の
誡命
いましめ
と
定規
さだめ
とを、みな
缺
かけ
なく
行
おこな
へり。
7
エリサベツ
石女
うまずめ
なれば、
彼
かれ
らに
子
こ
なし、また
二人
ふたり
とも
年
とし
邁
すゝ
みぬ。
8
さてザカリヤその
組
くみ
の
順番
まはり
に
當
あた
りて、
神
かみ
の
前󠄃
まへ
に
祭司
さいし
の
務
つとめ
を
行
おこな
ふとき、
9
祭司
さいし
の
慣例
ならはし
にしたがひて、
籤
くじ
をひき
主
しゅ
の
聖󠄄所󠄃
せいじょ
に
入
い
りて、
香
かう
を
燒
や
くこととなりぬ。
10
香
かう
を
燒
や
くとき
民
たみ
の
群
むれ
みな
外
そと
にありて
祈
いの
りゐたり。
11
時
とき
に
主
しゅ
の
使
つかひ
あらはれて、
香壇
かうだん
の
右
みぎ
に
立
た
ちたれば、
12
ザカリヤ
之
これ
を
見
み
て、
心
こゝろ
騷
さわ
ぎ
懼
おそれ
を
生
しゃう
ず。
13
御使
みつかひ
いふ『ザカリヤよ
懼
おそ
るな、
汝
なんぢ
の
願
ねがひ
は
聽
き
かれたり。
汝
なんぢ
の
妻
つま
エリサベツ
男子
なんし
を
生
う
まん、
汝
なんぢ
その
名
な
をヨハネと
名
な
づくべし。
14
なんぢに
喜悅
よろこび
と
歡樂
たのしみ
とあらん、
又󠄂
また
おほくの
人
ひと
もその
生
うま
るるを
喜
よろこ
ぶべし。
15
この
子
こ
、
主
しゅ
の
前󠄃
まへ
に
大
おほい
ならん、また
葡萄酒
ぶだうしゅ
と
濃
こ
き
酒
さけ
とを
飮
の
まず、
母
はは
の
胎
たい
を
出
い
づるや
聖󠄄
せい
靈
れい
にて
滿
みた
されん。
108㌻
16
また
多
おほ
くのイスラエルの
子
こ
らを、
主
しゅ
なる
彼
かれ
らの
神
かみ
に
歸
かへ
らしめ、
17
且
かつ
エリヤの
靈
れい
と
能力
ちから
とをもて、
主
しゅ
の
前󠄃
まへ
に
徃
ゆ
かん。これ
父󠄃
ちち
の
心
こゝろ
を
子
こ
に、
戻
もど
れる
者
もの
を
義人
ぎじん
の
聰明
さとき
に
歸
かへ
らせて、
整
とゝの
へたる
民
たみ
を
主
しゅ
のために
備
そな
へんとてなり』
18
ザカリヤ
御使
みつかひ
にいふ『
何
なに
に
據
よ
りてか
此
こ
の
事
こと
あるを
知
し
らん。
我
われ
は
老人
としより
にて、
妻
つま
もまた
年
とし
邁
すゝ
みたり』
19
御使
みつかひ
こたへて
言
い
ふ『われは
神
かみ
の
御前󠄃
みまへ
に
立
た
つガブリエルなり、
汝
なんぢ
に
語
かた
りてこの
嘉
よ
き
音󠄃信
おとづれ
を
吿
つ
げん
爲
ため
に
遣󠄃
つかは
さる。
20
視
み
よ、
時
とき
いたらば、
必
かなら
ず
成就
じゃうじゅ
すべき
我
わ
が
言
ことば
を
信
しん
ぜぬに
因
よ
り、なんぢ
物
もの
言
い
へずなりて、
此
これ
らの
事
こと
の
成
な
る
日
ひ
までは
語
かた
ること
能
あた
はじ』
21
民
たみ
はザカリヤを
俟
ま
ちゐて、
其
そ
の
聖󠄄所󠄃
せいじょ
の
內
うち
に
久
ひさ
しく
留
とど
まるを
怪
あや
しむ。
22
遂󠄅
つひ
に
出
い
で
來
きた
りたれど
語
かた
ること
能
あた
はねば、
彼
かれ
らその
聖󠄄所󠄃
せいじょ
の
內
うち
にて
異象
いしやう
を
見
み
たることを
悟
さと
る。ザカリヤは、ただ
首
くび
にて
示
しめ
すのみ、なほ
啞
おふし
なりき。
23
斯
かく
て
務
つとめ
の
日
ひ
滿
み
ちたれば、
家
いへ
に
歸
かへ
りぬ。
〘79㌻〙
24
此
こ
の
後
のち
その
妻
つま
エリサベツ
孕
みごも
りて
五月
いつつき
ほど
隱
かく
れをりて
言
い
ふ、
25
『
主
しゅ
、わが
恥
はぢ
を
人
ひと
の
中
なか
に
雪󠄃
すゝ
がせんとて、
我
われ
を
顧󠄃
かへり
み
給
たま
ふときは、
斯
か
く
爲
な
し
給
たま
ふなり』
26
その
六月
むつき
めに、
御使
みつかひ
ガブリエル、ナザレといふガリラヤの
町
まち
にをる
處女
をとめ
のもとに、
神
かみ
より
遣󠄃
つかは
さる。
27
この
處女
をとめ
はダビデの
家
いへ
のヨセフといふ
人
ひと
と
許嫁
いひなづけ
せし
者
もの
にて、
其
そ
の
名
な
をマリヤと
云
い
ふ。
28
御使
みつかひ
、
處女
をとめ
の
許
もと
にきたりて
言
い
ふ『めでたし、
惠
めぐ
まるる
者
もの
よ、
主
しゅ
なんぢと
偕
とも
に
在
いま
せり《[*]》』[*異本「なんぢば女のうちにて惠まるる者なり」との句を加ふ。]
29
マリヤこの
言
ことば
によりて
心
こゝろ
いたく
騷
さわ
ぎ、
斯
かゝ
る
挨拶
あいさつ
は
如何
いか
なる
事
こと
ぞと
思
おも
ひ
迴
めぐ
らしたるに、
30
御使
みつかひ
いふ『マリヤよ、
懼
おそ
るな、
汝
なんぢ
は
神
かみ
の
御前󠄃
みまへ
に
惠
めぐみ
を
得
え
たり。
31
視
み
よ、なんぢ
孕
みごも
りて
男子
なんし
を
生
う
まん、
其
そ
の
名
な
をイエスと
名
な
づくべし。
32
彼
かれ
は
大
おほい
ならん、
至高者
いとたかきもの
の
子
こ
と
稱
とな
へられん。また
主
しゅ
たる
神
かみ
、これに
其
そ
の
父󠄃
ちち
ダビデの
座位
くらゐ
をあたへ
給
たま
へば、
109㌻
33
ヤコブの
家
いへ
を
永遠󠄄
とこしへ
に
治
をさ
めん。その
國
くに
は
終󠄃
をは
ることなかるべし』
34
マリヤ
御使
みつかひ
に
言
い
ふ『われ
未
いま
だ
人
ひと
を
知
し
らぬに、
如何
いか
にして
此
こ
の
事
こと
のあるべき』
35
御使
みつかひ
こたへて
言
い
ふ『
聖󠄄
せい
靈
れい
なんぢに
臨
のぞ
み、
至高者
いとたかきもの
の
能力
ちから
なんぢを
被
おほ
はん。
此
こ
の
故
ゆゑ
に
汝
なんぢ
が
生
う
むところの
聖󠄄
せい
なる
者
もの
は、
神
かみ
の
子
こ
と
稱
とな
へらるべし。
36
視
み
よ、なんぢの
親族
しんぞく
エリサベツも、
年
とし
老
お
いたれど、
男子
なんし
を
孕
はら
めり。
石女
うまずめ
といはれたる
者
もの
なるに、
今
いま
は
孕
みごも
りてはや
六月
むつき
になりぬ。
37
それ
神
かみ
の
言
ことば
には
能
あた
はぬ
所󠄃
ところ
なし』
38
マリヤ
言
い
ふ『
視
み
よ、われは
主
しゅ
の
婢女
はしため
なり。
汝
なんぢ
の
言
ことば
のごとく、
我
われ
に
成
な
れかし』つひに
御使
みつかひ
、はなれ
去
さ
りぬ。
39
その
頃
ころ
マリヤ
立
た
ちて、
山里
やまざと
に
急󠄃
いそ
ぎ
徃
ゆ
き、ユダの
町
まち
にいたり、
40
ザカリヤの
家
いへ
に
入
い
りてエリサベツに
挨拶
あいさつ
せしに、
41
エリサベツ、その
挨拶
あいさつ
を
聞
き
くや、
兒
こ
は
胎內
たいない
にて
躍󠄃
をど
れり。エリサベツ
聖󠄄
せい
靈
れい
にて
滿
みた
され、
42
聲
こゑ
高
たか
らかに
呼
よば
はりて
言
い
ふ『をんなの
中
うち
にて
汝
なんぢ
は
祝福
しくふく
せられ、その
胎
たい
の
實
み
もまた
祝福
しくふく
せられたり。
43
わが
主
しゅ
の
母
はは
われに
來
きた
る、われ
何
なに
によりてか
之
これ
を
得
え
し。
44
視
み
よ、なんぢの
挨拶
あいさつ
の
聲
こゑ
、わが
耳
みゝ
に
入
い
るや、
我
わ
が
兒
こ
、
胎內
たいない
にて
喜
よろこ
びをどれり。
45
信
しん
ぜし
者
もの
は
幸福
さいはひ
なるかな、
主
しゅ
の
語
かた
り
給
たま
ふことは
必
かなら
ず
成就
じゃうじゅ
すべければなり』
46
マリヤ
言
い
ふ、 『わが
心
こゝろ
、
主
しゅ
を
崇
あが
め、
47
わが
靈
れい
は、わが
救主
すくひぬし
なる
神
かみ
を
喜
よろこ
び
奉
まつ
る。
48
その
婢女
はしため
の
卑
いや
しきをも
顧󠄃
かへり
み
給
たま
へばなり。
視
み
よ、
今
いま
よりのち
萬
よろづ
世
よ
の
人
ひと
、われを
幸福
さいはひ
とせん。
49
全󠄃能者
ぜんのうしゃ
、われに
大
おほい
なる
事
こと
を
爲
な
したまへばなり。 その
御名
みな
は
聖󠄄
せい
なり、
〘80㌻〙
50
その
憐憫
あはれみ
は
代々
よよ
畏
かしこ
み
恐
おそ
るる
者
もの
に
臨
のぞ
むなり。
51
神
かみ
は
御腕
みうで
にて
權力
ちから
をあらはし、《[*]》
心
こゝろ
の
念
おもひ
に
高
たか
ぶる
者
もの
を
散
ち
らし、[*或は「高ぶる者をその心の企圖にて散らし」と譯す。]
52
權勢
いきほひ
ある
者
もの
を
座位
くらゐ
より
下
おろ
し、
卑
いや
しき
者
もの
を
高
たか
うし、
110㌻
53
飢󠄄
う
ゑたる
者
もの
を
善
よ
きものに
飽󠄄
あ
かせ、
富
と
める
者
もの
を
空󠄃
むな
しく
去
さ
らせ
給
たま
ふ。
54
また
我
われ
らの
先祖
せんぞ
に
吿
つ
げ
給
たま
ひし
如
ごと
く、
55
アブラハムと、その
裔
すゑ
とに
對
たい
する
憐憫
あはれみ
を、
永遠󠄄
とこしへ
に
忘
わす
れじとて、
僕
しもべ
イスラエルを
助
たす
け
給
たま
へり』
56
斯
かく
てマリヤは、
三月
みつき
ばかりエルザベツと
偕
とも
に
居
を
りて、
己
おの
が
家
いへ
に
歸
かへ
れり。
57
偖
さて
エリサベツ
產
う
む
期
とき
みちて
男子
なんし
を
生
う
みたれば、
58
その
最寄
もより
のもの
親族
しんぞく
の
者
もの
ども
主
しゅ
の
大
おほい
なる
憐憫
あはれみ
を、エリサベツに
垂
た
れ
給
たま
ひしことを
聞
き
きて、
彼
かれ
とともに
喜
よろこ
ぶ。
59
八日
やうか
めになりて、
其
そ
の
子
こ
に
割󠄅禮
かつれい
を
行
おこな
はんとて
人々
ひとびと
きたり、
父󠄃
ちち
の
名
な
に
因
ちな
みてザカリヤと
名
な
づけんとせしに、
60
母
はは
こたへて
言
い
ふ『
否
いな
、ヨハネと
名
な
づくべし』
61
かれら
言
い
ふ『なんぢの
親族
しんぞく
の
中
うち
には
此
こ
の
名
な
をつけたる
者
もの
なし』
62
而
しか
して
父󠄃
ちち
に
首
かうべ
にて
示
しめ
し、いかに
名
な
づけんと
思
おも
ふか、
問
と
ひたるに、
63
ザカリヤ
書板
かきいた
を
求
もと
めて『その
名
な
はヨハネなり』と
書
か
きしかば、みな
怪
あや
しむ。
64
ザカリヤの
口
くち
たちどころに
開
ひら
け、
舌
した
ゆるみ、
物
もの
いひて
神
かみ
を
讃
ほ
めたり。
65
最寄
もより
に
住󠄃
す
む
者
もの
みな
懼
おそれ
をいだき、
又󠄂
また
すべて
此
これ
等
ら
のこと
徧
あまね
くユダヤの
山里
やまざと
に
言
い
ひ
囃
はや
されたれば、
66
聞
き
く
者
もの
みな
之
これ
を
心
こゝろ
にとめて
言
い
ふ『この
子
こ
は
如何
いか
なる
者
もの
にか
成
な
らん』
主
しゅ
の
手
て
かれと
偕
とも
に
在
あ
りしなり。
67
斯
かく
て
父󠄃
ちち
ザカリヤ
聖󠄄
せい
靈
れい
にて
滿
みた
され
預言
よげん
して
言
い
ふ
68
『
讃
ほ
むべきかな、
主
しゅ
イスラエルの
神
かみ
、 その
民
たみ
を
顧󠄃
かへり
みて
贖罪
あがなひ
をなし、
69
我等
われら
のために
救
すくひ
の
角
つの
を、 その
僕
しもべ
ダビデの
家
いへ
に
立
た
て
給
たま
へり。
70
これぞ
古
いにし
へより
聖󠄄
せい
預言者
よげんしゃ
の
口
くち
をもて
言
い
ひ
給
たま
ひし
如
ごと
く、
71
我
われ
らを
仇
あた
より、
凡
すべ
て
我
われ
らを
憎
にく
む
者
もの
の
手
て
より、
取
と
り
出
いだ
したまふ
救
すくひ
なる。
72
我
われ
らの
先祖
せんぞ
に
憐憫
あはれみ
をたれ、その
聖󠄄
せい
なる
契約
けいやく
を
思
おぼ
し、
73
我
われ
らの
先祖
せんぞ
アブラハムに
立
た
て
給
たま
ひし
御誓
みちかひ
を
忘
わす
れずして、
〘81㌻〙
111㌻
74
我
われ
らを
仇
あた
の
手
て
より
救
すく
ひ、
生涯
しゃうがい
、
主
しゅ
の
御前󠄃
みまへ
に、
75
聖󠄄
せい
と
義
ぎ
とをもて
懼
おそれ
なく
事
つか
へしめ
給
たま
ふなり。
76
幼兒
をさなご
よ、なんぢは
至高者
いとたかきもの
の
預言者
よげんしゃ
と
稱
とな
へられん。 これ
主
しゅ
の
御前󠄃
みまへ
に
先
さき
だちゆきて
其
そ
の
道󠄃
みち
を
備
そな
へ、
77
主
しゅ
の
民
たみ
に
罪
つみ
の
赦
ゆるし
による
救
すくひ
を
知
し
らしむればなり。
78
これ
我
われ
らの
神
かみ
の
深
ふか
き
憐憫
あはれみ
によるなり。 この
憐憫
あはれみ
によりて、
朝󠄃
あさ
の
光
ひかり
、
上
うへ
より
臨
のぞ
み、
79
暗󠄃黑
くらき
と
死
し
の
蔭
かげ
とに
坐
ざ
する
者
もの
をてらし、
我
われ
らの
足
あし
を
平󠄃和
へいわ
の
路
みち
に
導󠄃
みちび
かん』
80
斯
かく
て
幼兒
をさなご
は
漸
やゝ
に
成長
せいちゃう
し、その
靈
れい
强
つよ
くなり、イスラエルに
現
あらは
るる
日
ひ
まで
荒野
あらの
にゐたり。
第2章
1
その
頃
ころ
、
天下
てんか
の
人
ひと
を
戶籍
こせき
に
著
つ
かすべき
詔令
みことのり
カイザル・アウグストより
出
い
づ。
2
この
戶籍
こせき
登錄
とうろく
は、クレニオ、シリヤの
總督
そうとく
たりし
時
とき
に
行
おこな
はれし
初
はじめ
のものなり。
3
さて
人
ひと
みな
戶籍
こせき
に
著
つ
かんとて、
各自
おのおの
その
故郷
ふるさと
に
歸
かへ
る。
4
ヨセフもダビデの
家系
いへすぢ
また
血統
ちすぢ
なれば、
5
旣
すで
に
孕
はら
める
許嫁
いひなづけ
の
妻
つま
マリヤとともに、
戶籍
こせき
に
著
つ
かんとて、ガリラヤの
町
まち
ナザレを
出
い
でてユダヤに
上
のぼ
り、ダビデの
町
まち
ベツレヘムといふ
處
ところ
に
到
いた
りぬ。
6
此處
ここ
に
居
を
るほどに、マリヤ
月
つき
滿
み
ちて、
7
初子
うひご
をうみ
之
これ
を
布
ぬの
に
包
つゝ
みて
馬槽
うまぶね
に
臥
ふ
させたり。
旅舍
はたごや
にをる
處
ところ
なかりし
故
ゆゑ
なり。
8
この
地
ち
に
野宿
のじゅく
して
夜
よる
、
群
むれ
を
守
まも
りをる
牧者
ひつじかひ
ありしが、
9
主
しゅ
の
使
つかひ
その
傍
かたは
らに
立
た
ち、
主
しゅ
の
榮光
えいくわう
その
周󠄃圍
まはり
を
照
てら
したれば、
甚
いた
く
懼
おそ
る。
10
御使
みつかひ
かれらに
言
い
ふ『
懼
おそ
るな、
視
み
よ、この
民
たみ
、
一般
いっぱん
に
及
およ
ぶべき、
大
おほい
なる
歡喜
よろこび
の
音󠄃信
おとづれ
を
我
われ
なんぢらに
吿
つ
ぐ、
11
今日
けふ
ダビデの
町
まち
にて
汝
なんぢ
らの
爲
ため
に
救主
すくひぬし
うまれ
給
たま
へり、これ
主
しゅ
キリストなり。
12
なんぢら
布
ぬの
にて
包
つゝ
まれ、
馬槽
うまぶね
に
臥
ふ
しをる
嬰兒
みどりご
を
見
み
ん、
是
これ
その
徴
しるし
なり』
13
忽
たちま
ちあまたの
天
てん
の
軍勢
ぐんぜい
、
御使
みつかひ
に
加
くは
はり、
神
かみ
を
讃美
さんび
して
言
い
ふ、
112㌻
14
『《[*]》いと
高
たか
き
處
ところ
には
榮光
えいくわう
、
神
かみ
にあれ。
地
ち
には
平󠄃和
へいわ
、
主
しゅ
の
悅
よろこ
び
給
たま
ふ
人
ひと
にあれ』[*異本「いと高き處には榮光、神に、地には平󠄃和、人には惠あれ」とあり。]
15
御使
みつかひ
等
たち
さりて
天
てん
に
徃
ゆ
きしとき、
牧者
ひつじかひ
たがひに
語
かた
る『いざ、ベツレヘムにいたり、
主
しゅ
の
示
しめ
し
給
たま
ひし
起󠄃
おこ
れる
事
こと
を
見
み
ん』
16
乃
すなは
ち
急󠄃
いそ
ぎ
徃
ゆ
きて、マリヤとヨセフと、
馬槽
うまぶね
に
臥
ふ
したる
嬰兒
みどりご
とに
尋󠄃
たづ
ねあふ。
〘82㌻〙
17
旣
すで
に
見
み
て、この
子
こ
につき
御使
みつかひ
の
語
かた
りしことを
吿
つ
げたれば、
18
聞
き
く
者
もの
はみな
牧者
ひつじかひ
の
語
かた
りしことを
怪
あや
しみたり。
19
而
しか
してマリヤは
凡
すべ
て
此
これ
等
ら
のことを
心
こゝろ
に
留
とど
めて
思
おも
ひ
囘
まは
せり。
20
牧者
ひつじかひ
は
御使
みつかひ
の
語
かた
りしごとく
凡
すべ
ての
事
こと
を
見
み
聞
きゝ
せしによりて
神
かみ
を
崇
あが
め、かつ
讃美
さんび
しつつ
歸
かへ
れり。
21
八日
やうか
みちて
幼兒
をさなご
に
割󠄅禮
かつれい
を
施
ほどこ
すべき
日
ひ
となりたれば、
未
いま
だ
胎內
たいない
に
宿
やど
らぬ
先
さき
に
御使
みつかひ
の
名
な
づけし
如
ごと
く、その
名
な
をイエスと
名
な
づけたり。
22
モーセの
律法
おきて
に
定
さだ
めたる
潔󠄄
きよめ
の
日
ひ
滿
み
ちたれば、
彼
かれ
ら
幼兒
をさなご
を
携
たづさ
へて、エルサレムに
上
のぼ
る。
23
これは
主
しゅ
の
律法
おきて
に『すべて
初子
うひご
に
生
うま
るる
男子
なんし
は
主
しゅ
につける
聖󠄄
せい
なる
者
もの
と
稱
とな
へらるべし』と
錄
しる
されたる
如
ごと
く、
幼兒
をさなご
を
主
しゅ
に
獻
さゝ
げ、
24
また
主
しゅ
の
律法
おきて
に『
山鳩
やまばと
、
一
ひと
對
つがひ
あるひは
家
いへ
鴿
ばと
の
雛
ひな
二
に
羽
は
』と
云
い
ひたるに
遵󠄅
したが
ひて、
犧牲
いけにへ
を
供
そな
へん
爲
ため
なり。
25
視
み
よ、エルサレムにシメオンといふ
人
ひと
あり。この
人
ひと
は
義
ぎ
かつ
敬虔
けいけん
にしてイスラエルの
慰
なぐさ
められんことを
待
ま
ち
望󠄇
のぞ
む。
聖󠄄
せい
靈
れい
その
上
うへ
に
在
いま
す。
26
また
聖󠄄
せい
靈
れい
に
主
しゅ
のキリストを
見
み
ぬうちは
死
し
を
見
み
ずと
示
しめ
されたれしが、
27
此
こ
のとき、
御靈
みたま
に
感
かん
じて
宮
みや
に
入
い
る。
兩親
ふたおや
その
子
こ
イエスを
携
たづさ
へ、この
子
こ
のために
律法
おきて
の
慣例
ならはし
に
遵󠄅
したが
ひて、
行
おこな
はんとて
來
きた
りたれば、
28
シメオン、イエスを
取
と
りいだき、
神
かみ
を
讃
ほ
めて
言
い
ふ、
29
『
主
しゅ
よ、
今
いま
こそ
御言
みことば
に
循
したが
ひて
僕
しもべ
を
安
やす
らかに
逝󠄃
ゆ
かしめ
給
たま
ふなれ。
30
わが
目
め
は、はや
主
しゅ
の
救
すくひ
を
見
み
たり。
31
是
これ
もろもろの
民
たみ
の
前󠄃
まへ
に
備
そな
へ
給
たま
ひし
者
もの
、
32
異邦人
いはうじん
を
照
てら
す
光
ひかり
、
御民
みたみ
イスラエルの
榮光
えいくわう
なり』
113㌻
33
かく
幼兒
をさなご
に
就
つ
きて
語
かた
ることを、
其
そ
の
父󠄃
ちち
母
はは
あやしみ
居
ゐ
たれば、
34
シメオン
彼
かれ
らを
祝
しく
して
母
はは
マリヤに
言
い
ふ『
視
み
よ、この
幼兒
をさなご
は、イスラエルの
多
おほ
くの
人
ひと
の
或
あるひ
は
倒
たふ
れ、
或
あるひ
は
起󠄃
た
たん
爲
ため
に、また
言
い
ひ
逆󠄃
さから
ひを
受
う
くる
徴
しるし
のために
置
お
かる。
35
――
劍
つるぎ
なんぢの
心
こゝろ
をも
刺
さ
し
貫
つらぬ
くべし――これは
多
おほ
くの
人
ひと
の
心
こゝろ
の
念
おもひ
の
顯
あらは
れん
爲
ため
なり』
36
爰
こゝ
にアセルの
族
やから
パヌエルの
娘
むすめ
に、アンナといふ
預言者
よげんしゃ
あり、
年
とし
いたく
老
お
ゆ。
處女
をとめ
のとき、
夫
をっと
に
適󠄄
ゆ
きて《[*]》
七
しち
年
ねん
ともに
居
を
り、[*或は「七年ともにをりて寡婦󠄃となり今は八十四歳なり」と譯す。]
37
八
はち
十四年
じふよねん
寡婦󠄃
やもめ
たり。
宮
みや
を
離
はな
れず、
夜
よる
も
晝
ひる
も、
斷食󠄃
だんじき
と
祈禱
きたう
とを
爲
な
して
神
かみ
に
事
つか
ふ。
38
この
時
とき
すすみ
寄
よ
りて、
神
かみ
に
感謝
かんしゃ
し、また
凡
すべ
てエルサレムの
拯贖
あがなひ
を
待
ま
ちのぞむ
人
ひと
に、
幼兒
をさなご
のことを
語
かた
れり。
39
さて
主
しゅ
の
律法
おきて
に
遵󠄅
したが
ひて、
凡
すべ
ての
事
こと
を
果
はた
したれば、ガリラヤに
歸
かへ
り、
己
おの
が
町
まち
ナザレに
到
いた
れり。
〘83㌻〙
40
幼兒
をさなご
は
漸
やゝ
に
成長
せいちゃう
して
健
すこや
かになり、
智慧󠄄
ちゑ
みち、かつ
神
かみ
の
惠
めぐみ
その
上
うへ
にありき。
41
斯
かく
てその
兩親
ふたおや
、
過󠄃越
すぎこし
の
祭
まつり
には
年每
としごと
にエルサレムに
徃
ゆ
きぬ。
42
イエスの
十二
じふに
歳
さい
のとき、
祭
まつり
の
慣例
ならはし
に
遵󠄅
したが
ひて
上
のぼ
りゆき、
43
祭
まつり
の
日
ひ
終󠄃
をは
りて
歸
かへ
る
時
とき
、その
子
こ
イエスはエルサレムに
止
とゞま
りたまふ。
兩親
ふたおや
は
之
これ
を
知
し
らずして、
44
道󠄃伴󠄃
みちづれ
のうちに
居
を
るならんと
思
おも
ひ、
一日
いちにち
路
ぢ
ゆきて、
親族
しんぞく
・
知邊
しるべ
のうちを
尋󠄃
たづ
ぬれど、
45
遇󠄃
あ
はぬに
因
よ
りて
復
また
たづねつつエルサレムに
歸
かへ
り、
46
三日
みっか
ののち、
宮
みや
にて
敎師
けうし
のなかに
坐
ざ
し、かつ
聽
き
き、かつ
問
と
ひゐ
給
たま
ふに
遇󠄃
あ
ふ。
47
聞
き
く
者
もの
は
皆
みな
その
聰
さとき
と
答
こたへ
とを
怪
あや
しむ。
48
兩親
ふたおや
イエスを
見
み
て、いたく
驚
をどろ
き、
母
はは
は
言
い
ふ『
兒
こ
よ、
何
なに
故
ゆゑ
かかる
事
こと
を
我
われ
らに
爲
せ
しぞ、
視
み
よ、
汝
なんぢ
の
父󠄃
ちち
と
我
われ
と
憂
うれ
ひて
尋󠄃
たづ
ねたり』
49
イエス
言
い
ひたまふ『
何
なに
故
ゆゑ
われを
尋󠄃
たづ
ねたるか、
我
われ
は《[*]》わが
父󠄃
ちち
の
家
いへ
に
居
を
るべきを
知
し
らぬか』[*或は「我が父󠄃の事を務むべきを知らぬか」と譯す。]
114㌻
50
兩親
ふたおや
はその
語
かた
りたまふ
事
こと
を
悟
さと
らず。
51
斯
かく
てイエス
彼
かれ
等
ら
とともに
下
くだ
り、ナザレに
徃
ゆ
きて
順
したが
ひ
事
つか
へたまふ。
其
そ
の
母
はは
これらの
事
こと
をことごとく
心
こゝろ
に
藏
をさ
む。
52
イエス
智慧󠄄
ちゑ
も《[*]》
身
み
のたけも
彌
いや
增
まさ
り
神
かみ
と
人
ひと
とにますます
愛
あい
せられ
給
たま
ふ。[*或は「齡」と譯す。]
第3章
1
テベリオ・カイザル
在位
ざいゐ
の
十
じふ
五
ご
年
ねん
ポンテオ・ピラトは、ユダヤの
總督
そうとく
、ヘロデはガリラヤ
分󠄃封
ぶんばう
の
國守
こくしゅ
、その
兄弟
きゃうだい
ピリポは、イツリヤ
及
およ
びテラコニテの
地
ち
の
分󠄃封
ぶんばう
の
國守
こくしゅ
、ルサニヤはアビレネ
分󠄃封
ぶんばう
の
國守
こくしゅ
たり、
2
アンナスとカヤパとは
大
だい
祭司
さいし
たりしとき、
神
かみ
の
言
ことば
、
荒野
あらの
にてザカリヤの
子
こ
ヨハネに
臨
のぞ
む。
3
斯
かく
てヨルダン
河
がは
の
邊
ほとり
なる
四方
しはう
の
地
ち
にゆき、
罪
つみ
の
赦
ゆるし
を
得
え
さする
悔改
くいあらため
のバプテスマを
宣傳
のべつた
ふ。
4
預言者
よげんしゃ
イザヤの
言
ことば
の
書
ふみ
に 『
荒野
あらの
に
呼
よば
はる
者
もの
の
聲
こゑ
す。 「
主
しゅ
の
道󠄃
みち
を
備
そな
へ、その
路
みち
すじを
直
なほ
くせよ。
5
もろもろの
谷
たに
は
埋
うづ
められ、もろもろの
山
やま
と
岡
をか
とは
平󠄃
たひら
げられ、
曲
まが
りたるは
直
なほ
く、
嶮
けは
しきは
坦
たひら
かなる
路
みち
となり、
6
人
ひと
みな
神
かみ
の
救
すくひ
を
見
み
ん」』と
錄
しる
されたるが
如
ごと
し。
7
偖
さて
ヨハネ、バプテスマを
受
う
けんとて
出
い
できたる
群衆
ぐんじゅう
にいふ『
蝮
まむし
の
裔
すゑ
よ、
誰
た
が
汝
なんぢ
らに、
來
きた
らんとする
御怒
みいかり
を
避󠄃
さ
くべき
事
こと
を
示
しめ
したるぞ。
〘84㌻〙
8
さらば
悔改
くいあらため
に
相應
ふさは
しき
果
み
を
結
むす
べ。なんぢら「
我
われ
らの
父󠄃
ちち
にアブラハムあり」と
心
こゝろ
のうちに
言
い
ひ
始
はじ
むな。
我
われ
なんぢらに
吿
つ
ぐ、
神
かみ
はよく
此
これ
らの
石
いし
よりアブラハムの
子
こ
等
ら
を
起󠄃
おこ
し
得給
えたま
ふなり。
9
斧
をの
ははや
樹
き
の
根
ね
に
置
お
かる。
然
さ
れば
凡
すべ
て
善
よ
き
果
み
を
結
むす
ばぬ
樹
き
は、
伐
き
られて
火
ひ
に
投
な
げ
入
い
れらるべし』
10
群衆
ぐんじゅう
ヨハネに
問
と
ひて
言
い
ふ『さらば
我
われ
ら
何
なに
を
爲
な
すべきか』
11
答
こた
へて
言
い
ふ『
二
ふた
つの
下衣
したぎ
をもつ
者
もの
は、
有
も
たぬ
者
もの
に
分󠄃
わ
け
與
あた
へよ。
食󠄃物
しょくもつ
を
有
も
つ
者
もの
もまた
然
しか
せよ』
12
取税人
しゅぜいにん
もバプテスマを
受
う
けんとて
來
きた
りて
言
い
ふ『
師
し
よ、
我
われ
ら
何
なに
を
爲
な
すべきか』
13
答
こた
へて
言
い
ふ『
定
さだま
りたるものの
外
ほか
、なにをも
促
はた
るな』
115㌻
14
兵卒
へいそつ
もまた
問
と
ひて
言
い
ふ『
我
われ
らは
何
なに
を
爲
な
すべきか』
答
こた
へて
言
い
ふ『
人
ひと
を
劫
おびや
かし、また
誣
し
ひ
訴
うった
ふな、
己
おの
が
給料
きふれう
をもて
足
た
れりとせよ』
15
民
たみ
、
待
ま
ち
望󠄇
のぞ
みゐたれば、みな
心
こゝろ
の
中
うち
にヨハネをキリストならんかと
論
ろん
ぜしに、
16
ヨハネ
凡
すべ
ての
人
ひと
に
答
こた
へて
言
い
ふ『
我
われ
は
水
みづ
にて
汝
なんぢ
らにバプテスマを
施
ほどこ
す、されど
我
われ
よりも
能力
ちから
ある
者
もの
きたらん、
我
われ
はその
鞋
くつ
の
紐
ひも
を
解
と
くにも
足
た
らず。
彼
かれ
は
聖󠄄
せい
靈
れい
と
火
ひ
とにて
汝
なんぢ
らにバプテスマを
施
ほどこ
さん。
17
手
て
には
箕
み
を
持
も
ちたまふ。
禾場
うちば
をきよめ、
麥
むぎ
を
倉
くら
に
納󠄃
をさ
めんとてなり。
而
しか
して
殼
から
は
消󠄃
き
えぬ
火
ひ
にて
焚
や
きつくさん』
18
ヨハネこの
他
ほか
なほ、さまざまの
勸
すゝめ
をなして、
民
たみ
に
福音󠄃
ふくいん
を
宣傳
のべつた
ふ。
19
然
しか
るに
國守
こくしゅ
ヘロデ、その
兄弟
きゃうだい
の
妻
つま
ヘロデヤの
事
こと
につき、
又󠄂
また
その
行
おこな
ひたる
凡
すべ
ての
惡
あ
しき
事
こと
につきて、ヨハネに
責
せ
められたれば、
20
更
さら
に
復
また
一
ひと
つの
惡
あ
しき
事
こと
を
加
くは
へて、ヨハネを
獄
ひとや
に
閉
と
ぢこめたり。
21
民
たみ
みなバプテスマを
受
う
けし
時
とき
、イエスもバプテスマを
受
う
けて
祈
いの
りゐ
給
たま
へば、
天
てん
ひらけ、
22
聖󠄄
せい
靈
れい
、
形
かたち
をなして
鴿
はと
のごとく
其
そ
の
上
うへ
に
降
くだ
り、かつ
天
てん
より
聲
こゑ
あり、
曰
いは
く『なんぢは
我
わ
が
愛
いつく
しむ
子
こ
なり、
我
われ
なんぢを
悅
よろこ
ぶ』
23
イエスの、
敎
をしへ
を
宣
の
べ
始
はじ
め
給
たま
ひしは、
年
とし
おほよそ
三十
さんじふ
の
時
とき
なりき。
人
ひと
にはヨセフの
子
こ
と
思
おも
はれ
給
たま
へり。ヨセフの
父󠄃
ちち
はヘリ、
24
その
先
さき
はマタテ、レビ、メルキ、ヤンナイ、ヨセフ、
25
マタテヤ、アモス、ナホム、エスリ、ナンガイ、
26
マハテ、マタテヤ、シメイ、ヨセク、ヨダ、
27
ヨハナン、レサ、ゾロバベル、サラテル、ネリ、
28
メルキ、アデイ、コサム、エルマダム、エル、
29
ヨセ、エリエゼル、ヨリム、マタテ、レビ、
30
シメオン、ユダ、ヨセフ、ヨナム、エリヤキム、
116㌻
31
メレヤ、メナ、マタタ、ナタン、ダビデ、
32
エツサイ、オベデ、ボアズ、サラ、ナアソン、
33
アミナダブ、アデミン、アルニ、エスロン、パレス、ユダ、
〘85㌻〙
34
ヤコブ、イサク、アブラハム、テラ、ナホル、
35
セルグ、レウ、ペレグ、エベル、サラ、
36
カイナン、アルパクサデ、セム、ノア、ラメク、
37
メトセラ、エノク、ヤレデ、マハラレル、カイナン、
38
エノス、セツ、アダムに
至
いた
る。アダムは
神
かみ
の
子
こ
なり。
第4章
1
偖
さて
イエス
聖󠄄
せい
靈
れい
にて
滿
み
ち、ヨルダン
河
がは
より
歸
かへ
り
荒野
あらの
にて、
四十
しじふ
日
にち
のあひだ
御靈
みたま
に
導󠄃
みちび
かれ、
2
惡魔󠄃
あくま
に
試
こゝろ
みられ
給
たま
ふ。この
間
あひだ
なにをも
食󠄃
くら
はず、
日
ひ
數
かず
滿
み
ちてのち
餓󠄃
う
ゑ
給
たま
ひたれば、
3
惡魔󠄃
あくま
いふ『なんぢ
若
も
し
神
かみ
の
子
こ
ならば
此
こ
の
石
いし
に
命
めい
じてパンと
爲
な
らしめよ』
4
イエス
答
こた
へたまふ『「
人
ひと
の
生
い
くるはパンのみに
由
よ
るにあらず」と
錄
しる
されたり』
5
惡魔󠄃
あくま
またイエスを
携
たづさ
へのぼりて
瞬間
またゝくま
に
天下
てんか
のもろもろの
國
くに
を
示
しめ
して
言
い
ふ、
6
『この
凡
すべ
ての
權威
けんゐ
と
國々
くにぐに
の
榮華
えいぐわ
とを
汝
なんぢ
に
與
あた
へん。
我
われ
これを
委
ゆだ
ねられたれば、
我
わ
が
欲
ほっ
する
者
もの
に
與
あた
ふるなり。
7
この
故
ゆゑ
にもし
我
わ
が
前󠄃
まへ
に
拜
はい
せば、ことごとく
汝
なんぢ
の
有
もの
となるべし』
8
イエス
答
こた
へて
言
い
ひたまふ『「
主
しゅ
なる
汝
なんぢ
の
神
かみ
を
拜
はい
し、ただ
之
これ
にのみ
事
つか
ふべし」と
錄
しる
されたり』
9
惡魔󠄃
あくま
またイエスをエルサレムに
連
つ
れゆき、
宮
みや
の
頂上
いたゞき
に
立
た
たせて
言
い
ふ、『なんぢ
若
も
し
神
かみ
の
子
こ
ならば、
此處
ここ
より
己
おの
が
身
み
を
下
した
に
投
な
げよ。
10
それは 「なんぢの
爲
ため
に
御使
みつかひ
たちに
命
めい
じて
守
まも
らしめ
給
たま
はん」
11
「かれら
手
て
にて
汝
なんぢ
を
支
さゝ
へ、 その
足
あし
を
石
いし
に
打當
うちあ
つる
事
こと
なからしめん」と
錄
しる
されたるなり』
12
イエス
答
こた
へて
言
い
ひたまふ『「
主
しゅ
なる
汝
なんぢ
の
神
かみ
を
試
こゝろ
むべからず」と
云
い
ひてあり』
13
惡魔󠄃
あくま
あらゆる
甞試
こゝろみ
を
盡
つく
してのち
暫
しばら
くイエスを
離
はな
れたり。
117㌻
14
イエス
御靈
みたま
の
能力
ちから
をもてガリラヤに
歸
かへ
り
給
たま
へば、その
聲聞
きこえ
あまねく
四方
しはう
の
地
ち
に
弘
ひろま
る。
15
斯
かく
て
諸
しょ
會堂
くわいだう
にて
敎
をしへ
をなし、
凡
すべ
ての
人
ひと
に
崇
あが
められ
給
たま
ふ。
16
偖
さて
その
育
そだ
てられ
給
たま
ひし
處
ところ
の、ナザレに
到
いた
り
例
れい
のごとく、
安息
あんそく
日
にち
に
會堂
くわいだう
に
入
い
りて
聖󠄄書
せいしょ
を
讀
よ
まんとて
立
た
ち
給
たま
ひしに、
17
預言者
よげんしゃ
イザヤの
書
ふみ
を
與
あた
へたれば、
其
そ
の
書
ふみ
を
繙
ひもと
きて、かく
錄
しる
されたる
所󠄃
ところ
を
見出
みいだ
し
給
たま
ふ。
18
『
主
しゅ
の
御靈
みたま
われに
在
いま
す。 これ
我
われ
に
油
あぶら
を
注
そゝ
ぎて
貧󠄃
まづ
しき
者
もの
に
福音󠄃
ふくいん
を
宣
の
べしめ、
我
われ
を
遣󠄃
つかは
して
囚人
めしうど
に
赦
ゆるし
を
得
う
ることと、
盲人
めしひ
に
見
み
ゆる
事
こと
とを
吿
つ
げしめ、
壓
おさ
へらるる
者
もの
を
放
はな
ちて
自由
じいう
を
與
あた
へしめ、
19
主
しゅ
の
喜
よろこ
ばしき
年
とし
を
宣傳
のべつた
へしめ
給
たま
ふなり』
〘86㌻〙
20
イエス
書
ふみ
を
卷
ま
き、
係
かゝ
りの
者
もの
に
返󠄄
かへ
して
坐
ざ
し
給
たま
へば、
會堂
くわいだう
に
居
を
る
者
もの
みな
之
これ
に
目
め
を
注
そゝ
ぐ。
21
イエス
言
い
ひ
出
い
でたまふ『この
聖󠄄書
せいしょ
は
今日
けふ
なんぢらの
耳
みみ
に
成就
じゃうじゅ
したり』
22
人々
ひとびと
みなイエスを
譽
ほ
め、
又󠄂
また
その
口
くち
より
出
い
づる
惠
めぐみ
の
言
ことば
を
怪
あや
しみて
言
い
ふ『これヨセフの
子
こ
ならずや』
23
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢら
必
かなら
ず
我
われ
に
俚諺
ことわざ
を
引
ひ
きて「
醫者
いしゃ
よ、みづから
己
おのれ
を
醫
いや
せ、カペナウムにて
有
あ
りしといふ、
我
われ
らが
聞
き
ける
事
こと
どもを
己
おの
が
郷
さと
なる
此
こ
の
地
ち
にても
爲
な
せ」と
言
い
はん』
24
また
言
い
ひ
給
たま
ふ『われ
誠
まこと
に
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
預言者
よげんしゃ
は
己
おの
が
郷
さと
にて
喜
よろこ
ばるることなし。
25
われ
實
まこと
をもて
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、エリヤのとき
三年
さんねん
六个月
ろくかげつ
、
天
てん
とぢて、
全󠄃地
ぜんち
大
おほい
なる
饑饉
ききん
なりしが、イスラエルの
中
うち
に
多
おほ
くの
寡婦󠄃
やもめ
ありたれど、
26
エリヤは
其
そ
の
一人
ひとり
にすら
遣󠄃
つかは
されず、
唯
ただ
シドンなるサレプタの
一人
ひとり
の
寡婦󠄃
やもめ
にのみ
遣󠄃
つかは
されたり。
27
また
預言者
よげんしゃ
エリシヤの
時
とき
、イスラエルの
中
うち
に
多
おほ
くの
癩病人
らいびゃうにん
ありしが、
其
そ
の
一人
ひとり
だに
潔󠄄
きよ
められず、
唯
ただ
シリヤのナアマンのみ
潔󠄄
きよ
められたり』
28
會堂
くわいだう
にをる
者
もの
みな
之
これ
を
聞
き
きて
憤恚
いきどほり
に
滿
み
ち、
29
起󠄃
た
ちてイエスを
町
まち
より
逐󠄃
お
ひ
出
いだ
し、その
町
まち
の
建
た
ちたる
山
やま
の
崖
がけ
に
引
ひ
き
徃
ゆ
きて、
投
な
げ
落
おと
さんとせしに、
118㌻
30
イエスその
中
なか
を
通󠄃
とほ
りて
去
さ
り
給
たま
ふ。
31
斯
かく
てガリラヤの
町
まち
カペナウムに
下
くだ
りて、
安息
あんそく
日
にち
ごとに
人
ひと
を
敎
をし
へ
給
たま
へば、
32
人々
ひとびと
その
敎
をしへ
に
驚
をどろ
きあへり。その
言
ことば
、
權威
けんゐ
ありたるに
因
よ
る。
33
會堂
くわいだう
に
穢
けが
れし
惡鬼
あくき
の
靈
れい
に
憑
つ
かれたる
人
ひと
あり、
大聲
おほごゑ
に
叫
さけ
びて
言
い
ふ、
34
『ああ、ナザレのイエスよ、
我
われ
らは
汝
なんぢ
となにの
關係
かゝはり
あらんや。
我
われ
らを
亡
ほろぼ
さんとて
來給
きたま
ふか。
我
われ
はなんぢの
誰
たれ
なるを
知
し
る、
神
かみ
の
聖󠄄者
しゃうじゃ
なり』
35
イエス
之
これ
を
禁
いまし
めて
言
い
ひ
給
たま
ふ『
默
もだ
せ、その
人
ひと
より
出
い
でよ』
惡鬼
あくき
その
人
ひと
を
人々
ひとびと
の
中
なか
に
倒
たふ
し、
傷
きず
つけずして
出
い
づ。
36
みな
驚
をどろ
き、
語
かた
り
合
あ
ひて
言
い
ふ『これ
如何
いか
なる
言
ことば
ぞ、
權威
けんゐ
と
能力
ちから
とをもて
命
めい
ずれば、
穢
けが
れし
惡鬼
あくき
すら
出
い
で
去
さ
る』
37
爰
こゝ
にイエスの
噂
うはさ
あまねく
四方
しはう
の
地
ち
に
弘
ひろま
りたり。
38
イエス
會堂
くわいだう
を
立
た
ち
出
い
でて、シモンの
家
いへ
に
入
い
り
給
たま
ふ。シモンの
外姑
しうとめ
おもき
熱
ねつ
を
患
わづら
ひ
居
ゐ
たれば、
人々
ひとびと
これが
爲
ため
にイエスに
願
ねが
ふ。
39
その
傍
かたは
らに
立
た
ちて
熱
ねつ
を
責
せ
めたまへば、
熱
ねつ
去
さ
りて
女
をんな
たちどころに
起󠄃
お
きて
彼
かれ
らに
事
つか
ふ。
40
日
ひ
のいる
時
とき
さまざまの
病
やまひ
を
患
わづら
ふ
者
もの
をもつ
人
ひと
、みな
之
これ
をイエスに
連
つ
れ
來
きた
れば、
一々
いちいち
その
上
うへ
に
手
て
を
置
お
きて
醫
いや
し
給
たま
ふ。
41
惡鬼
あくき
もまた
多
おほ
くの
人
ひと
より
出
い
でて
叫
さけ
びつつ
言
い
ふ『なんぢは
神
かみ
の
子
こ
なり』
之
これ
を
責
せ
めて
物
もの
言
い
ふことを
免
ゆる
し
給
たま
はず、
惡鬼
あくき
そのキリストなるを
知
し
るに
因
よ
りてなり。
〘87㌻〙
42
明
あく
る
朝󠄃
あさ
イエス
出
い
でて
寂
さび
しき
處
ところ
にゆき
給
たま
ひしが、
群衆
ぐんじゅう
たづねて
御許
みもと
に
到
いた
り、その
去
さ
り
徃
ゆ
くことを
止
と
めんとせしに、
43
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『われ
又󠄂
また
ほかの
町々
まちまち
にも
神
かみ
の
國
くに
の
福音󠄃
ふくいん
を
宣傳
のべつた
へざるを
得
え
ず、わが
遣󠄃
つかは
されしは
之
これ
が
爲
ため
なり』
44
斯
かく
て《[*]》ユダヤの
諸
しょ
會堂
くわいだう
にて
敎
をしへ
を
宣
の
べたまふ。[*異本「ガリラヤ」とあり。]
119㌻
第5章
1
群衆
ぐんじゅう
おし
迫󠄃
せま
りて
神
かみ
の
言
ことば
を
聽
き
きをる
時
とき
、イエス、ゲネサレの
湖
みづうみ
のほとりに
立
た
ちて、
2
渚
なぎさ
に
二
に
艘
さう
の
舟
ふね
の
寄
よ
せあるを
見
み
たまふ、
漁人
すなどりびと
は
舟
ふね
をいでて
網
あみ
を
洗
あら
ひ
居
ゐ
たり。
3
イエスその
一艘
いっさう
なるシモンの
舟
ふね
に
乘
の
り、
彼
かれ
に
請󠄃
こ
ひて
陸
をか
より
少
すこ
しく
押
お
し
出
いだ
さしめ、
坐
ざ
して
舟
ふね
の
中
うち
より
群衆
ぐんじゅう
を
敎
をし
へたまふ。
4
語
かた
り
終󠄃
を
へてシモンに
言
い
ひたまふ『
深處
ふかみ
に
乘
の
りいだし、
網
あみ
を
下
おろ
して
漁
すなど
れ』
5
シモン
答
こた
へて
言
い
ふ『
君
きみ
よ、われら
終󠄃夜
よもすがら
、
勞
らう
したるに
何
なに
をも
得
え
ざりき、
然
さ
れど
御言
みことば
に
隨
したが
ひて
網
あみ
を
下
おろ
さん』
6
斯
かく
て
然
しか
せしに
魚
うを
の
夥多
おびたゞ
しき
群
むれ
を
圍
かこ
みて
網
あみ
裂
さ
けかかりたれば、
7
他
ほか
の
一艘
いっさう
の
舟
ふね
にをる
組
くみ
の
者
もの
を
差招
さしまね
きて
來
きた
り
助
たす
けしむ。
來
きた
りて
魚
うを
を
二
に
艘
さう
の
舟
ふね
に
滿
みた
したれば、
舟
ふね
沈
しづ
まんばかりになりぬ。
8
シモン・ペテロ
之
これ
を
見
み
て、イエスの
膝
ひざ
下
した
に
平󠄃伏
ひれふ
して
言
い
ふ『
主
しゅ
よ、
我
われ
を
去
さ
りたまへ。
我
われ
は
罪
つみ
ある
者
もの
なり』
9
これはシモンも
偕
とも
に
居
を
る
者
もの
もみな
漁
すなど
りし
魚
うを
の
夥多
おびたゞ
しきに
驚
をどろ
きたるなり。
10
ゼベダイの
子
こ
にしてシモンの
侶
とも
なるヤコブもヨハネも
同
おな
じく
驚
をどろ
けり。イエス、シモンに
言
い
ひたまふ『
懼
おそ
るな、なんぢ
今
いま
より
後
のち
、
人
ひと
を《[*]》
漁
すなど
らん』[*直譯「生捕らん」]
11
かれら
舟
ふね
を
陸
をか
につけ、
一切
いっさい
を
棄
す
ててイエスに
從
したが
へり。
12
イエス
或
あ
る
町
まち
に
居給
ゐたま
ふとき、
視
み
よ、
全󠄃身
ぜんしん
癩病
らいびゃう
をわづらふ
者
もの
あり。イエスを
見
み
て
平󠄃伏
ひれふ
し、
願
ねが
ひて
言
い
ふ『
主
しゅ
よ、
御意󠄃
みこゝろ
ならば、
我
われ
を
潔󠄄
きよ
くなし
給
たま
ふを
得
え
ん』
13
イエス
手
て
をのべ
彼
かれ
につけて『わが
意󠄃
こゝろ
なり、
潔󠄄
きよ
くなれ』と
言
い
ひ
給
たま
へば、
直
たゞ
ちに
癩病
らいびゃう
されり。
14
イエス
之
これ
を
誰
たれ
にも
語
かた
らぬやうに
命
めい
じ、かつ
言
い
ひ
給
たま
ふ『ただ
徃
ゆ
きて
己
おのれ
を
祭司
さいし
に
見
み
せ、モーセが
命
めい
じたるごとく
汝
なんぢ
の
潔󠄄
きよめ
のために
獻物
さゝげもの
して、
人々
ひとびと
に
證
あかし
せよ』
15
されど
彌
いや
增々
ますます
イエスの
事
こと
ひろまりて、
大
おほい
なる
群衆
ぐんじゅう
、あるひは
敎
をしへ
を
聽
き
かんとし、
或
あるひ
は
病
やまひ
を
醫
いや
されんとして
集
あつま
り
來
きた
りしが、
16
イエス
寂
さび
しき
處
ところ
に
退󠄃
しりぞ
きて
祈
いの
り
給
たま
ふ。
120㌻
17
或
ある
日
ひ
イエス
敎
をしへ
をなし
給
たま
ふとき、ガリラヤの
村々
むらむら
、ユダヤ
及
およ
びエルサレムより
來
きた
りしパリサイ
人
びと
、
敎法
けうほふ
學者
がくしゃ
ら、そこに
坐
ざ
しゐたり。
病
やまひ
を
醫
いや
すべき
主
しゅ
の
能力
ちから
イエスと
偕
とも
にありき。
〘88㌻〙
18
視
み
よ、
人々
ひとびと
、
中風
ちゅうぶ
を
病
や
める
者
もの
を、
床
とこ
にのせて
擔
にな
ひきたり、
之
これ
を
家
いへ
に
入
い
れて、イエスの
前󠄃
まへ
に
置
お
かんとすれど、
19
群衆
ぐんじゅう
によりて
擔
にな
ひ
入
い
るべき
道󠄃
みち
を
得
え
ざれば、
屋根
やね
にのぼり、
瓦
かはら
を
取
と
り
除
の
けて
床
とこ
のまま、
人々
ひとびと
の
中
なか
にイエスの
前󠄃
まへ
に
縋
つ
り
下
おろ
せり。
20
イエス
彼
かれ
らの
信仰
しんかう
を
見
み
て
言
い
ひたまふ『
人
ひと
よ、
汝
なんぢ
の
罪
つみ
ゆるされたり』
21
爰
こゝ
に
學者
がくしゃ
・パリサイ
人
びと
ら
論
ろん
じ
出
い
でて
言
い
ふ『
瀆言
けがしごと
をいふ
此
こ
の
人
ひと
は
誰
たれ
ぞ、
神
かみ
より
他
ほか
に
誰
たれ
か
罪
つみ
を
赦
ゆる
すことを
得
う
べき』
22
イエス
彼
かれ
らの
論
ろん
ずる
事
こと
をさとり、
答
こた
へて
言
い
ひ
給
たま
ふ『なにを
心
こゝろ
のうちに
論
ろん
ずるか。
23
「なんぢの
罪
つみ
ゆるされたり」と
言
い
ふと「
起󠄃
お
きて
步
あゆ
め」と
言
い
ふと
孰
いづれ
か
易
やす
き、
24
人
ひと
の
子
こ
の
地
ち
にて
罪
つみ
をゆるす
權威
けんゐ
あることを、
汝
なんぢ
らに
知
し
らせん
爲
ため
に』――
中風
ちゅうぶ
を
病
や
める
者
もの
に
言
い
ひ
給
たま
ふ――『なんぢに
吿
つ
ぐ、
起󠄃
お
きよ、
床
とこ
をとりて
家
いへ
に
徃
ゆ
け』
25
かれ
立刻
たちどころ
に
人々
ひとびと
の
前󠄃
まへ
にて
起󠄃
お
きあがり、
臥
ふ
しゐたる
床
とこ
をとりあげ、
神
かみ
を
崇
あが
めつつ
己
おの
が
家
いへ
に
歸
かへ
りたり。
26
人々
ひとびと
みな
甚
いた
く
驚
をどろ
きて
神
かみ
をあがめ
懼
おそれ
に
滿
み
ちて
言
い
ふ『
今日
けふ
われら
珍
めづら
しき
事
こと
を
見
み
たり』
27
この
事
こと
の
後
のち
イエス
出
い
でて、レビといふ
取税人
しゅぜいにん
の
收税所󠄃
しうぜいしょ
に
坐
ざ
しをるを
見
み
て『われに
從
したが
へ』と
言
い
ひ
給
たま
へば、
28
一切
いっさい
を
棄
す
ておき、
起󠄃
た
ちて
從
したが
へり。
29
レビ
己
おの
が
家
いへ
にて、イエスの
爲
ため
に
大
おほい
なる
饗宴
ふるまひ
を
設
まう
けしに、
取税人
しゅぜいにん
および
他
ほか
の
人々
ひとびと
も
多
おほ
く、
食󠄃事
しょくじ
の
席
せき
に
列
つらな
りゐたれば、
30
パリサイ
人
びと
および
其
そ
の
曹輩
ともがら
の
學者
がくしゃ
ら、イエスの
弟子
でし
たちに
向
むか
ひ、
呟
つぶや
きて
言
い
ふ『なにゆゑ
汝
なんぢ
らは
取税人
しゅぜいにん
・
罪人
つみびと
らと
共
とも
に
飮食󠄃
のみくひ
するか』
31
イエス
答
こた
へて
言
い
ひたまふ『
健康
けんかう
なる
者
もの
は
醫者
いしゃ
を
要󠄃
えう
せず、ただ
病
やまひ
ある
者
もの
、これを
要󠄃
えう
す。
32
我
われ
は
正
たゞ
しき
者
もの
を
招
まね
かんとにあらで、
罪人
つみびと
を
招
まね
きて
悔改
くいあらた
めさせんとて
來
きた
れり』
121㌻
33
彼
かれ
らイエスに
言
い
ふ『ヨハネの
弟子
でし
たちは、しばしば
斷食󠄃
だんじき
し
祈禱
きたう
し、パリサイ
人
びと
の
弟子
でし
たちも
亦
また
然
しか
するに、
汝
なんぢ
の
弟子
でし
たちは
飮食󠄃
のみくひ
するなり』
34
イエス
言
い
ひたまふ『
新郎
はなむこ
の
友
とも
だち
新郎
はなむこ
と
偕
とも
にをるうちは、
彼
かれ
らに
斷食󠄃
だんじき
せしめ
得
え
んや。
35
然
さ
れど
日
ひ
來
きた
りて
新郎
はなむこ
をとられん、その
日
ひ
には
斷食󠄃
だんじき
せん』
36
イエスまた
譬
たとへ
を
言
い
ひ
給
たま
ふ『たれも
新
あたら
しき
衣
ころも
を
切
き
り
取
と
りて、
舊
ふる
き
衣
ころも
を
繕
つくろ
ふ
者
もの
はあらじ。もし
然
しか
せば
新
あたら
しきものも
破
やぶ
れ、かつ
新
あたら
しきものより
取
と
りたる
裂
きれ
も
舊
ふる
きものに
合
あ
はじ。
37
誰
たれ
も
新
あたら
しき
葡萄酒
ぶだうしゅ
を、ふるき
革嚢
かはぶくろ
に
入
い
るることは
爲
せ
じ。もし
然
しか
せば
葡萄酒
ぶだうしゅ
は
嚢
ふくろ
をはりさき
漏
も
れ
出
い
でて
嚢
ふくろ
も
廢
すた
らん。
38
新
あたら
しき
葡萄酒
ぶだうしゅ
は、
新
あたら
しき
革嚢
かはぶくろ
に
入
い
るべきなり。
39
誰
たれ
も
舊
ふる
き
葡萄酒
ぶだうしゅ
を
飮
の
みてのち、
新
あたら
しき
葡萄酒
ぶだうしゅ
を
望󠄇
のぞ
む
者
もの
はあらじ。「
舊
ふる
きは
善
よ
し」と
云
い
へばなり』
〘89㌻〙
第6章
1
イエス
安息
あんそく
日
にち
に
麥
むぎ
畠
はたけ
を
過󠄃
す
ぎ
給
たま
ふとき、
弟子
でし
たち
穗
ほ
を
摘
つ
み、
手
て
にて
揉
も
みつつ
食󠄃
くら
ひたれば、
2
パリサイ
人
びと
のうち
或
ある
者
もの
ども
言
い
ふ『なんぢらは
何
なに
ゆゑ
安息
あんそく
日
にち
に
爲
す
まじき
事
こと
をするか』
3
イエス
答
こた
へて
言
い
ひ
給
たま
ふ『ダビデその
伴󠄃
ともな
へる
人々
ひとびと
とともに
飢󠄄
う
ゑしとき、
爲
な
しし
事
こと
をすら
讀
よ
まぬか。
4
即
すなは
ち
神
かみ
の
家
いへ
に
入
い
りて、
祭司
さいし
の
他
ほか
は
食󠄃
くら
ふまじき
供
そなへ
のパンを
取
と
りて
食󠄃
くら
ひ、
己
おのれ
と
偕
とも
なる
者
もの
にも
與
あた
へたり』
5
また
言
い
ひたまふ『
人
ひと
の
子
こ
は
安息
あんそく
日
にち
の
主
しゅ
たるなり』
6
又󠄂
また
ほかの
安息
あんそく
日
にち
にイエス
會堂
くわいだう
に
入
い
りて
敎
をしへ
をなし
給
たま
ひしに、
此處
ここ
に
人
ひと
あり、
其
そ
の
右
みぎ
の
手
て
なえたり。
7
學者
がくしゃ
・パリサイ
人
びと
ら、イエスを
訴
うった
ふる
廉
かど
を
見出
みいだ
さんと
思
おも
ひて、
安息
あんそく
日
にち
に
人
ひと
を
醫
いや
すや
否
いな
やを
窺
うかゞ
ふ。
8
イエス
彼
かれ
らの
念
おもひ
を
知
し
りて
手
て
なえたる
人
ひと
に『
起󠄃
お
きて
中
なか
に
立
た
て』と
言
い
ひ
給
たま
へば、
起󠄃
お
きて
立
た
てり。
9
イエス
彼
かれ
らに
言
い
ひ
給
たま
ふ『われ
汝
なんぢ
らに
問
と
はん、
安息
あんそく
日
にち
に
善
ぜん
をなすと
惡
あく
をなすと、
生命
いのち
を
救
すく
ふと
亡
ほろぼ
すと、
孰
いづれ
かよき』
122㌻
10
かくて
一同
いちどう
を
見
み
まはして、
手
て
なえたる
人
ひと
に『なんぢの
手
て
を
伸
の
べよ』と
言
い
ひ
給
たま
ふ。かれ
然
しか
なしたれば、その
手
て
癒󠄄
い
ゆ。
11
然
しか
るに
彼
かれ
ら
狂氣
きゃうき
の
如
ごと
くなりて、イエスに
何
なに
をなさんと
語
かた
り
合
あ
へり。
12
その
頃
ころ
イエス
祈
いの
らんとて
山
やま
にゆき、
神
かみ
に
祈
いの
りつつ
夜
よ
を
明
あか
したまふ。
13
夜明
よあけ
になりて
弟子
でし
たちを
呼
よ
び
寄
よ
せ、その
中
うち
より
十二
じふに
人
にん
を
選󠄄
えら
びて、
之
これ
を
使徒
しと
と
名
な
づけたまふ。
14
即
すなは
ちペテロと
名
な
づけ
給
たま
ひしシモンと
其
そ
の
兄弟
きゃうだい
アンデレと、ヤコブとヨハネと、ピリポとバルトロマイと、
15
マタイとトマスと、アルパヨの
子
こ
ヤコブと
熱心
ねっしん
黨
たう
と
呼
よ
ばるるシモンと、
16
ヤコブの《[*]》
子
こ
ユダとイスカリオテのユダとなり。このユダはイエスを
賣
う
る
者
もの
となりたり。[*或は「兄弟」と譯す。]
17
イエス
此
これ
等
ら
とともに
下
くだ
りて、
平󠄃
たひら
かなる
處
ところ
に
立
た
ち
給
たま
ひしに、
弟子
でし
の
大
おほい
なる
群衆
ぐんじゅう
およびユダヤ
全󠄃國
ぜんこく
、エルサレム
又󠄂
また
ツロ、シドンの
海邊
うみべ
より
來
きた
りて
或
あるひ
は
敎
をしへ
を
聽
き
かんとし、
或
あるひ
は
病
やまひ
を
醫
いや
されんとする
民
たみ
の
大
おほい
なる
群
むれ
も、そこにあり。
18
穢
けが
れし
靈
れい
に
惱
なやま
されたる
者
もの
も
醫
いや
される。
19
能力
ちから
イエスより
出
い
でて、
凡
すべ
ての
人
ひと
を
醫
いや
せば、
群衆
ぐんじゅう
みなイエスに
觸
さは
らん
事
こと
を
求
もと
む。
20
イエス
目
め
をあげ
弟子
でし
たちを
見
み
て
言
い
ひたまふ『
幸福
さいはひ
なるかな、
貧󠄃
まづ
しき
者
もの
よ、
神
かみ
の
國
くに
は
汝
なんぢ
らの
有
もの
なり。
21
幸福
さいはひ
なる
哉
かな
、いま
飢󠄄
う
うる
者
もの
よ、
汝
なんぢ
ら
飽󠄄
あ
くことを
得
え
ん。
幸福
さいはひ
なる
哉
かな
、いま
泣
な
く
者
もの
よ、
汝
なんぢ
ら
笑
わら
ふことを
得
え
ん。
22
人
ひと
なんぢらを
憎
にく
み、
人
ひと
の
子
こ
のために
遠󠄄
とほ
ざけ
謗
そし
り
汝
なんぢ
らの
名
な
を
惡
あ
しとして
棄
す
てなば、
汝
なんぢ
ら
幸福
さいはひ
なり。
〘90㌻〙
23
その
日
ひ
には、
喜
よろこ
び
躍󠄃
をど
れ。
視
み
よ、
天
てん
にて
汝
なんぢ
らの
報
むくい
は
大
おほい
なり、
彼
かれ
らの
先祖
せんぞ
が
預言者
よげんしゃ
たちに
爲
な
ししも、
斯
か
くありき。
24
されど
禍害󠄅
わざはひ
なるかな、
富
と
む
者
もの
よ、
汝
なんぢ
らは
旣
すで
にその
慰安
なぐさめ
を
受
う
けたり。
123㌻
25
禍害󠄅
わざはひ
なる
哉
かな
、いま
飽󠄄
あ
く
者
もの
よ、
汝
なんぢ
らは
飢󠄄
う
ゑん。
禍害󠄅
わざはひ
なる
哉
かな
、いま
笑
わら
ふ
者
もの
よ、
汝
なんぢ
らは
悲
かな
しみ
泣
な
かん。
26
凡
すべ
ての
人
ひと
、なんぢらを
譽
ほ
めなば、
汝
なんぢ
ら
禍害󠄅
わざはひ
なり。
彼
かれ
らの
先祖
せんぞ
が
虛僞
いつはり
の
預言者
よげんしゃ
たちに
爲
な
ししも、
斯
か
くありき。
27
われ
更
さら
に
汝
なんぢ
ら
聽
き
くものに
吿
つ
ぐ、なんぢらの
仇
あた
を
愛
あい
し
汝
なんぢ
らを
憎
にく
む
者
もの
を
善
よ
くし、
28
汝
なんぢ
らを
詛
のろ
ふ
者
もの
を
祝
しく
し、
汝
なんぢ
らを
辱
はづか
しむる
者
もの
のために
祈
いの
れ。
29
なんぢの
頬
ほゝ
を
打
う
つ
者
もの
には、
他
ほか
の
頬
ほゝ
をも
向
む
けよ。なんぢの
上衣
うはぎ
を
取
と
る
者
もの
には
下衣
したぎ
をも
拒
こば
むな。
30
すべて
求
もと
むる
者
もの
に
與
あた
へ、なんぢの
物
もの
を
奪
うば
ふ
者
もの
に
復
また
索
もと
むな。
31
なんぢら
人
ひと
に
爲
せ
られんと
思
おも
ふごとく、
人
ひと
にも
然
しか
せよ。
32
なんぢら
己
おのれ
を
愛
あい
する
者
もの
を
愛
あい
せばとて、
何
なに
の
嘉
よみ
すべき
事
こと
あらん、
罪人
つみびと
にても
己
おのれ
を
愛
あい
する
者
もの
を
愛
あい
するなり。
33
汝
なんぢ
等
ら
おのれに
善
ぜん
をなす
者
もの
に
善
ぜん
を
爲
な
すとも、
何
なに
の
嘉
よみ
すべき
事
こと
あらん、
罪人
つみびと
にても
然
しか
するなり。
34
なんぢら
得
う
る
事
こと
あらんと
思
おも
ひて
人
ひと
に
貸
か
すとも、
何
なに
の
嘉
よみ
すべき
事
こと
あらん、
罪人
つみびと
にても
均
ひと
しきものを
受
う
けんとて
罪人
つみびと
に
貸
か
すなり。
35
汝
なんぢ
らは
仇
あた
を
愛
あい
し、
善
ぜん
をなし、
何
なに
をも
求
もと
めずして
貸
か
せ、
然
さ
らば、その
報
むくい
は
大
おほい
ならん。かつ
至高者
いとたかきもの
の
子
こ
たるべし。
至高者
いとたかきもの
は
恩
おん
を
知
し
らぬもの、
惡
あ
しき
者
もの
にも
仁慈
なさけ
あるなり。
36
汝
なんぢ
らの
父󠄃
ちち
の
慈悲
じひ
なるごとく、
汝
なんぢ
らも
慈悲
じひ
なれ。
37
人
ひと
を
審
さば
くな、
然
さ
らば
汝
なんぢ
らも
審
さば
かるる
事
こと
あらじ。
人
ひと
を
罪
つみ
に
定
さだ
むな、
然
さ
らば
汝
なんぢ
らも
罪
つみ
に
定
さだ
めらるる
事
こと
あらじ。
人
ひと
を
赦
ゆる
せ、
然
さ
らば
汝
なんぢ
らも
赦
ゆる
されん。
38
人
ひと
に
與
あた
へよ、
然
さ
らば
汝
なんぢ
らも
與
あた
へられん。
人
ひと
は
量
はかり
をよくし、
押
お
し
入
い
れ、
搖
ゆす
り
入
い
れ
溢󠄃
あふ
るるまでにして、
汝
なんぢ
らの
懷中
ふところ
に
入
い
れん。
汝
なんぢ
等
ら
おのが
量
はか
る
量
はかり
にて
量
はか
らるべし』
39
また
譬
たとへ
にて
言
い
ひたまふ『
盲人
めしひ
は
盲人
めしひ
を
手引
てびき
するを
得
え
んや。
二人
ふたり
とも
穴󠄄
あな
に
落
お
ちざらんや。
40
弟子
でし
はその
師
し
に
勝󠄃
まさ
らず、
凡
おほよ
そ
全󠄃
まった
うせられたる
者
もの
は、その
師
し
の
如
ごと
くならん。
124㌻
41
何
なに
ゆゑ
兄弟
きゃうだい
の
目
め
にある《[*]》
塵
ちり
を
見
み
て、
己
おの
が
目
め
にある
梁木
うつばり
を
認󠄃
みと
めぬか。[*或は「木屑」と譯す。]
42
おのが
目
め
にある
梁木
うつばり
を
見
み
ずして
爭
いか
で
兄弟
きゃうだい
に
向
むか
ひて「
兄弟
きゃうだい
よ、
汝
なんぢ
の
目
め
にある
塵
ちり
を
取
と
り
除
のぞ
かせよ」といふを
得
え
んや。
僞善者
ぎぜんしゃ
よ、
先
ま
づ
己
おの
が
目
め
より
梁木
うつばり
を
取
と
り
除
のぞ
け。さらば
明
あきら
かに
見
み
えて
兄弟
きゃうだい
の
目
め
にある
塵
ちり
を
取
と
りのぞき
得
え
ん。
43
惡
あ
しき
果
み
を
結
むす
ぶ
善
よ
き
樹
き
はなく、また
善
よ
き
果
み
を
結
むす
ぶ
惡
あ
しき
樹
き
はなし。
44
樹
き
はおのおの
其
そ
の
果
み
によりて
知
し
らる。
茨
いばら
より
無花果
いちぢく
を
取
と
らず、
野荊
のばら
より
葡萄
ぶだう
を
收
をさ
めざるなり。
〘91㌻〙
45
善
よ
き
人
ひと
は
心
こゝろ
の
善
よ
き
倉
くら
より
善
よ
きものを
出
いだ
し、
惡
あ
しき
人
ひと
は
惡
あ
しき
倉
くら
より
惡
あ
しき
物
もの
を
出
いだ
す。それ
心
こゝろ
に
滿
み
つるより、
口
くち
は
物
もの
言
い
ふなり。
46
なんぢら
我
われ
を「
主
しゅ
よ
主
しゅ
よ」と
呼
よ
びつつ
何
なに
ぞ
我
わ
が
言
い
ふことを
行
おこな
はぬか。
47
凡
おほよ
そ
我
われ
にきたり
我
わ
が
言
ことば
を
聽
き
きて
行
おこな
ふ
者
もの
は、
如何
いか
なる
人
ひと
に
似
に
たるかを
示
しめ
さん。
48
即
すなは
ち
家
いへ
を
建
た
つるに
地
ち
を
深
ふか
く
掘
ほ
り
岩
いは
の
上
うへ
に
基
もとゐ
を
据
す
ゑたる
人
ひと
のごとし。
洪水
おほみづ
いでて
流
ながれ
その
家
いへ
を
衝
つ
けども
動
うご
かすこと
能
あた
はず、これ
固
かた
く
建
たて
られたる
故
ゆゑ
なり。
49
されど
聽
き
きて
行
おこな
はぬ
者
もの
は、
基
もとゐ
なくして
家
いへ
を
土
つち
の
上
うへ
に
建
た
てたる
人
ひと
のごとし。
流
ながれ
その
家
いへ
を
衝
つ
けば、
直
たゞ
ちに
崩󠄃
くづ
れて、その
破壞
やぶれ
、
甚
はなは
だし』
第7章
1
イエス
凡
すべ
て
此
これ
らの
言
ことば
を
民
たみ
に
聞
き
かせ
終󠄃
を
へて
後
のち
、カペナウムに
入
い
り
給
たま
ふ。
2
時
とき
に
或
ある
百卒長
ひゃくそつちゃう
、その
重
おも
んずる
僕
しもべ
やみて
死
し
ぬばかりなりしかば、
3
イエスの
事
こと
を
聽
き
きて、ユダヤ
人
びと
の
長老
ちゃうらう
たちを
遣󠄃
つかは
し、
來
きた
りて
僕
しもべ
を
救
すく
ひ
給
たま
はんことを
願
ねが
ふ。
4
彼
かれ
らイエスの
許
もと
にいたり、
切
せつ
に
請󠄃
こ
ひて
言
い
ふ『かの
人
ひと
は、
此
こ
の
事
こと
を
爲
せ
らるるに
相應
ふさは
し。
5
わが
國人
くにびと
を
愛
あい
し、
我
われ
らのために
會堂
くわいだう
を
建
た
てたり』
6
イエス
共
とも
に
徃
ゆ
き
給
たま
ひて、その
家
いへ
はや
程
ほど
近󠄃
ちか
くなりしとき、
百卒長
ひゃくそつちゃう
、
數人
すにん
の
友
とも
を
遣󠄃
つかは
して
言
い
はしむ『
主
しゅ
よ、
自
みづか
らを
煩
わづら
はし
給
たま
ふな。
我
われ
は
汝
なんぢ
をわが
屋根
やね
の
下
した
に
入
い
れまつるに
足
た
らぬ
者
もの
なり。
125㌻
7
されば
御前󠄃
みまへ
に
出
い
づるにも
相應
ふさは
しからずと
思
おも
へり、《[*]》ただ
御言
みことば
を
賜
たま
ひて
我
わ
が
僕
しもべ
をいやし
給
たま
へ。[*異本「ただ御言を賜へ、さらば我が僕は瘉えん」とあり。]
8
我
われ
みづから
權威
けんゐ
の
下
した
に
置
お
かるる
者
もの
なるに、
我
わ
が
下
した
にまた
兵卒
へいそつ
ありて、
此
これ
に「
徃
ゆ
け」と
言
い
へば
徃
ゆ
き、
彼
かれ
に「
來
きた
れ」と
言
い
へば
來
きた
り、わが
僕
しもべ
に「これを
爲
な
せ」と
言
い
へば
爲
な
すなり』
9
イエス
聞
き
きて
彼
かれ
を
怪
あや
しみ
振反
ふりかへ
りて、
從
したが
ふ
群衆
ぐんじゅう
に
言
い
ひ
給
たま
ふ『われ
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、イスラエルの
中
うち
にだに
斯
かゝ
るあつき
信仰
しんかう
は
見
み
しことなし』
10
遣󠄃
つかは
されたる
者
もの
ども
家
いへ
に
歸
かへ
りて、
僕
しもべ
を
見
み
れば、
旣
すで
に
健康
けんかう
となれり。
11
その
後
のち
イエス、ナインといふ
町
まち
にゆき
給
たま
ひしに
弟子
でし
たち
及
およ
び
大
おほい
なる
群衆
ぐんじゅう
も
共
とも
に
徃
ゆ
く。
12
町
まち
の
門
もん
に
近󠄃
ちか
づき
給
たま
ふとき、
視
み
よ、
舁
か
き
出
いだ
さるる
死人
しにん
あり。これは
獨
ひとり
息子
むすこ
にて
母
はは
は
寡婦󠄃
やもめ
なり、
町
まち
の
多
おほ
くの
人々
ひとびと
これに
伴󠄃
ともな
ふ。
13
主
しゅ
、
寡婦󠄃
やもめ
を
見
み
て、
憫
あはれ
み『
泣
な
くな』と
言
い
ひて、
14
近󠄃
ちか
より
柩
ひつぎ
に
手
て
をつけ
給
たま
へば、
舁
か
くもの
立
た
ち
止
とゞま
る。イエス
言
い
ひたまふ『
若者
わかもの
よ、
我
われ
なんぢに
言
い
ふ、
起󠄃
お
きよ』
〘92㌻〙
15
死人
しにん
、
起󠄃
お
きかへりて
物
もの
言
い
ひ
始
はじ
む。イエス
之
これ
を
母
はは
に
付
わた
したまふ。
16
人々
ひとびと
みな
懼
おそれ
をいだき、
神
かみ
を
崇
あが
めて
言
い
ふ『
大
おほい
なる
預言者
よげんしゃ
、われらの
中
うち
に
興
おこ
れり』また
言
い
ふ『
神
かみ
その
民
たみ
を
顧󠄃
かへり
み
給
たま
へり』
17
この
事
こと
ユダヤ
全󠄃國
ぜんこく
および
最寄
もより
の
地
ち
に
徧
あまね
くひろまりぬ。
18
偖
さて
ヨハネの
弟子
でし
たち、
凡
すべ
て
此
これ
等
ら
のことを
吿
つ
げたれば、
19
ヨハネ
兩
りゃう
三人
さんにん
の
弟子
でし
を
呼
よ
び、
主
しゅ
に
遣󠄃
つかは
して
言
い
はしむ『
來
きた
るべき
者
もの
は
汝
なんぢ
なるか、
或
あるひ
は
他
ほか
に
待
ま
つべきか』
20
彼
かれ
ら
御許
みもと
に
到
いた
りて
言
い
ふ『バプテスマのヨハネ、
我
われ
らを
遣󠄃
つかは
して
言
い
はしむ「
來
きた
るべき
者
もの
は
汝
なんぢ
なるか、
或
あるひ
は
他
ほか
に
待
ま
つべきか」』
21
この
時
とき
イエス
多
おほ
くの
者
もの
の
病
やまひ
・
疾患
わずらひ
を
醫
いや
し、
惡
あ
しき
靈
れい
を
逐󠄃
お
ひいだし、
又󠄂
また
おほくの
盲人
めしひ
に
見
み
ることを
得
え
しめ
給
たま
ひしが、
22
答
こた
へて
言
い
ひたまふ『
徃
ゆ
きて
汝
なんぢ
らが
見
み
聞
きゝ
せし
所󠄃
ところ
をヨハネに
吿
つ
げよ。
盲人
めしひ
は
見
み
、
跛者
あしなへ
はあゆみ、
癩病人
らいびゃうにん
は
潔󠄄
きよ
められ、
聾者
みゝしひ
はきき、
死人
しにん
は
甦
よみが
へらせられ、
貧󠄃
まづ
しき
者
もの
は
福音󠄃
ふくいん
を
聞
き
かせらる。
126㌻
23
おほよそ
我
われ
に
躓
つまづ
かぬ
者
もの
は
幸福
さいはひ
なり』
24
ヨハネの
使
つかひ
の
去
さ
りたる
後
のち
、ヨハネの
事
こと
を
群衆
ぐんじゅう
に
言
い
ひいで
給
たま
ふ『なんぢら
何
なに
を
眺
なが
めんとて
野
の
に
出
い
でし、
風
かぜ
にそよぐ
葦
あし
なるか。
25
然
さ
らば
何
なに
を
見
み
んとて
出
い
でし、
柔
やはら
かき
衣
ころも
を
著
き
たる
人
ひと
なるか。
視
み
よ、
華美
はなやか
なる
衣
ころも
をきて
奢
おご
り
暮
くら
す
者
もの
は
王宮
わうきう
に
在
あ
り。
26
然
さ
らば
何
なに
を
見
み
んとて
出
い
でし、
預言者
よげんしゃ
なるか。
然
しか
り
我
われ
なんぢらに
吿
つ
ぐ、
預言者
よげんしゃ
よりも
勝󠄃
まさ
る
者
もの
なり。
27
「
視
み
よ、わが
使
つかひ
を
汝
なんぢ
の
顏
かほ
のまへに
遣󠄃
つかは
す。 かれは
汝
なんぢ
の
前󠄃
まへ
に
汝
なんぢ
の
道󠄃
みち
をそなへん」と
錄
しる
されたるは
此
こ
の
人
ひと
なり。
28
われ
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
女
をんな
の
產
う
みたる
者
もの
の
中
うち
、ヨハネより
大
おほい
なる
者
もの
はなし。
然
さ
れど
神
かみ
の
國
くに
にて
小
ちひさ
き
者
もの
も、
彼
かれ
よりは
大
おほい
なり。
29
(
凡
すべ
ての
民
たみ
これを
聞
き
きて、
取税人
しゅぜいにん
までも
神
かみ
を
正
たゞ
しとせり。ヨハネのバプテスマを
受
う
けたるによる。
30
然
さ
れどパリサイ
人
びと
・
敎法師
けうほふし
らは、
其
そ
のバプテスマを
受
う
けざりしにより、
各自
おのおの
にかかはる
神
かみ
の
御旨
みむね
をこばみたり)
31
然
さ
れば、われ
今
いま
の
代
よ
の
人
ひと
を
何
なに
に
比
なずら
へん。
彼
かれ
らは
何
なに
に
似
に
たるか。
32
彼
かれ
らは
童
わらべ
、
市場
いちば
に
坐
ざ
し、たがひに
呼
よ
びて「われら
汝
なんぢ
らの
爲
ため
に
笛
ふえ
吹
ふ
きたれど、
汝
なんぢ
ら
躍󠄃
をど
らず。
歎
なげ
きたれど、
汝
なんぢ
ら
泣
な
かざりき」と
云
い
ふに
似
に
たり。
33
それはバプテスマのヨハネ
來
きた
りて、パンをも
食󠄃
くら
はず、
葡萄酒
ぶだうしゅ
をも
飮
の
まねば「
惡鬼
あくき
に
憑
つ
かれたる
者
もの
なり」と
汝
なんぢ
ら
言
い
ひ、
34
人
ひと
の
子
こ
きたりて
飮食󠄃
のみくひ
すれば「
視
み
よ、
食󠄃
しょく
を
貪
むさぼ
り、
酒
さけ
を
好
この
む
人
ひと
、また
取税人
しゅぜいにん
・
罪人
つみびと
の
友
とも
なり」と
汝
なんぢ
ら
言
い
ふなり。
〘93㌻〙
35
然
さ
れど
智慧󠄄
ちゑ
は
己
おの
が
凡
すべ
ての
子
こ
によりて
正
たゞ
しと《[*]》せらる』[*或は「せられたり」と譯す。]
36
爰
こゝ
に
或
ある
パリサイ
人
びと
ともに
食󠄃
しょく
せん
事
こと
をイエスに
請󠄃
こ
ひたれば、パリサイ
人
びと
の
家
いへ
に
入
い
りて
席
せき
につき
給
たま
ふ。
127㌻
37
視
み
よ、この
町
まち
に
罪
つみ
ある
一人
ひとり
の
女
をんな
あり。イエスのパリサイ
人
びと
の
家
いへ
にて
食󠄃事
しょくじ
の
席
せき
にゐ
給
たま
ふを
知
し
り、
香
にほひ
油
あぶら
の
入
い
りたる
石膏
せきかう
の
壺
つぼ
を
持
も
ちきたり、
38
泣
な
きつつ
御足
みあし
近󠄃
ちか
く
後
うしろ
にたち、
淚
なみだ
にて
御足
みあし
をうるほし、
頭
かしら
の
髮
け
にて
之
これ
を
拭
ぬぐ
ひ、また
御足
みあし
に
接吻
くちつけ
して
香
にほひ
油
あぶら
を
抹
ぬ
れり。
39
イエスを
招
まね
きたるパリサイ
人
びと
これを
見
み
て、
心
こゝろ
のうちに
言
い
ふ『この
人
ひと
もし
預言者
よげんしゃ
ならば
觸
さは
る
者
もの
の
誰
たれ
、
如何
いか
なる
女
をんな
なるかを
知
し
らん、
彼
かれ
は
罪人
つみびと
なるに』
40
イエス
答
こた
へて
言
い
ひ
給
たま
ふ『シモン、
我
われ
なんぢに
言
い
ふことあり』シモンいふ『
師
し
よ、
言
い
ひたまへ』
41
『
或
あ
る
債主
かしぬし
に
二人
ふたり
の
負󠄅債者
ふさいしゃ
ありて、
一人
ひとり
はデナリ
五
ご
百
ひゃく
、
一人
ひとり
は
五
ご
十
じふ
の
負󠄅債
おひめ
せしに、
42
償
つぐの
ひかたなければ、
債主
かしぬし
この
二人
ふたり
を
共
とも
に
免
ゆる
せり。されば
二人
ふたり
のうち
債主
かしぬし
を
愛
あい
すること
孰
いづれ
か
多
おほ
き』
43
シモン
答
こた
へて
言
い
ふ『われ
思
おも
ふに、
多
おほ
く
免
ゆる
されたる
者
もの
ならん』イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢの
判󠄄斷
はんだん
は
當
あた
れり』
44
斯
かく
て
女
をんな
の
方
かた
に
振向
ふりむ
きてシモンに
言
い
ひ
給
たま
ふ『この
女
をんな
を
見
み
るか。
我
われ
なんぢの
家
いへ
に
入
い
りしに、なんぢは
我
われ
に
足
あし
の
水
みづ
を
與
あた
へず、
此
こ
の
女
をんな
は
淚
なみだ
にて
我
わが
足
あし
を
濡
ぬら
し、
頭髮
かみのけ
にて
拭
ぬぐ
へり。
45
なんぢは
我
われ
に
接吻
くちつけ
せず、
此
こ
の
女
をんな
は
我
わ
が
入
い
りし
時
とき
より、
我
わ
が
足
あし
に
接吻
くちつけ
して
止
や
まず。
46
なんぢは
我
わ
が
頭
かしら
に
油
あぶら
を
抹
ぬ
らず、
此
こ
の
女
をんな
は
我
わ
が
足
あし
に
香
にほひ
油
あぶら
を
抹
ぬ
れり。
47
この
故
ゆゑ
に
我
われ
なんぢに
吿
つ
ぐ、この
女
をんな
の
多
おほ
くの
罪
つみ
は
赦
ゆる
されたり。その
愛
あい
すること
大
おほい
なればなり。
赦
ゆる
さるる
事
こと
の
少
すくな
き
者
もの
は、その
愛
あい
する
事
こと
もまた
少
すくな
し』
48
遂󠄅
つひ
に
女
をんな
に
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢの
罪
つみ
は
赦
ゆる
されたり』
49
同席
どうせき
の
者
もの
ども
心
こゝろ
の
內
うち
に『
罪
つみ
をも
赦
ゆる
す
此
こ
の
人
ひと
は
誰
たれ
なるか』と
言
い
ひ
出
い
づ。
50
爰
こゝ
にイエス
女
をんな
に
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢの
信仰
しんかう
、なんぢを
救
すく
へり、
安
やす
らかに
徃
ゆ
け』
第8章
1
この
後
のち
イエス
敎
をしへ
を
宣
の
べ、
神
かみ
の
國
くに
の
福音󠄃
ふくいん
を
傳
つた
へつつ、
町々
まちまち
村々
むらむら
を
迴
まは
り
給
たま
ひしに、
十二
じふに
弟子
でし
も
伴󠄃
ともな
ふ。
2
また
前󠄃
さき
に
惡
あ
しき
靈
れい
を
逐󠄃
お
ひ
出
いだ
され、
病
やまひ
を
醫
いや
されなどせし
女
をんな
たち、
即
すなは
ち
七
なゝ
つの
惡鬼
あくき
のいでしマグラダと
呼
よ
ばるるマリヤ、
128㌻
3
ヘロデの
家
いへ
司
つかさ
クーザの
妻
つま
ヨハンナ
及
およ
びスザンナ、
此
こ
の
他
ほか
にも
多
おほ
くの
女
をんな
、ともなひゐて
其
そ
の
財產
ざいさん
をもて
彼
かれ
らに
事
つか
へたり。
4
大
おほい
なる
群衆
ぐんじゅう
むらがり
町々
まちまち
の
人
ひと
、みもとに
寄
よ
り
集
つど
ひたれば、
譬
たとへ
をもて
言
い
ひたまふ、
〘94㌻〙
5
『
種
たね
播
ま
く
者
もの
その
種
たね
を
播
ま
かんとて
出
い
づ。
播
ま
くとき
路
みち
の
傍
かたは
らに
落
お
ちし
種
たね
あり、
踏
ふ
みつけられ、
又󠄂
また
そらの
鳥
とり
これを
啄
ついば
む。
6
岩
いは
の
上
うへ
に
落
お
ちし
種
たね
あり、
生
は
え
出
い
でたれど
潤澤
うるほひ
なきによりて
枯
か
る。
7
茨
いばら
の
中
うち
に
落
お
ちし
種
たね
あり、
茨
いばら
も
共
とも
に
生
は
え
出
い
でて
之
これ
を
塞
ふさ
ぐ。
8
良
よ
き
地
ち
に
落
お
ちし
種
たね
あり、
生
は
え
出
い
でて
百
ひゃく
倍
ばい
の
實
み
を
結
むす
べり』これらの
事
こと
を
言
い
ひて
呼
よば
はり
給
たま
ふ『きく
耳
みみ
ある
者
もの
は
聽
き
くべし』
9
弟子
でし
たち
此
こ
の
譬
たとへ
の
如何
いか
なる
意󠄃
こゝろ
なるかを
問
と
ひたるに、
10
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢらは
神
かみ
の
國
くに
の
奧義
おくぎ
を
知
し
ることを
許
ゆる
されたれど、
他
ほか
の
者
もの
は
譬
たとへ
にてせらる。
彼
かれ
らの
見
み
て
見
み
ず、
聞
き
きて
悟
さと
らぬ
爲
ため
なり。
11
譬
たとへ
の
意󠄃
こゝろ
は
是
これ
なり。
種
たね
は
神
かみ
の
言
ことば
なり。
12
路
みち
の
傍
かたは
らなるは、
聽
き
きたるのち、
惡魔󠄃
あくま
きたり、
信
しん
じて
救
すく
はるる
事
こと
のなからんために
御言
みことば
をその
心
こゝろ
より
奪
うば
ふ
所󠄃
ところ
の
人
ひと
なり。
13
岩
いは
の
上
うへ
なるは
聽
き
きて
御言
みことば
を
喜
よろこ
び
受
う
くれども、
根
ね
なければ、
暫
しばら
く
信
しん
じて
嘗試
こゝろみ
のときに
退󠄃
しりぞ
く
所󠄃
ところ
の
人
ひと
なり。
14
茨
いばら
の
中
うち
に
落
お
ちしは、
聽
き
きてのち。
過󠄃
す
ぐるほどに
世
よ
の
心勞
こゝろづかひ
と
財貨
たから
と
快樂
けらく
とに
塞
ふさ
がれて
實
みの
らぬ
所󠄃
ところ
の
人
ひと
なり。
15
良
よ
き
地
ち
なるは、
御言
みことば
を
聽
き
き、
正
たゞ
しく
善
よ
き
心
こゝろ
にて
之
これ
を
守
まも
り、
忍󠄄
しの
びて
實
み
を
結
むす
ぶ
所󠄃
ところ
の
人
ひと
なり。
16
誰
たれ
も
燈火
ともしび
をともし
器
うつは
にて
覆
おほ
ひ、または
寢臺
ねだい
の
下
した
におく
者
もの
なし、
入
い
り
來
きた
る
者
もの
のその
光
ひかり
を
見
み
んために
之
これ
を
燈臺
とうだい
の
上
うへ
に
置
お
くなり。
17
それ
隱
かく
れたるものの
顯
あらは
れぬはなく、
祕
ひ
めたるものの
知
し
られぬはなく、
明
あきら
かにならぬはなし。
18
然
さ
れば
汝
なんぢ
ら
聽
き
くこと
如何
いか
にと
心
こゝろ
せよ、
誰
たれ
にても
有
も
てる
人
ひと
は、なほ
與
あた
へられ、
有
も
たぬ
人
ひと
は、その
有
も
てりと
思
おも
ふ
物
もの
をも
取
と
らるべし』
129㌻
19
さてイエスの
母
はは
と
兄弟
きゃうだい
と
來
きた
りたれど、
群衆
ぐんじゅう
によりて
近󠄃
ちか
づくこと
能
あた
はず。
20
或
ある
人
ひと
イエスに『なんぢの
母
はは
と
兄弟
きゃうだい
と
汝
なんぢ
に
逢
あ
はんとて
外
そと
に
立
た
つ』と
吿
つ
げたれば、
21
答
こた
へて
言
い
ひたまふ『わが
母
はは
、わが
兄弟
きゃうだい
は、
神
かみ
の
言
ことば
を
聽
き
き、かつ
行
おこな
ふ
此
これ
らの
者
もの
なり』
22
或
ある
日
ひ
イエス
弟子
でし
たちと
共
とも
に
舟
ふね
に
乘
の
りて『みづうみの
彼方
かなた
にゆかん』と
言
い
ひ
給
たま
へば、
乃
すなは
ち
船出
ふなで
す。
23
渡
わた
るほどにイエス
眠
ねむ
りたまふ。
颶風
はやて
みづうみに
吹
ふ
き
下
おろ
し、
舟
ふね
に
水
みづ
滿
み
ちんとして
危
あやふ
かりしかば、
24
弟子
でし
たち
御側
みそば
により、
呼
よ
び
起󠄃
おこ
して
言
い
ふ『
君
きみ
よ、
君
きみ
よ、
我
われ
らは
亡
ほろ
ぶ』イエス
起󠄃
お
きて
風
かぜ
と
浪
なみ
とを
禁
いまし
め
給
たま
へば、ともに
鎭
しづ
まりて
凪
なぎ
となりぬ。
25
斯
かく
て
弟子
でし
たちに
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢらの
信仰
しんかう
いづこに
在
あ
るか』かれら
懼
おそ
れ
怪
あや
しみて
互
たがひ
に
言
い
ふ『こは
誰
たれ
ぞ、
風
かぜ
と
水
みづ
とに
命
めい
じ
給
たま
へば
順
したが
ふとは』
〘95㌻〙
26
遂󠄅
つひ
にガリラヤに
對
むか
へるゲラセネ
人
びと
の
地
ち
に
著
つ
く。
27
陸
をか
に
上
のぼ
りたまふ
時
とき
、その
町
まち
の
人
ひと
にて
惡鬼
あくき
に
憑
つ
かれたる
者
もの
きたり
遇󠄃
あ
ふ。この
人
ひと
は
久
ひさ
しきあひだ
衣
ころも
を
著
き
ず、また
家
いへ
に
住󠄃
す
まずして
墓
はか
の
中
うち
にゐたり。
28
イエスを
見
み
てさけび、
御前󠄃
みまへ
に
平󠄃伏
ひれふ
して
大聲
おほごゑ
にいふ『
至高
いとたか
き
神
かみ
の
子
こ
イエスよ、
我
われ
は
汝
なんぢ
と
何
なに
の
關係
かゝはり
あらん、
願
ねがは
くは
我
われ
を
苦
くる
しめ
給
たま
ふな』
29
これはイエス
穢
けが
れし
靈
れい
に、この
人
ひと
より
出
い
で
徃
ゆ
かんことを
命
めい
じ
給
たま
ひしに
因
よ
る。この
人
ひと
けがれし
靈
れい
にしばしば《[*]》
拘
とら
へられ、
鏈
くさり
と
足械
あしかせ
とにて
繋
つな
ぎ
守
まも
られたれど、その
繋
つなぎ
をやぶり、
惡鬼
あくき
に
逐󠄃
お
はれて、
荒野
あらの
に
徃
ゆ
けり。[*或は「久しく」と譯す。]
30
イエス
之
これ
に『なんぢの
名
な
は
何
なに
か』と
問
と
ひ
給
たま
へば『レギオン』と
答
こた
ふ、
多
おほ
くの
惡鬼
あくき
その
中
うち
に
入
い
りたる
故
ゆゑ
なり。
31
彼
かれ
らイエスに
底
そこ
なき
所󠄃
ところ
に
徃
ゆ
くを
命
めい
じ
給
たま
はざらんことを
請󠄃
こ
ふ。
130㌻
32
彼處
かしこ
の
山
やま
に、
多
おほ
くの
豚
ぶた
の
一
ひと
群
むれ
、
食󠄃
しょく
し
居
ゐ
たりしが、
惡鬼
あくき
ども
其
そ
の
豚
ぶた
に
入
い
るを
許
ゆる
し
給
たま
はんことを
請󠄃
こ
ひたれば、イエス
許
ゆる
し
給
たま
ふ。
33
惡鬼
あくき
、
人
ひと
を
出
い
でて
豚
ぶた
に
入
い
りたれば、その
群
むれ
、
崖
がけ
より
湖水
みづうみ
に
駈
か
け
下
くだ
りて
溺
おぼ
れたり。
34
飼
か
ふ
者
もの
ども
此
こ
の
起󠄃
おこ
りし
事
こと
を
見
み
て
逃󠄄
に
げ
徃
ゆ
きて、
町
まち
にも
里
さと
にも
吿
つ
げたれば、
35
人々
ひとびと
ありし
事
こと
を
見
み
んとて
出
い
で、イエスに
來
きた
りて、
惡鬼
あくき
の
出
い
でたる
人
ひと
の、
衣服󠄃
ころも
をつけ
慥
たしか
なる
心
こゝろ
にて、イエスの
足下
あしもと
に
坐
ざ
しをるを
見
み
て
懼
おそ
れあへり。
36
かの
惡鬼
あくき
に
憑
つ
かれたる
人
ひと
の
救
すく
はれし
事柄
ことがら
を
見
み
し
者
もの
ども
之
これ
を
彼
かれ
らに
吿
つ
げたれば、
37
ゲラセネ
地方
ちはう
の
民衆
みんしゅう
、みなイエスに
出
い
で
去
さ
り
給
たま
はんことを
請󠄃
こ
ふ。これ
大
おほい
に
懼
おそ
れたるなり。
爰
こゝ
にイエス
舟
ふね
に
乘
の
りて
歸
かへ
り
給
たま
ふ。
38
時
とき
に
惡鬼
あくき
の
出
い
でたる
人
ひと
、ともに
在
あ
らんことを
願
ねが
ひたれど、
之
これ
を
去
さ
らしめんとて、
39
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢの
家
いへ
に
歸
かへ
りて、
神
かみ
が
如何
いか
に
大
おほい
なる
事
こと
を
汝
なんぢ
になし
給
たま
ひしかを
具󠄄
つぶさ
に
吿
つ
げよ』
彼
かれ
ゆきて、イエスの
如何
いか
に
大
おほい
なる
事
こと
を
己
おのれ
になし
給
たま
ひしかを
徧
あまね
くその
町
まち
に
言
い
ひ
弘
ひろ
めたり。
40
斯
かく
てイエスの
歸
かへ
り
給
たま
ひしとき、
群衆
ぐんじゅう
これを
迎󠄃
むか
ふ、みな
待
ま
ちゐたるなり。
41
視
み
よ、
會堂
くわいだう
司
つかさ
にてヤイロといふ
者
もの
あり、
來
きた
りてイエスの
足下
あしもと
に
伏
ふ
し、その
家
いへ
にきたり
給
たま
はんことを
願
ねが
ふ。
42
おほよそ
十二
じふに
歳
さい
ほどの
一人
ひとり
娘
むすめ
ありて
死
し
ぬばかりなる
故
ゆゑ
なり。イエスの
徃
ゆ
き
給
たま
ふとき、
群衆
ぐんじゅう
かこみ
塞
ふさ
がる。
43
爰
こゝ
に
十
じふ
二年
にねん
このかた
血漏
ちらう
を
患
わづら
ひて《[*]》
醫者
いしゃ
の
爲
ため
に
己
おの
が
身代
しんだい
をことごとく
費
つひや
したれども、
誰
たれ
にも
癒󠄄
いや
され
得
え
ざりし
女
をんな
あり。[*異本「醫者の爲に己が身代を悉く費しれれども」の句なし。]
44
イエスの
後
うしろ
に
來
きた
りて、
御衣
みころも
の
總
ふさ
にさはりたれば、
血
ち
の
出
い
づること
立刻
たちどころ
に
止
や
みたり。
45
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『
我
われ
に
觸
さは
りしは
誰
たれ
ぞ』
人
ひと
みな
否
いな
みたれば、ペテロ《[*]》
及
およ
び
共
とも
にをる
者
もの
ども
言
い
ふ『
君
きみ
よ、
群衆
ぐんじゅう
なんぢを
圍
かこ
みて
押迫󠄃
おしせま
るなり』[*異本「及び共になるものども」の句なし。]
〘96㌻〙
131㌻
46
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『われに
觸
さは
りし
者
もの
あり、
能力
ちから
の
我
われ
より
出
い
でたるを
知
し
る』
47
女
をんな
おのれが
隱
かく
れ
得
え
ぬことを
知
し
り、
戰
をのゝ
き
來
きた
りて
御前󠄃
みまへ
に
平󠄃伏
ひれふ
し、
觸
さは
りし
故
ゆゑ
と
立刻
たちどころ
に
癒󠄄
い
えたる
事
こと
とを、
人々
ひとびと
の
前󠄃
まへ
にて
吿
つ
ぐ。
48
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『むすめよ、
汝
なんぢ
の
信仰
しんかう
なんぢを
救
すく
へり、
安
やす
らかに
徃
ゆ
け』
49
かく
語
かた
り
給
たま
ふほどに、
會堂
くわいだう
司
つかさ
の
家
いへ
より
人
ひと
きたりて
言
い
ふ『なんぢの
娘
むすめ
は
早
は
や
死
し
にたり、
師
し
を
煩
わづら
はすな』
50
イエス
之
これ
を
聞
き
きて
會堂
くわいだう
司
つかさ
に
答
こた
へたまふ『
懼
おそ
るな、ただ
信
しん
ぜよ。さらば
娘
むすめ
は
救
すく
はれん』
51
イエス
家
いへ
に
到
いた
りて、ペテロ、ヨハネ、ヤコブ
及
およ
び
子
こ
の
父󠄃
ちち
母
はは
の
他
ほか
は、ともに
入
い
ることを
誰
たれ
にも
許
ゆる
し
給
たま
はず。
52
人
ひと
みな
泣
な
き、かつ
子
こ
のために
歎
なげ
き
居
ゐ
たりしが、イエス
言
い
ひたまふ『
泣
な
くな、
死
し
にたるにあらず、
寢
い
ねたるなり』
53
人々
ひとびと
その
死
し
にたるを
知
し
れば、イエスを
嘲笑
あざわら
ふ。
54
然
しか
るにイエス
子
こ
の
手
て
をとり、
呼
よ
びて『
子
こ
よ、
起󠄃
お
きよ』と
言
い
ひ
給
たま
へば、
55
その
靈
れい
かへりて
立刻
たちどころ
に
起󠄃
お
く。イエス
食󠄃物
しょくもつ
を
之
これ
に
與
あた
ふることを
命
めい
じ
給
たま
ふ。
56
その
兩親
ふたおや
おどろきたり。イエス
此
こ
の
有
あ
りし
事
こと
を
誰
たれ
にも
語
かた
らぬやうに
命
めい
じ
給
たま
ふ。
第9章
1
イエス
十二
じふに
弟子
でし
を
召
め
し
寄
よ
せて、もろもろの
惡鬼
あくき
を
制
せい
し、
病
やまひ
をいやす
能力
ちから
と
權威
けんゐ
とを
與
あた
へ、
2
また
神
かみ
の
國
くに
を
宣傳
のべつた
へしめ、
人
ひと
を
醫
いや
さしむる
爲
ため
に
之
これ
を
遣󠄃
つかは
さんとして
言
い
ひ
給
たま
ふ、
3
『
旅
たび
のために
何
なに
をも
持
も
つな、
杖
つゑ
も
袋
ふくろ
も
糧
かて
も
銀
かね
も、また
二
ふた
つの
下衣
したぎ
をも
持
も
つな。
4
いづれの
家
いへ
に
入
い
るとも、
其處
そこ
に
留
とゞま
れ、
而
しか
して
其處
そこ
より
立
た
ち
去
さ
れ。
5
人
ひと
もし
汝
なんぢ
らを
受
う
けずば、その
町
まち
を
立
た
ち
去
さ
るとき
證
あかし
のために
足
あし
の
塵
ちり
を
拂
はら
へ』
6
爰
こゝ
に
弟子
でし
たち
出
い
でて
村々
むらむら
を
歷
へ
巡󠄃
めぐ
り
徧
あまね
く
福音󠄃
ふくいん
を
宣傳
のべつた
へ、
醫
いや
すことを
爲
な
せり。
132㌻
7
さて
國守
こくしゅ
ヘロデ、ありし
凡
すべ
ての
事
こと
をききて
周󠄃章
あわ
てまどふ。
或
ある
人
ひと
はヨハネ
死人
しにん
の
中
うち
より
甦
よみが
へりたりといひ、
8
或
ある
人
ひと
はエリヤ
現
あらは
れたりといひ、また
或
ある
人
ひと
は
古
いにし
への
預言者
よげんしゃ
の
一人
ひとり
、
甦
よみが
へりたりと
言
い
へばなり。
9
ヘロデ
言
い
ふ『ヨハネは
我
われ
すでに
首斬
くびき
りたり、
然
しか
るに
斯
かゝ
る
事
こと
のきこゆる
此
こ
の
人
ひと
は
誰
たれ
なるか』かくてイエスを
見
み
んことを
求
もと
めゐたり。
10
使徒
しと
たち
歸
かへ
りきて、
其
そ
の
爲
な
しし
事
こと
を
具󠄄
つぶさ
にイエスに
吿
つ
ぐ。イエス
彼
かれ
らを
携
たづさ
へて
竊
ひそか
にベツサイダといふ
町
まち
に
退󠄃
しりぞ
きたまふ。
〘97㌻〙
11
然
さ
れど
群衆
ぐんじゅう
これを
知
し
りて
從
したが
ひ
來
きた
りたれば、
彼
かれ
らを
接
う
けて、
神
かみ
の
國
くに
の
事
こと
を
語
かた
り、かつ
治療
ちれう
を
要󠄃
えう
する
人々
ひとびと
を
醫
いや
したまふ。
12
日
ひ
傾
かたぶ
きたれば、
十二
じふに
弟子
でし
きたりて
言
い
ふ『
群衆
ぐんじゅう
を
去
さ
らしめ、
周󠄃圍
まはり
の
村
むら
また
里
さと
にゆき、
宿
やど
をとりて、
食󠄃物
しょくもつ
を
求
もと
めさせ
給
たま
へ。
我
われ
らは
斯
かゝ
る
寂
さび
しき
所󠄃
ところ
に
居
を
るなり』
13
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢら
食󠄃物
しょくもつ
を
與
あた
へよ』
弟子
でし
たち
言
い
ふ『
我
われ
らただ
五
いつ
つのパンと
二
ふた
つの
魚
うを
とあるのみ、
此
こ
の
多
おほ
くの
人
ひと
のために、
徃
ゆ
きて
買
か
はねば
他
ほか
に
食󠄃物
しょくもつ
なし』
14
男
をとこ
おほよそ
五
ご
千
せん
人
にん
ゐたればなり。イエス
弟子
でし
たちに
言
い
ひたまふ『
人々
ひとびと
を
組
くみ
にして
五
ご
十
じふ
人
にん
づつ
坐
ざ
せしめよ』
15
彼
かれ
等
ら
その
如
ごと
くなして、
人々
ひとびと
をみな
坐
ざ
せしむ。
16
斯
かく
てイエス
五
いつ
つのパンと
二
ふた
つの
魚
うを
とを
取
と
り、
天
てん
を
仰
あふ
ぎて
祝
しく
し、
擘
さ
きて
弟子
でし
たちに
付
わた
し、
群衆
ぐんじゅう
のまへに
置
お
かしめ
給
たま
ふ。
17
彼
かれ
らは
食󠄃
くら
ひて
皆
みな
飽󠄄
あ
く。
擘
さ
きたる
餘
あまり
を
集
あつ
めしに
十二
じふに
筐
かご
ほどありき。
18
イエス
人々
ひとびと
を
離
はな
れて
祈
いの
り
居給
ゐたま
ふとき、
弟子
でし
たち
偕
とも
にをりしに
問
と
ひて
言
い
ひたまふ『
群衆
ぐんじゅう
は
我
われ
を
誰
たれ
といふか』
19
答
こた
へて
言
い
ふ『バプテスマのヨハネ、
或
ある
人
ひと
はエリヤ、
或
ある
人
ひと
は
古
いにし
への
預言者
よげんしゃ
の
一人
ひとり
、よみがへりたりと
言
い
ふ』
20
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢらは
我
われ
を
誰
たれ
と
言
い
ふか』ペテロ
答
こた
へて
言
い
ふ『
神
かみ
のキリストなり』
21
イエス
彼
かれ
らを
戒
いまし
めて、
之
これ
を
誰
たれ
にも
吿
つ
げぬやうに
命
めい
じ、かつ
言
い
ひ
給
たま
ふ
133㌻
22
『
人
ひと
の
子
こ
は
必
かなら
ず
多
おほ
くの
苦難
くるしみ
をうけ、
長老
ちゃうらう
・
祭司長
さいしちゃう
・
學者
がくしゃ
らに
棄
す
てられ、かつ
殺
ころ
され、
三日
みっか
めに
甦
よみが
へるべし』
23
また
一同
いちどう
の
者
もの
に
言
い
ひたまふ『
人
ひと
もし
我
われ
に
從
したが
ひ
來
きた
らんと
思
おも
はば、
己
おのれ
をすて、
日々
ひゞ
おのが
十字架
じふじか
を
負󠄅
お
ひて
我
われ
に
從
したが
へ。
24
己
おの
が
生命
いのち
を
救
すく
はんと
思
おも
ふ
者
もの
は
之
これ
を
失
うしな
ひ、
我
わ
がために
己
おの
が
生命
いのち
を
失
うしな
ふその
人
ひと
は
之
これ
を
救
すく
はん。
25
人
ひと
、
全󠄃世界
ぜんせかい
を
贏
まう
くとも
己
おのれ
をうしなひ
己
おのれ
を
損
そん
せば、
何
なに
の
益
えき
あらんや。
26
我
われ
と
我
わ
が
言
ことば
とを
恥
は
づる
者
もの
をば、
人
ひと
の
子
こ
もまた
己
おのれ
と
父󠄃
ちち
と
聖󠄄
せい
なる
御使
みつかひ
たちとの
榮光
えいくわう
をもて
來
きた
らん
時
とき
に
恥
は
づべし。
27
われ
實
まこと
をもて
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
此處
ここ
に
立
た
つ
者
もの
のうちに、
神
かみ
の
國
くに
を
見
み
るまでは、
死
し
を
味
あぢは
はぬ
者
もの
どもあり』
28
これらの
言
ことば
をいひ
給
たま
ひしのち
八日
やうか
ばかり
過󠄃
す
ぎて、ペテロ、ヨハネ、ヤコブを
率󠄃
ひ
きつれ、
祈
いの
らんとて
山
やま
に
登
のぼ
り
給
たま
ふ。
29
かくて
祈
いの
り
給
たま
ふほどに、
御顏
みかほ
の
狀
さま
かはり、
其
そ
の
衣
ころも
白
しろ
くなりて
輝
かゞや
けり。
30
視
み
よ、
二人
ふたり
の
人
ひと
ありてイエスと
共
とも
に
語
かた
る。これはモーセとエリヤとにて、
31
榮光
えいくわう
のうちに
現
あらは
れ、イエスのエルサレムにて
遂󠄅
と
げんとする
逝󠄃去
せいきょ
のことを
言
い
ひゐたるなり。
32
ペテロ
及
およ
び
共
とも
にをる
者
もの
いたく
睡氣
ねむけ
ざしたれど、
目
め
を
覺
さま
してイエスの
榮光
えいくわう
および
偕
とも
に
立
た
つ
二人
ふたり
を
見
み
たり。
〘98㌻〙
33
二人
ふたり
の
者
もの
イエスと
別
わか
れんとする
時
とき
、ペテロ、イエスに
言
い
ふ『
君
きみ
よ、
我
われ
らの
此處
ここ
に
居
を
るは
善
よ
し、
我
われ
ら
三
み
つの
廬
いほり
を
造󠄃
つく
り、
一
ひと
つを
汝
なんぢ
のため、
一
ひと
つをモーセのため、
一
ひと
つをエリヤの
爲
ため
にせん』
彼
かれ
は
言
い
ふ
所󠄃
ところ
を
知
し
らざりき。
34
この
事
こと
を
言
い
ひ
居
を
るほどに、
雲
くも
おこりて
彼
かれ
らを
覆
おほ
ふ。
雲
くも
の
中
うち
に
入
い
りしとき、
弟子
でし
たち
懼
おそ
れたり。
35
雲
くも
より
聲
こゑ
出
い
でて
言
い
ふ『これは
我
わ
が
選󠄄
えら
びたる
子
こ
なり、
汝
なんぢ
ら
之
これ
に
聽
き
け』
36
聲
こゑ
出
い
でし《[*]》とき、
唯
たゞ
イエスひとり
見
み
え
給
たま
ふ。
弟子
でし
たち
默
もく
して、
見
み
し
事
こと
を
何
なに
一
ひと
つ
其
そ
の
頃
ころ
たれにも
吿
つ
げざりき。[*或は「聲やみし」と譯す。]
134㌻
37
次
つぎ
の
日
ひ
、
山
やま
より
下
くだ
りたるに、
大
おほい
なる
群衆
ぐんじゅう
イエスを
迎󠄃
むか
ふ。
38
視
み
よ、
群衆
ぐんじゅう
のうちの
或
ある
人
ひと
さけびて
言
い
ふ『
師
し
よ、
願
ねがは
くは
我
わ
が
子
こ
を
顧󠄃
かへり
みたまへ、
之
これ
は
我
わ
が
獨子
ひとりご
なり。
39
視
み
よ、
靈
れい
の
憑
つ
くときは
俄
にはか
に
叫
さけ
ぶ、
痙攣
ひきつ
けて
沫
あわ
をふかせ、
甚
いた
く
害󠄅
そこな
ひ、
漸
やうや
くにして
離
はな
るるなり。
40
御弟子
みでし
たちに
之
これ
を
逐󠄃
お
ひ
出
いだ
すことを
請󠄃
こ
ひたれど、
能
あた
はざりき』
41
イエス
答
こた
へて
言
い
ひ
給
たま
ふ『ああ
信
しん
なき
曲
まが
れる
代
よ
なる
哉
かな
、われ
何時
いつ
まで
汝
なんぢ
らと
偕
とも
にをりて、
汝
なんぢ
らを
忍󠄄
しの
ばん。
汝
なんぢ
の
子
こ
をここに
連
つ
れ
來
きた
れ』
42
乃
すなは
ち
來
きた
るとき、
惡鬼
あくき
これを
打
う
ち
倒
たふ
し、
甚
いた
く
痙攣
ひきつ
けさせたり。イエス
穢
けが
れし
靈
れい
を
禁
いまし
め、
子
こ
を
醫
いや
して、その
父󠄃
ちち
に
付
わた
したまふ。
43
人々
ひとびと
みな
神
かみ
の
稜威
みいつ
に
驚
をどろ
きあへり。
人々
ひとびと
みなイエスの
爲
な
し
給
たま
ひし
凡
すべ
ての
事
こと
を
怪
あや
しめる
時
とき
、イエス
弟子
でし
たちに
言
い
ひ
給
たま
ふ、
44
『これらの
言
ことば
を
汝
なんぢ
らの
耳
みみ
にをさめよ。
人
ひと
の
子
こ
は
人々
ひとびと
の
手
て
に
付
わた
さるべし』
45
かれら
此
こ
の
言
ことば
を
悟
さと
らず、
辨
わきま
へぬやうに
隱
かく
されたるなり。また
此
こ
の
言
こと
につきて
問
と
ふことを
懼
おそ
れたり。
46
爰
こゝ
に
弟子
でし
たちの
中
うち
に、
誰
たれ
か
大
おほい
ならんとの
爭論
あらそひ
おこりたれば、
47
イエスその
心
こゝろ
の
爭論
あらそひ
を
知
し
りて、
幼兒
をさなご
をとり
御側
みそば
に
置
お
きて
言
い
ひ
給
たま
ふ、
48
『おほよそ
我
わ
が
名
な
のために
此
こ
の
幼兒
をさなご
を
受
う
くる
者
もの
は、
我
われ
を
受
う
くるなり。
我
われ
を
受
う
くる
者
もの
は、
我
われ
を
遣󠄃
つかは
しし
者
もの
を
受
う
くるなり。
汝
なんぢ
らの
中
うち
にて
最
もっと
も
小
ちひさ
き
者
もの
は、これ
大
おほい
なるなり』
49
ヨハネ
答
こた
へて
言
い
ふ『
君
きみ
よ、
御名
みな
によりて
惡鬼
あくき
を
逐󠄃
お
ひいだす
者
もの
を
見
み
しが、
我等
われら
とともに
從
したが
はぬ
故
ゆゑ
に、
之
これ
を
止
とゞ
めたり』
50
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『
止
とゞ
むな。
汝
なんぢ
らに
逆󠄃
さから
はぬ
者
もの
は、
汝
なんぢ
らに
附
つ
く
者
もの
なり』
51
イエス
天
てん
に
擧
あ
げらるる
時
とき
滿
み
ちんとしたれば、
御顏
みかほ
を
堅
かた
くエルサレムに
向
む
けて
進󠄃
すゝ
まんとし、
52
己
おのれ
に
先
さき
だちて
使
つかひ
を
遣󠄃
つかは
したまふ。
彼
かれ
ら
徃
ゆ
きてイエスの
爲
ため
に
備
そなへ
をなさんとて、サマリヤ
人
びと
の
或
ある
村
むら
に
入
い
りしに、
〘99㌻〙
135㌻
53
村
むら
人
びと
そのエルサレムに
向
むか
ひて
徃
ゆ
き
給
たま
ふさまなるが
故
ゆゑ
に、イエスを
受
う
けず、
54
弟子
でし
のヤコブ、ヨハネ、これを
見
み
て
言
い
ふ『
主
しゅ
よ、
我
われ
らが《[*]》
天
てん
より
火
ひ
を
呼
よ
び
下
くだ
して
彼
かれ
らを
滅
ほろぼ
すことを
欲
ほっ
し
給
たま
ふか』[*諸異本「エリヤの爲しし如く」の句あり。]
55
イエス
顧󠄃
かへり
みて
彼
かれ
らを《[*]》
戒
いまし
め、[*異本「戒めて言ひ給ふ、汝らはおのが心の如何なるかを知らぬなり。人の子は、人の生命を亡さんとにあらで、之を救はんとて來れり」の句あり。]
56
遂󠄅
つひ
に
相
あひ
共
とも
に
他
ほか
の
村
むら
に
徃
ゆ
きたまふ。
57
途󠄃
みち
を
徃
ゆ
くとき、
或
ある
人
ひと
イエスに
言
い
ふ『
何處
いづこ
に
徃
ゆ
き
給
たま
ふとも
我
われ
は
從
したが
はん』
58
イエス
言
い
ひたまふ『
狐
きつね
は
穴󠄄
あな
あり、
空󠄃
そら
の
鳥
とり
は
塒
ねぐら
あり、されど
人
ひと
の
子
こ
は
枕
まくら
する
所󠄃
ところ
なし』
59
また
或
ある
人
ひと
に
言
い
ひたまふ『
我
われ
に
從
したが
へ』かれ
言
い
ふ『まづ
徃
ゆ
きて
我
わ
が
父󠄃
ちち
を
葬
はうむ
ることを
許
ゆる
し
給
たま
へ』
60
イエス
言
い
ひたまふ『
死
し
にたる
者
もの
に、その
死
し
にたる
者
もの
を
葬
はうむ
らせ、
汝
なんぢ
は
徃
ゆ
きて
神
かみ
の
國
くに
を
言
い
ひ
弘
ひろ
めよ』
61
また
或
ある
人
ひと
いふ『
主
しゅ
よ、
我
われ
なんぢに
從
したが
はん、されど
先
ま
づ
家
いへ
の
者
もの
に
別
わかれ
を
吿
つ
ぐることを
許
ゆる
し
給
たま
へ』
62
イエス
言
い
ひたまふ『
手
て
を
鋤
すき
につけてのち
後
うしろ
を
顧󠄃
かへり
みる
者
もの
は、
神
かみ
の
國
くに
に
適󠄄
かな
ふ
者
もの
にあらず』
第10章
1
この
事
こと
ののち、
主
しゅ
、ほかに
七
しち
十
じふ
人
にん
をあげて、
自
みづか
ら
徃
ゆ
かんとする
町々
まちまち
處々
ところどころ
へ、おのれに
先
さき
だち
二人
ふたり
づつを
遣󠄃
つかは
さんとして
言
い
ひ
給
たま
ふ、
2
『
收穫
かりいれ
はおほく、
勞働人
はたらきびと
は
少
すくな
し。この
故
ゆゑ
に
收穫
かりいれ
の
主
しゅ
に
勞働人
はたらきびと
をその
收穫場
かりいれば
に
遣󠄃
つかは
し
給
たま
はんことを
求
もと
めよ。
3
徃
ゆ
け、
視
み
よ、
我
われ
なんぢらを
遣󠄃
つかは
すは、
羔羊
こひつじ
を
豺狼
おほかみ
のなかに
入
い
るるが
如
ごと
し。
4
財布
さいふ
も
袋
ふくろ
も
鞋
くつ
も
携
たづさ
ふな。また
途󠄃
みち
にて
誰
たれ
にも
挨拶
あいさつ
すな。
5
孰
いづれ
の
家
いへ
に
入
い
るとも、
先
ま
づ
平󠄃安
へいあん
この
家
いへ
にあれと
言
い
へ。
6
もし
平󠄃安
へいあん
の
子
こ
、そこに
居
を
らば、
汝
なんぢ
らの
祝
しく
する
平󠄃安
へいあん
はその
上
うへ
に
留
とゞま
らん。もし
然
しか
らずば、
其
そ
の
平󠄃安
へいあん
は
汝
なんぢ
らに
歸
かへ
らん。
7
その
家
いへ
にとどまりて、
與
あた
ふる
物
もの
を
食󠄃
く
ひ
飮
の
みせよ。
勞働人
はたらきびと
のその
値
あたひ
を
得
う
るは
相應
ふさは
しきなり。
家
いへ
より
家
いへ
に
移
うつ
るな。
136㌻
8
孰
いづれ
の
町
まち
に
入
い
るとも、
人々
ひとびと
なんぢらを
受
う
けなば、
汝
なんぢ
らの
前󠄃
まへ
に
供
そな
ふる
物
もの
を
食󠄃
しょく
し、
9
其處
そこ
にをる
病
やまひ
のものを
醫
いや
し、また「
神
かみ
の
國
くに
は
汝
なんぢ
らに
近󠄃
ちか
づけり」と
言
い
へ。
10
孰
いづれ
の
町
まち
に
入
い
るとも、
人々
ひとびと
なんぢらを
受
う
けずば、
大路
おほじ
に
出
い
でて、
11
「
我
われ
らの
足
あし
につきたる
汝
なんぢ
らの
町
まち
の
塵
ちり
をも
汝
なんぢ
らに
對
たい
して
拂
はら
ひ
棄
す
つ、されど
神
かみ
の
國
くに
の
近󠄃
ちか
づけるを
知
し
れ」と
言
い
へ。
12
われ
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、かの
日
ひ
にはソドムの
方
かた
その
町
まち
よりも
耐
た
へ
易
やす
からん。
13
禍害󠄅
わざはひ
なる
哉
かな
、コラジンよ、
禍害󠄅
わざはひ
なる
哉
かな
、ベツサイダよ、
汝
なんぢ
らの
中
うち
にて
行
おこな
ひたる
能力
ちから
ある
業
わざ
を、ツロとシドンとにて
行
おこな
ひしならば、
彼
かれ
らは
早
はや
く
荒布
あらぬの
をき、
灰󠄃
はひ
のなかに
坐
ざ
して、
悔改
くいあらた
めしならん。
〘100㌻〙
14
されば
審判󠄄
さばき
にはツロとシドンとのかた
汝
なんぢ
等
ら
よりも、
耐
た
へ
易
やす
からん。
15
カペナウムよ、
汝
なんぢ
は
天
てん
にまで
擧
あ
げらるべきか、
黄泉
よみ
にまで
下
くだ
らん。
16
汝
なんぢ
等
ら
に
聽
き
く
者
もの
は
我
われ
に
聽
き
くなり、
汝
なんぢ
らを
棄
す
つる
者
もの
は
我
われ
を
棄
す
つるなり。
我
われ
を
棄
す
つる
者
もの
は
我
われ
を
遣󠄃
つかは
し
給
たま
ひし
者
もの
を
棄
す
つるなり』
17
七
しち
十
じふ
人
にん
よろこび
歸
かへ
りて
言
い
ふ『
主
しゅ
よ、
汝
なんぢ
の
名
な
によりて
惡鬼
あくき
すら
我
われ
らに
服󠄃
ふく
す』
18
イエス
彼
かれ
らに
言
い
ひ
給
たま
ふ『われ
天
てん
より
閃
ひらめ
く
電光
いなづま
のごとくサタンの
落
お
ちしを
見
み
たり。
19
視
み
よ、われ
汝
なんぢ
らに
蛇
へび
・
蠍
さそり
を
踏
ふ
み、
仇
あた
の
凡
すべ
ての
力
ちから
を
抑
おさ
ふる
權威
けんゐ
を
授
さづ
けたれば、
汝
なんぢ
らを
害󠄅
そこな
ふもの
斷
た
えてなからん。
20
然
さ
れど
靈
れい
の
汝
なんぢ
らに
服󠄃
ふく
するを
喜
よろこ
ぶな、
汝
なんぢ
らの
名
な
の
天
てん
に
錄
しる
されたるを
喜
よろこ
べ』
21
その
時
とき
イエス
聖󠄄
せい
靈
れい
により
喜
よろこ
びて
言
い
ひたまふ『
天
てん
地
ち
の
主
しゅ
なる
父󠄃
ちち
よ、われ
感謝
かんしゃ
す、
此
これ
等
ら
のことを
智
かしこ
きもの
慧󠄄
さと
き
者
もの
に
隱
かく
して
嬰兒
みどりご
に
顯
あらは
したまへり。
父󠄃
ちち
よ、
然
しか
り、
此
かく
のごときは
御意󠄃
みこゝろ
に
適󠄄
かな
へるなり。
22
凡
すべ
ての
物
もの
は
我
われ
わが
父󠄃
ちち
より
委
ゆだ
ねられたり。
子
こ
の
誰
たれ
なるを
知
し
る
者
もの
は、
父󠄃
ちち
の
外
ほか
になく、
父󠄃
ちち
の
誰
たれ
なるを
知
し
る
者
もの
は、
子
こ
また
子
こ
の
欲
ほっ
するままに
顯
あらは
すところの
者
もの
の
外
ほか
になし』
137㌻
23
斯
かく
て
弟子
でし
たちを
顧󠄃
かへり
み
窃
ひそか
に
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢらの
見
み
る
所󠄃
ところ
を
見
み
る
眼
め
は
幸福
さいはひ
なり。
24
われ
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
多
おほ
くの
預言者
よげんしゃ
も、
王
わう
も、
汝
なんぢ
らの
見
み
るところを
見
み
んと
欲
ほっ
したれど
見
み
ず、
汝
なんぢ
らの
聞
き
く
所󠄃
ところ
を
聞
き
かんと
欲
ほっ
したれど
聞
き
かざりき』
25
視
み
よ、
或
あ
る
敎法師
けうほふし
、
立
た
ちてイエスを
試
こゝろ
みて
言
い
ふ『
師
し
よ、われ
永遠󠄄
とこしへ
の
生命
いのち
を
嗣
つ
ぐためには
何
なに
をなすべきか』
26
イエス
言
い
ひたまふ『
律法
おきて
に
何
なに
と
錄
しる
したるか、
汝
なんぢ
いかに
讀
よ
むか』
27
答
こた
へて
言
い
ふ『なんぢ
心
こゝろ
を
盡
つく
し、
精神
せいしん
を
盡
つく
し、
力
ちから
を
盡
つく
し、
思
おもひ
を
盡
つく
して、
主
しゅ
たる
汝
なんぢ
の
神
かみ
を
愛
あい
すべし。また
己
おのれ
のごとく
汝
なんぢ
の
隣
となり
を
愛
あい
すべし』
28
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢの
答
こたへ
は
正
たゞ
し。
之
これ
を
行
おこな
へ、さらば
生
い
くべし』
29
彼
かれ
おのれを
義
ぎ
とせんとしてイエスに
言
い
ふ『わが
隣
となり
とは
誰
たれ
なるか』
30
イエス
答
こた
へて
言
い
ひたまふ『
或
ある
人
ひと
エルサレムよりエリコに
下
くだ
るとき、
强盜
がうたう
にあひしが、
强盜
がうたう
どもその
衣
ころも
を
剝
は
ぎ、
傷
きず
を
負󠄅
お
はせ、
半󠄃死半󠄃生
はんしはんしゃう
にして
棄
す
て
去
さ
りぬ。
31
或
ある
祭司
さいし
たまたま
此
こ
の
途󠄃
みち
より
下
くだ
り、
之
これ
を
見
み
てかなたを
過󠄃
す
ぎ
徃
ゆ
けり。
32
又󠄂
また
レビ
人
びと
も
此處
ここ
にきたり、
之
これ
を
見
み
て
同
おな
じく
彼方
かなた
を
過󠄃
す
ぎ
徃
ゆ
けり
33
然
しか
るに
或
あ
るサマリヤ
人
びと
、
旅
たび
して
其
そ
の
許
もと
にきたり、
之
これ
を
見
み
て
憫
あはれ
み、
34
近󠄃寄
ちかよ
りて
油
あぶら
と
葡萄酒
ぶだうしゅ
とを
注
そゝ
ぎ
傷
きず
を
包
つゝ
みて
己
おの
が
畜
けもの
にのせ、
旅舍
はたごや
に
連
つ
れゆきて
介抱
かいはう
し、
〘101㌻〙
35
あくる
日
ひ
デナリ
二
ふた
つを
出
いだ
し、
主人
あるじ
に
與
あた
へて「この
人
ひと
を
介抱
かいはう
せよ。
費
つひえ
もし
增
ま
さば
我
わ
が
歸
かへ
りくる
時
とき
に
償
つくの
はん」と
言
い
へり。
36
汝
なんぢ
いかに
思
おも
ふか、
此
こ
の
三人
さんにん
のうち、
孰
いづれ
か
强盜
がうたう
にあひし
者
もの
の
隣
となり
となりしぞ』
37
かれ
言
い
ふ『その
人
ひと
に
憐憫
あはれみ
を
施
ほどこ
したる
者
もの
なり』イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢも
徃
ゆ
きて
其
そ
の
如
ごと
くせよ』
38
斯
かく
て
彼
かれ
ら
進󠄃
すゝ
みゆく
間
うち
に、イエス
或
ある
村
むら
に
入
い
り
給
たま
へば、マルタと
名
な
づくる
女
をんな
おのが
家
いへ
に
迎󠄃
むか
へ
入
い
る。
138㌻
39
その
姉妹
しまひ
にマリヤといふ
者
もの
ありて、イエスの
足下
あしもと
に
坐
ざ
し、
御言
みことば
を
聽
き
きをりしが、
40
マルタ
饗應
もてなし
のこと
多
おほ
くして
心
こゝろ
いりみだれ、
御許
みもと
に
進󠄃
すゝ
みよりて
言
い
ふ『
主
しゅ
よ、わが
姉妹
しまい
われを
一人
ひとり
のこして
働
はたら
かするを、
何
なに
とも
思
おも
ひ
給
たま
はぬか、
彼
かれ
に
命
めい
じて
我
われ
を
助
たす
けしめ
給
たま
へ』
41
主
しゅ
、
答
こた
へて
言
い
ひ
給
たま
ふ『マルタよ、マルタよ、
汝
なんぢ
さまざまの
事
こと
により、
思
おも
ひ
煩
わづら
ひて
心勞
こゝろづかひ
す。
42
されど
無
な
くてならぬものは《[*]》
多
おほ
からず、
唯一
ただひと
つのみ、マリヤは
善
よ
きかたを
選󠄄
えら
びたり。
此
これ
は
彼
かれ
より
奪
うば
ふべからざるものなり』[*異本「多からず」の句なし。]
第11章
1
イエス
或
ある
處
ところ
にて
祈
いの
り
居給
ゐたま
ひしが、その
終󠄃
をは
りしとき、
弟子
でし
の
一人
ひとり
いふ『
主
しゅ
よ、ヨハネの
其
そ
の
弟子
でし
に
敎
をし
へし
如
ごと
く、
祈
いの
ることを
我
われ
らに
敎
をし
へ
給
たま
へ』
2
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢら
祈
いの
るときに
斯
か
く
言
い
へ「
父󠄃
ちち
よ、
願
ねがは
くは
御名
みな
の
崇
あが
められん
事
こと
を。
御國
みくに
の
來
きた
らん
事
こと
を。
3
我
われ
ら《[*]》の
日用
にちよう
の
糧
かて
を
日每
ひごと
に
與
あた
へ
給
たま
へ。[*異本「御心の天のごとく地にも行はれんことを」との句あり。]
4
我
われ
らに
負󠄅債
おひめ
ある
凡
すべ
ての
者
もの
を
我
われ
ら
免
ゆる
せば、
我
われ
らの
罪
つみ
をも
免
ゆる
し
給
たま
へ。
我
われ
らを
嘗試
こゝろみ
にあはせ
給
たま
ふな」《[*]》』[*異本「惡より救ひ出したまへ」の句あり。]
5
また
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢらの
中
うち
たれか
友
とも
あらんに、
夜半󠄃
よなか
にその
許
もと
に
徃
ゆ
きて「
友
とも
よ、
我
われ
に
三
み
つのパンを
貸
か
せ。
6
わが
友
とも
、
旅
たび
より
來
きた
りしに、
之
これ
に
供
そな
ふべき
物
もの
なし」と
言
い
ふ
時
とき
、
7
かれ
內
うち
より
答
こた
へて「われを
煩
わづら
はすな、
戶
と
ははや
閉
と
ぢ、
子
こ
らは
我
われ
と
共
とも
に
臥所󠄃
ふしど
にあり、
起󠄃
た
ちて
與
あた
へ
難
かた
し」といふ
事
こと
ありとも、
8
われ
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
友
とも
なるによりては
起󠄃
た
ちて
與
あた
へねど、
求
もとめ
の
切
せつ
なるにより、
起󠄃
お
きて
其
そ
の
要󠄃
えう
する
程
ほど
のものを
與
あた
へん。
9
われ
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
求
もと
めよ、さらば
與
あた
へられん。
尋󠄃
たづ
ねよ、さらば
見出
みいだ
さん。
門
もん
を
叩
たゝ
け、さらば
開
ひら
かれん。
10
すべて
求
もと
むる
者
もの
は
得
え
、
尋󠄃
たづ
ぬる
者
もの
は
見出
みいだ
し、
門
もん
を
叩
たゝ
く
者
もの
は
開
ひら
かるるなり。
11
汝
なんぢ
等
ら
のうち
父󠄃
ちち
たる
者
もの
、たれか
其
そ
の
子
こ
、
魚
うを
を
求
もと
めんに、《[*]》
魚
うを
の
代
かわり
に
蛇
へび
を
與
あた
へ、[*異本 子と魚との間に「パンな求めんに、石を與へ」の句あり。]
139㌻
12
卵
たまご
を
求
もと
めんに
蠍
さそり
を
與
あた
へんや。
13
さらば
汝
なんぢ
ら
惡
あ
しき
者
もの
ながら、
善
よ
き
賜物
たまもの
をその
子
こ
らに
與
あた
ふるを
知
し
る。まして
天
てん
の
父󠄃
ちち
は
求
もと
むる
者
もの
に
聖󠄄
せい
靈
れい
を
賜
たま
はざらんや』
〘102㌻〙
14
さてイエス
啞
おふし
の
惡鬼
あくき
を
逐󠄃
お
ひいだし
給
たま
へば、
惡鬼
あくき
いでて
啞
おふし
、
物
もの
言
い
ひしにより、
群衆
ぐんじゅう
あやしめり。
15
其
そ
の
中
うち
の
或
ある
者
もの
ども
言
い
ふ『かれは
惡鬼
あくき
の
首
かしら
ベルゼブルによりて
惡鬼
あくき
を
逐󠄃
お
ひ
出
いだ
すなり』
16
また
或
ある
者
もの
どもは、イエスを
試
こゝろ
みんとて
天
てん
よりの
徴
しるし
を
求
もと
む。
17
イエスその
思
おもひ
を
知
し
りて
言
い
ひ
給
たま
ふ『すべて
分󠄃
わか
れ
爭
あらそ
ふ
國
くに
は
亡
ほろ
び、
分󠄃
わか
れ
爭
あらそ
ふ
家
いへ
は
倒
たふ
る。
18
サタンもし
分󠄃
わか
れ
爭
あらそ
はば、その
國
くに
いかで
立
た
つべき。
汝
なんぢ
等
ら
わが
惡鬼
あくき
を
逐󠄃
お
ひ
出
いだ
すを、ベルゼブルに
由
よ
ると
言
い
へばなり。
19
我
われ
もしベルゼブルによりて、
惡鬼
あくき
を
逐󠄃
お
ひ
出
いだ
さば、
汝
なんぢ
らの
子
こ
は
誰
たれ
によりて
之
これ
を
逐󠄃
お
ひ
出
いだ
すか。この
故
ゆゑ
に
彼
かれ
らは
汝
なんぢ
らの
審判󠄄
さばき
人
ひと
となるべし。
20
然
さ
れど
我
われ
もし
神
かみ
の
指
ゆび
によりて、
惡鬼
あくき
を
逐󠄃
お
ひ
出
いだ
さば、
神
かみ
の
國
くに
は
旣
すで
に
汝
なんぢ
らに
到
いた
れるなり。
21
强
つよ
きもの
武具󠄄
ぶぐ
をよろひて
己
おの
が
屋敷
やしき
を
守
まも
るときは、
其
そ
の
所󠄃有
もちもの
、
安全󠄃
あんぜん
なり。
22
然
さ
れど
更
さら
に
强
つよ
きもの
來
きた
りて、
之
これ
に
勝󠄃
か
つときは、
恃
たのみ
とする
武具󠄄
ぶぐ
をことごとく
奪
うば
ひて、
分󠄃捕物
ぶんどりもの
を
分󠄃
わか
たん。
23
我
われ
と
偕
とも
ならぬ
者
もの
は
我
われ
にそむき、
我
われ
と
共
とも
に
集
あつ
めぬ
者
もの
は
散
ちら
すなり。
24
穢
けが
れし
靈
れい
、
人
ひと
を
出
い
づる
時
とき
は、
水
みづ
なき
處
ところ
を
巡󠄃
めぐ
りて、
休
やすみ
を
求
もと
む。されど
得
え
ずして
言
い
ふ「わが
出
い
でし
家
いへ
に
歸
かへ
らん」
25
歸
かへ
りて
其
そ
の
家
いへ
の
掃
は
き
淨
きよ
められ、
飾󠄃
かざ
られたるを
見
み
、
26
遂󠄅
つひ
に
徃
ゆ
きて
己
おのれ
よりも
惡
あ
しき
他
ほか
の
七
なゝ
つの
靈
れい
を
連
つ
れきたり、
共
とも
に
入
い
りて
此處
ここ
に
住󠄃
す
む。さればその
人
ひと
の
後
のち
の
狀
さま
は、
前󠄃
まへ
よりも
惡
あ
しくなるなり』
27
此
これ
等
ら
のことを
言
い
ひ
給
たま
ふとき、
群衆
ぐんじゅう
の
中
うち
より
或
ある
女
をんな
、
聲
こゑ
をあげて
言
い
ふ『
幸福
さいはひ
なるかな、
汝
なんぢ
を
宿
やど
しし
胎
たい
、なんぢの
哺
す
ひし
乳󠄃房
ちぶさ
は』
28
イエス
言
い
ひたまふ『
更
さら
に
幸福
さいはひ
なるかな、
神
かみ
の
言
ことば
を
聽
き
きて
之
これ
を
守
まも
る
人
ひと
は』
29
群衆
ぐんじゅう
おし
集
あつま
れる
時
とき
、イエス
言
い
ひ
出
い
でたまふ『
今
いま
の
世
よ
は
邪曲
よこしま
なる
代
よ
にして
徴
しるし
を
求
もと
む。されどヨナの
徴
しるし
のほかに
徴
しるし
は
與
あた
へられじ。
140㌻
30
ヨナがニネベの
人
ひと
に
徴
しるし
となりし
如
ごと
く、
人
ひと
の
子
こ
もまた
今
いま
の
代
よ
に
然
しか
らん。
31
南
みなみ
の
女王
にょわう
、
審判󠄄
さばき
のとき、
今
いま
の
代
よ
の
人
ひと
と
共
とも
に
起󠄃
お
きて、
之
これ
が
罪
つみ
を
定
さだ
めん。
彼
かれ
はソロモンの
智慧󠄄
ちゑ
を
聽
き
かんとて
地
ち
の
極
はて
より
來
きた
れり。
視
み
よ、ソロモンよりも
勝󠄃
まさ
るもの
此處
ここ
にあり。
32
ニネベの
人
ひと
、
審判󠄄
さばき
のとき、
今
いま
の
代
よ
の
人
ひと
と
共
とも
に
立
た
ちて
之
これ
が
罪
つみ
を
定
さだ
めん。
彼
かれ
らはヨナの
宣
の
ぶる
言
ことば
によりて
悔改
くいあらた
めたり。
視
み
よ、ヨナよりも
勝󠄃
まさ
るもの
此處
ここ
に
在
あ
り。
33
誰
たれ
も
燈火
ともしび
をともして、
穴󠄄藏
あなぐら
の
中
うち
または
升
ます
の
下
した
におく
者
もの
なし。
入
い
り
來
きた
る
者
もの
の
光
ひかり
を
見
み
んために、
燈臺
とうだい
の
上
うへ
に
置
お
くなり。
34
汝
なんぢ
の
身
み
の
燈火
ともしび
は
目
め
なり、
汝
なんぢ
の
目
め
正
たゞ
しき
時
とき
は、
全󠄃身
ぜんしん
明
あか
るからん。されど
惡
あ
しき
時
とき
は、
身
み
もまた
暗󠄃
くら
からん。
35
この
故
ゆゑ
に
汝
なんぢ
の
內
うち
の
光
ひかり
、
闇
やみ
にはあらぬか、
省
かへり
みよ。
〘103㌻〙
36
もし
汝
なんぢ
の
全󠄃身
ぜんしん
明
あか
るくして
暗󠄃
くら
き
所󠄃
ところ
なくば、
輝
かゞや
ける
燈火
ともしび
に
照
てら
さるる
如
ごと
く、その
身
み
全󠄃
まった
く
明
あか
るからん』
37
イエスの
語
かた
り
給
たま
へるとき、
或
ある
パリサイ
人
びと
その
家
いへ
にて《[*]》
食󠄃事
しょくじ
し
給
たま
はん
事
こと
を
請󠄃
こ
ひたれば、
入
い
りて
席
せき
に
著
つ
きたまふ。[*或は「ひろげ」と譯す。]
38
食󠄃事
しょくじ
前󠄃
まへ
に
手
て
を
洗
あら
ひ
給
たま
はぬを、
此
こ
のパリサイ
人
びと
見
み
て
怪
あや
しみたれば、
39
主
しゅ
これに
言
い
ひたまふ『
今
いま
や
汝
なんぢ
らパリサイ
人
びと
は、
酒杯
さかづき
と
盆󠄃
ぼん
との
外
そと
を
潔󠄄
きよ
くす、
然
さ
れど
汝
なんぢ
らの
內
うち
は
貪慾
どんよく
と
惡
あく
とにて
滿
み
つるなり。
40
愚
おろか
なる
者
もの
よ、
外
そと
を
造󠄃
つく
りし
者
もの
は、
內
うち
をも
造󠄃
つく
りしならずや。
41
唯
ただ
その
內
うち
にある
物
もの
を
施
ほどこ
せ。さらば、
一切
すべて
の
物
もの
なんぢらの
爲
ため
に
潔󠄄
きよ
くなるなり。
42
禍害󠄅
わざはひ
なるかな、パリサイ
人
びと
よ、
汝
なんぢ
らは
薄荷
はくか
・
芸香
うんかう
その
他
ほか
あらゆる
野菜
やさい
の
十分󠄃
じふぶん
の
一
いち
を
納󠄃
をさ
めて、
公平󠄃
こうへい
と
神
かみ
に
對
たい
する
愛
あい
とを
等閑
なほざり
にす、
然
さ
れど
之
これ
は
行
おこな
ふべきものなり。
而
しか
して
彼
かれ
もまた
等閑
なほざり
にすべきものならず。
43
禍害󠄅
わざはひ
なるかな、パリサイ
人
びと
よ、
汝
なんぢ
らは
會堂
くわいだう
の
上座
じゃうざ
、
市場
いちば
にての
敬禮
けいれい
を
喜
よろこ
ぶ。
141㌻
44
禍害󠄅
わざはひ
なるかな、
汝
なんぢ
らは
露
あらは
れぬ
墓
はか
のごとし。
其
そ
の
上
うへ
を
步
あゆ
む
人
ひと
これを
知
し
らぬなり』
45
敎法師
けうほふし
の
一人
ひとり
、
答
こた
へて
言
い
ふ『
師
し
よ、
斯
かゝ
ることを
言
い
ふは、
我
われ
らをも
辱
はづか
しむるなり』
46
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢら
敎法師
けうほふし
も
禍害󠄅
わざはひ
なる
哉
かな
。なんぢら
擔
にな
ひ
難
がた
き
荷
に
を
人
ひと
に
負󠄅
おは
せて、
自
みづか
ら
指
ゆび
一
ひと
つだに
其
そ
の
荷
に
につけぬなり。
47
禍害󠄅
わざはひ
なるかな、
汝
なんぢ
らは
預言者
よげんしゃ
たちの
墓
はか
を
建
た
つ、
之
これ
を
殺
ころ
しし
者
もの
は
汝
なんぢ
らの
先祖
せんぞ
なり。
48
げに
汝
なんぢ
らは
先祖
せんぞ
の
所󠄃作
しわざ
を
可
よ
しとする
證人
あかしびと
ぞ。それは
彼
かれ
らは
之
これ
を
殺
ころ
し、
汝
なんぢ
らは
其
そ
の
墓
はか
を
建
た
つればなり。
49
この
故
ゆゑ
に
神
かみ
の
智慧󠄄
ちゑ
、いへる
言
こと
あり、われ
預言者
よげんしゃ
と
使徒
しと
とを
彼
かれ
らに
遣󠄃
つかは
さんに、その
中
うち
の
或
ある
者
もの
を
殺
ころ
し、また
逐󠄃
お
ひ
苦
くる
しめん。
50
世
よ
の
創
はじめ
より
流
なが
されたる
凡
すべ
ての
預言者
よげんしゃ
の
血
ち
、
51
即
すなは
ちアベルの
血
ち
より、
祭壇
さいだん
と
聖󠄄所󠄃
せいじょ
との
間
あひだ
にて
殺
ころ
されたるザカリヤの
血
ち
に
至
いた
るまでを、
今
いま
の
代
よ
に
糺
たゞ
すべきなり。
然
しか
り、われ
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
今
いま
の
代
よ
は
糺
たゞ
さるべし。
52
禍害󠄅
わざはひ
なるかな、
敎法師
けうほふし
よ、なんぢらは
知識
ちしき
の
鍵
かぎ
を
取
と
り
去
さ
りて
自
みづか
ら
入
い
らず、
入
い
らんとする
人
ひと
をも
止
と
めしなり』
53
此處
ここ
より
出
い
で
給
たま
へば、
學者
がくしゃ
・パリサイ
人
びと
ら
烈
はげ
しく
詰
つ
め
寄
よ
せて
樣々
さまざま
のことを
詰
なじ
りはじめ、
54
その
口
くち
より
何事
なにごと
をか
捉
とら
へんと
待構
まちかま
へたり。
〘104㌻〙
第12章
1
その
時
とき
、
無數
むすう
の
人
ひと
あつまりて、
群衆
ぐんじゅう
ふみ
合
あ
ふばかりなり。イエスまづ
弟子
でし
たちに
言
い
ひ
出
い
で
給
たま
ふ『なんぢら、パリサイ
人
びと
のパンだねに
心
こゝろ
せよ、これ
僞善
ぎぜん
なり。
2
蔽
おほ
はれたるものに
露
あらは
れぬはなく、
隱
かく
れたるものに
知
し
られぬはなし。
3
この
故
ゆゑ
に
汝
なんぢ
らが
暗󠄃
くら
きにて
言
い
ふことは、
明
あか
るきにて
聞
きこ
え、
部屋
へや
の
內
うち
にて
耳
みゝ
によりて
語
かた
りしことは、
屋
や
の
上
うへ
にて
宣
の
べらるべし。
142㌻
4
我
わ
が
友
とも
たる
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ。
身
み
を
殺
ころ
して
後
のち
に
何
なに
をも
爲
な
し
得
え
ぬ
者
もの
どもを
懼
おそ
るな。
5
懼
おそ
るべきものを
汝
なんぢ
らに
示
しめ
さん。
殺
ころ
したる
後
のち
ゲヘナに
投
な
げ
入
い
るる
權威
けんゐ
ある
者
もの
を
懼
おそ
れよ。われ
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、げに
之
これ
を
懼
おそ
れよ。
6
五
ご
羽
は
の
雀
すずめ
は
二錢
にせん
にて
賣
う
るにあらずや、
然
しか
るに
其
そ
の
一
いち
羽
は
だに
神
かみ
の
前󠄃
まへ
に
忘
わす
れらるる
事
こと
なし。
7
汝
なんぢ
らの
頭
かしら
の
髮
け
までもみな
數
かぞ
へらる。
懼
おそ
るな、
汝
なんぢ
らは
多
おほ
くの
雀
すゞめ
よりも
優
すぐ
るるなり。
8
われ
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
凡
おほよ
そ
人
ひと
の
前󠄃
まへ
に
我
われ
を
言
い
ひあらはす
者
もの
を、
人
ひと
の
子
こ
もまた
神
かみ
の
使
つかひ
たちの
前󠄃
まへ
にて
言
い
ひあらはさん。
9
されど
人
ひと
の
前󠄃
まへ
にて
我
われ
を
否
いな
む
者
もの
は、
神
かみ
の
使
つかひ
たちの
前󠄃
まへ
にて
否
いな
まれん。
10
凡
おほよ
そ
言
ことば
をもて
人
ひと
の
子
こ
に
逆󠄃
さから
ふ
者
もの
は
赦
ゆる
されん。
然
さ
れど
聖󠄄
せい
靈
れい
を
瀆
けが
すものは
赦
ゆる
されじ。
11
人
ひと
なんぢらを
會堂
くわいだう
、
或
あるひ
は
司
つかさ
、あるひは
權威
けんゐ
ある
者
もの
の
前󠄃
まへ
に
引
ひ
きゆかん
時
とき
、いかに
何
なに
を
答
こた
へ、または
何
なに
を
言
い
はんと
思
おも
ひ
煩
わづら
ふな。
12
聖󠄄
せい
靈
れい
そのとき
言
い
ふべきことを
敎
をし
へ
給
たま
はん』
13
群衆
ぐんじゅう
のうちの
或
ある
人
ひと
いふ『
師
し
よ、わが
兄弟
きゃうだい
に
命
めい
じて、
嗣業
しげふ
を
我
われ
に
分󠄃
わか
たしめ
給
たま
へ』
14
之
これ
に
言
い
ひたまふ『
人
ひと
よ、
誰
た
が
我
われ
を
立
た
てて
汝
なんぢ
らの
裁判󠄄人
さいばんにん
また
分󠄃配
ぶんぱい
者
しゃ
とせしぞ』
15
斯
かく
て
人々
ひとびと
に
言
い
ひたまふ『
愼
つゝし
みて
凡
すべ
ての
慳貪
むさぼり
をふせげ、
人
ひと
の
生命
いのち
は
所󠄃有
もちもの
の
豐
ゆたか
なるには
因
よ
らぬなり』
16
また
譬
たとへ
を
語
かた
りて
言
い
ひ
給
たま
ふ『ある
富
と
める
人
ひと
、その
畑
はた
豐
ゆたか
に
實
みの
りたれば、
17
心
こゝろ
の
中
うち
に
議
はか
りて
言
い
ふ「われ
如何
いか
にせん、
我
わ
が
作物
さくもつ
を
藏
をさ
めおく
處
ところ
なし」
18
遂󠄅
つひ
に
言
い
ふ「われ
斯
か
く
爲
な
さん、わが
倉
くら
を
毀
こぼ
ち、
更
さら
に
大
おほい
なるものを
建
た
てて、
其處
そこ
にわが
穀物
こくもつ
および
善
よ
き
物
もの
をことごとく
藏
をさ
めん。
19
斯
かく
てわが《[*]》
靈魂
たましひ
に
言
い
はん、
靈魂
たましひ
よ、
多年
たねん
を
過󠄃
すご
すに
足
た
る
多
おほ
くの
善
よ
き
物
もの
を
貯
たくは
へたれば、
安
やす
んぜよ、
飮食󠄃
のみくひ
せよ、
樂
たの
しめよ」[*或は「生命」と譯す。]
20
然
しか
るに
神
かみ
かれに「
愚
おろか
なる
者
もの
よ、
今宵󠄃
こよひ
なんぢの
靈魂
たましひ
とらるべし、
然
さ
らば
汝
なんぢ
の
備
そな
へたる
物
もの
は、
誰
た
がものとなるべきぞ」と
言
い
ひ
給
たま
へり。
21
己
おのれ
のために
財
たから
を
貯
たくは
へ、
神
かみ
に
對
たい
して
富
と
まぬ
者
もの
は、
斯
かく
のごとし』
143㌻
22
また
弟子
でし
たちに
言
い
ひ
給
たま
ふ『この
故
ゆゑ
に、われ
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
何
なに
を
食󠄃
くら
はんと
生命
いのち
のことを
思
おも
ひ
煩
わづら
ひ、
何
なに
を
著
き
んと
體
からだ
のことを
思
おも
ひ
煩
わづら
ふな。
23
生命
いのち
は
糧
かて
にまさり、
體
からだ
は
衣
ころも
に
勝󠄃
まさ
るなり。
〘105㌻〙
24
鴉
からす
を
思
おも
ひ
見
み
よ、
播
ま
かず、
刈
か
らず、
納󠄃屋
なや
も
倉
くら
もなし。
然
しか
るに
神
かみ
は
之
これ
を
養󠄄
やしな
ひたまふ、
汝
なんぢ
ら
鳥
とり
に
優
すぐ
るること
幾許
いくばく
ぞや。
25
汝
なんぢ
らの
中
うち
たれか
思
おも
ひ
煩
わづら
ひて、《[*]》
身
み
の
長
たけ
一尺
いっしゃく
を
加
くは
へ
得
え
んや。[*或は「その生命を寸陰も延べ得んや」と譯す。]
26
然
さ
れば
最
いと
小
ちひさ
き
事
こと
すら
能
あた
はぬに、
何
なん
ぞ
他
ほか
のことを
思
おも
ひ
煩
わづら
ふか。
27
百合
ゆり
を《[*]》
思
おも
ひ
見
み
よ、
紡
つむ
がず、
織
お
らざるなり。
然
さ
れど
我
われ
なんぢらに
吿
つ
ぐ、
榮華
えいぐわ
を
極
きは
めたるソロモンだに
其
そ
の
服󠄃裝
よそほひ
この
花
はな
の
一
ひと
つにも
及
し
かざりき。[*或は「野の花」と譯す。]
28
今日
けふ
ありて、
明日
あす
爐
ろ
に
投
な
げ
入
い
れらるる
野
の
の
草
くさ
をも、
神
かみ
は
斯
か
く
裝
よそほ
ひ
給
たま
へば、
况
まし
て
汝
なんぢ
らをや、ああ
信仰
しんかう
うすき
者
もの
よ、
29
なんぢら
何
なに
を
食󠄃
く
ひ、
何
なに
を
飮
の
まんと
求
もと
むな、また
心
こゝろ
を
動
うご
かすな。
30
是
これ
みな
世
よ
の
異邦人
いはうじん
の
切
せつ
に
求
もと
むる
所󠄃
ところ
なれど、
汝
なんぢ
らの
父󠄃
ちち
は
此
これ
等
ら
の
物
もの
の、なんぢらに
必要󠄃
ひつえう
なるを
知
し
り
給
たま
へばなり。
31
ただ《[*]》
父󠄃
ちち
の
御國
みくに
を
求
もと
めよ。さらば
此
これ
等
ら
の
物
もの
は、なんぢらに
加
くは
へらるべし。[*異本「神の國」とあり。]
32
懼
おそ
るな
小
ちひさ
き
群
むれ
よ、なんぢらに
御國
みくに
を
賜
たま
ふことは、
汝
なんぢ
らの
父󠄃
ちち
の
御意󠄃
みこゝろ
なり。
33
汝
なんぢ
らの
所󠄃有
もちもの
を
賣
う
りて
施濟
ほどこし
をなせ。
己
おの
がために
舊
ふる
びぬ
財布
さいふ
をつくり、
盡
つ
きぬ
財寶
たから
を
天
てん
に
貯
たくは
へよ。かしこは
盜人
ぬすびと
も
近󠄃
ちか
づかず、
蟲
むし
も
壞
やぶ
らぬなり、
34
汝
なんぢ
らの
財寶
たから
のある
所󠄃
ところ
には、
汝
なんぢ
らの
心
こゝろ
もあるべし。
35
なんぢら
腰
こし
に
帶
おび
し、
燈火
ともしび
をともして
居
を
れ。
36
主人
しゅじん
、
婚筵
こんえん
より
歸
かへ
り
來
きた
りて
戶
と
を
叩
たゝ
かば、
直
たゞ
ちに
開
ひら
くために
待
ま
つ
人
ひと
のごとくなれ。
37
主人
しゅじん
の
來
きた
るとき、
目
め
を
覺
さま
しをるを
見
み
らるる
僕
しもべ
どもは
幸福
さいはひ
なるかな。われ
誠
まこと
に
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
主人
しゅじん
帶
おび
して
其
そ
の
僕
しもべ
どもを
食󠄃事
しょくじ
の
席
せき
に
就
つ
かせ、
進󠄃
すゝ
みて
給仕
きふじ
すべし。
144㌻
38
主人
しゅじん
、
夜
よ
の
半󠄃
なかば
ごろ
若
もし
くは
夜
よ
の
明
あ
くる
頃
ころ
に
來
きた
るとも、
斯
かく
の
如
ごと
くなるを
見
み
らるる
僕
しもべ
どもは
幸福
さいはひ
なり。
39
なんぢら
之
これ
を《[*]》
知
し
れ、
家主
いへあるじ
もし
盜人
ぬすびと
いづれの
時
とき
來
きた
るかを
知
し
らば、その
家
いへ
を
穿
うが
たすまじ。[*或は「知る」と譯す。]
40
汝
なんぢ
らも
備
そな
へをれ。
人
ひと
の
子
こ
は
思
おも
はぬ
時
とき
に
來
きた
ればなり』
41
ペテロ
言
い
ふ『
主
しゅ
よ、この
譬
たとへ
を
言
い
ひ
給
たま
ふは
我
われ
らにか、また
凡
すべ
ての
人
ひと
にか』
42
主
しゅ
いひ
給
たま
ふ『
主人
しゅじん
が
時
とき
に
及
およ
びて
僕
しもべ
どもに
定
さだめ
の
糧
かて
を
與
あた
へさする
爲
ため
に、その
僕
しもべ
どもの
上
うへ
に
立
た
つる
忠實
まめやか
にして
慧󠄄
さと
き
支配人
しはいにん
は
誰
たれ
なるか、
43
主人
しゅじん
のきたる
時
とき
、かく
爲
な
し
居
を
るを
見
み
らるる
僕
しもべ
は
幸福
さいはひ
なるかな。
44
われ
實
まこと
をもて
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
主人
しゅじん
すべての
所󠄃有
もちもの
を
彼
かれ
に
掌
つかさ
どらすべし。
45
若
も
しその
僕
しもべ
、
心
こゝろ
のうちに
主人
しゅじん
の
來
きた
るは
遲
おそ
しと
思
おも
ひ、
僕
しもべ
・
婢女
はしため
をたたき、
飮食󠄃
のみくひ
して
醉
ゑ
ひ
始
はじ
めなば、
46
その
僕
しもべ
の
主人
しゅじん
、おもはぬ
日
ひ
、
知
し
らぬ
時
とき
に
來
きた
りて、
之
これ
を《[*]》
烈
はげ
しく
笞
むちう
ち、その
報
むくい
を
不
ふ
忠
ちゅう
者
もの
と
同
おな
じうせん。[*烈しく笞うち、或は「挽き斬り」と譯す。]
47
主人
しゅじん
の
意󠄃
こゝろ
を
知
し
りながら
用意󠄃
ようい
せず、
又󠄂
また
その
意󠄃
こゝろ
に
從
したが
はぬ
僕
しもべ
は、
笞
むちう
たるること
多
おほ
からん。
〘106㌻〙
48
然
さ
れど
知
し
らずして、
打
う
たるべき
事
こと
をなす
者
もの
は、
笞
むちう
たるること
少
すくな
からん。
多
おほ
く
與
あた
へらるる
者
もの
は、
多
おほ
く
求
もと
められん。
多
おほ
く
人
ひと
に
托
あづ
くれば、
更
さら
に
多
おほ
くその
人
ひと
より
請󠄃
こ
ひ
求
もと
むべし。
49
我
われ
は
火
ひ
を
地
ち
に
投
とう
ぜんとて
來
きた
れり。《[*]》
此
こ
の
火
ひ
すでに
燃
も
えたらんには、
我
われ
また
何
なに
をか
望󠄇
のぞ
まん。[*或は「われ何をか望󠄇まん、此の火の旣に燃えたらんことなり」と譯す。]
50
されど
我
われ
には
受
う
くべきバプテスマあり。その
成
な
し
遂󠄅
と
げらるるまでは
思
おも
ひ
逼
せま
ること
如何
いか
許
ばかり
ぞや。
51
われ
地
ち
に
平󠄃和
へいわ
を
與
あた
へんために
來
きた
ると
思
おも
ふか。われ
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
然
しか
らず、
反
かへ
つて
分󠄃爭
ぶんさう
なり。
52
今
いま
より
後
のち
、
一家
いっか
に
五
ご
人
にん
あらば
三人
さんにん
は
二人
ふたり
に、
二人
ふたり
は
三人
さんにん
に
分󠄃
わか
れ
爭
あらそ
はん。
53
父󠄃
ちち
は
子
こ
に、
子
こ
は
父󠄃
ちち
に、
母
はは
は
娘
むすめ
に、
娘
むすめ
は
母
はは
に、
姑姆
しうとめ
は
嫁
よめ
に、
嫁
よめ
は
姑姆
しうとめ
に
分󠄃
わか
れ
爭
あらそ
はん』
145㌻
54
イエスまた
群衆
ぐんじゅう
に
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢら
雲
くも
の
西
にし
より
起󠄃
おこ
るを
見
み
れば、
直
たゞ
ちに
言
い
ふ「
急󠄃雨
はやさめ
きたらん」と、
果
はた
して
然
しか
り。
55
また
南
みなみ
風
かぜ
ふけば、
汝
なんぢ
等
ら
いふ「
强
つよ
き
暑
あつさ
あらん」と、
果
はた
して
然
しか
り。
56
僞善者
ぎぜんしゃ
よ、
汝
なんぢ
ら
天
てん
地
ち
の
氣色
けはひ
を
辨
わきま
ふることを
知
し
りて、
今
いま
の
時
とき
を
辨
わきま
ふること
能
あた
はぬは
何
なん
ぞや。
57
また
何
なに
故
ゆゑ
みづから
正
たゞ
しき
事
こと
を
定
さだ
めぬか。
58
なんぢ
訴
うった
ふる
者
もの
とともに
司
つかさ
に
徃
ゆ
くとき、
途󠄃
みち
にて
和解
わかい
せんことを
力
つと
めよ。
恐
おそ
らくは
訴
うった
ふる
者
もの
、なんぢを
審判󠄄
さばき
人
ひと
に
引
ひ
きゆき、
審判󠄄
さばき
人
ひと
なんぢを
下役
したやく
にわたし、
下役
したやく
なんぢを
獄
ひとや
に
投
な
げ
入
い
れん。
59
われ
汝
なんぢ
に
吿
つ
ぐ、
一
いち
レプタも
殘
のこ
りなく
償
つくの
はずば、
其處
そこ
に
出
い
づること
能
あた
はじ』
第13章
1
その
折
をり
しも
或
ある
人々
ひとびと
きたりてピラトがガリラヤ
人
びと
らの
血
ち
を
彼
かれ
らの
犧牲
いけにへ
にまじへたりし
事
こと
をイエスに
吿
つ
げたれば、
2
答
こた
へて
言
い
ひ
給
たま
ふ『かのガリラヤ
人
びと
は
斯
かゝ
ることに
遭󠄃
あ
ひたる
故
ゆゑ
に、
凡
すべ
てのガリラヤ
人
びと
に
勝󠄃
まさ
れる
罪人
つみびと
なりしと
思
おも
ふか。
3
われ
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
然
しか
らず、
汝
なんぢ
らも
悔改
くいあらた
めずば、
皆
みな
おなじく
亡
ほろ
ぶべし。
4
又󠄂
また
シロアムの
櫓
やぐら
たふれて、
壓
お
し
殺
ころ
されし
十
じふ
八人
はちにん
は、エルサレムに
住󠄃
す
める
凡
すべ
ての
人
ひと
に
勝󠄃
まさ
りて
罪
つみ
の
負󠄅債
おひめ
ある
者
もの
なりしと
思
おも
ふか。
5
われ
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
然
しか
らず、
汝
なんぢ
らも
悔改
くいあらた
めずば、みな
斯
かく
のごとく
亡
ほろ
ぶべし』
〘107㌻〙
6
又󠄂
また
この
譬
たとへ
を
語
かた
りたまふ『
或
ある
人
ひと
おのが
葡萄園
ぶだうぞの
に
植
う
ゑありし
無花果
いちぢく
の
樹
き
に
來
きた
りて
果
み
を
求
もと
むれども
得
え
ずして、
7
園丁
そのつくり
に
言
い
ふ「
視
み
よ、われ
三年
さんねん
きたりて
此
こ
の
無花果
いちぢく
の
樹
き
に
果
み
を
求
もと
むれども
得
え
ず。これを
伐
き
り
倒
たふ
せ、
何
なん
ぞ
徒
いたづ
らに
地
ち
を
塞
ふさ
ぐか」
8
答
こた
へて
言
い
ふ「
主
しゅ
よ、
今年
ことし
も
容
ゆる
したまへ、
我
われ
その
周󠄃圍
まはり
を
掘
ほ
りて
肥料
こやし
せん。
9
その
後
のち
、
果
み
を
結
むす
ばば
善
よ
し、もし
結
むす
ばずば
伐
き
り
倒
たふ
したまへ」』
146㌻
10
イエス
安息
あんそく
日
にち
に
或
あ
る
會堂
くわいだう
にて
敎
をしへ
えたまふ
時
とき
、
11
視
み
よ、
十
じふ
八
はち
年
ねん
のあひだ、
病
やまひ
の
靈
れい
に
憑
つ
かれたる
女
をんな
あり、
屈
かゞ
まりて
少
すこ
しも
伸
の
ぶること
能
あた
はず。
12
イエスこの
女
をんな
を
見
み
、
呼
よ
び
寄
よ
せて『
女
をんな
よ、なんぢは
病
やまひ
より
解
と
かれたり』と
言
い
ひ、
13
之
これ
に
手
て
を
按
お
きたまへば、
立刻
たちどころ
に
身
み
を
直
す
ぐにして
神
かみ
を
崇
あが
めたり。
14
會堂
くわいだう
司
つかさ
イエスの
安息
あんそく
日
にち
に
病
やまひ
を
醫
いや
し
給
たま
ひしことを
憤
いきど
ほり、
答
こた
へて
群衆
ぐんじゅう
に
言
い
ふ『
働
はたら
くべき
日
ひ
は
六日
むゆか
あり、その
間
あひだ
に
來
きた
りて
醫
いや
されよ。
安息
あんそく
日
にち
には
爲
せ
ざれ』
15
主
しゅ
こたへて
言
い
ひたまふ『
僞善者
ぎぜんしゃ
らよ、
汝
なんぢ
等
ら
おのおの
安息
あんそく
日
にち
には、
己
おの
が
牛
うし
または
驢馬
ろば
を
小屋
こや
より
解
と
きいだし、
水
みづ
飼
か
はんとて
牽
ひ
き
徃
ゆ
かぬか。
16
さらば
長
なが
き
十
じふ
八
はち
年
ねん
の
間
あひだ
サタンに
縛
しば
られたるアブラハムの
娘
むすめ
なる
此
こ
の
女
をんな
は、
安息
あんそく
日
にち
にその
繋
つなぎ
より
解
と
かるべきならずや』
17
イエス
此
これ
等
ら
のことを
言
い
ひ
給
たま
へば、
逆󠄃
さから
ふ
者
もの
はみな
恥
は
ぢ、
群衆
ぐんじゅう
は
擧
こぞ
りてその
爲
な
し
給
たま
へる
榮光
えいくわう
ある
凡
すべ
ての
業
わざ
を
喜
よろこ
べり。
18
斯
かく
てイエス
言
い
ひたまふ『
神
かみ
の
國
くに
は
何
なに
に
似
に
たるか、
我
われ
これを
何
なに
に
擬
なずら
へん、
19
一粒
ひとつぶ
の
芥種
からしだね
のごとし。
人
ひと
これを
取
と
りて
己
おのれ
の
園
その
に
播
ま
きたれば、
育
そだ
ちて
樹
き
となり、
空󠄃
そら
の
鳥
とり
その
枝
えだ
に
宿
やど
れり』
20
また
言
い
ひたまふ『
神
かみ
の
國
くに
を
何
なに
に
擬
なずら
へんか、
21
パン
種
だね
のごとし。
女
をんな
これを
取
と
りて、
三
さん
斗
と
の
粉
こ
の
中
なか
に
入
い
るれば、ことごとく
脹
ふく
れいだすなり』
22
イエス
敎
をし
へつつ
町々
まちまち
村々
むらむら
を
過󠄃
す
ぎて、エルサレムに
旅
たび
し
給
たま
ふとき、
23
或
ある
人
ひと
いふ『
主
しゅ
よ、
救
すく
はるる
者
もの
は
少
すくな
きか』
24
イエス
人々
ひとびと
に
言
い
ひたまふ『
力
ちから
を
盡
つく
して
狹
せま
き
門
もん
より
入
い
れ。
我
われ
なんぢらに
吿
つ
ぐ、
入
い
らん
事
こと
を
求
もと
めて
入
い
り
能
あた
はぬ
者
もの
おほからん。
25
家主
いへあるじ
おきて
門
もん
を
閉
と
ぢたる
後
のち
、なんぢら
外
そと
に
立
た
ちて「
主
しゅ
よ
我
われ
らに
開
ひら
き
給
たま
へ」と
言
い
ひつつ
門
もん
を
叩
たゝ
き
始
はじ
めんに、
主人
あるじ
こたへて「われ
汝
なんぢ
らが
何處
いづこ
の
者
もの
なるかを
知
し
らず」と
言
い
はん。
26
その
時
とき
「われらは
御前󠄃
みまへ
にて
飮食󠄃
のみくひ
し、なんぢは
我
われ
らの
町
まち
の
大路
おほじ
にて
敎
をし
へ
給
たま
へり」と
言
い
ひ
出
い
でんに、
147㌻
27
主人
あるじ
こたへて「われ
汝
なんぢ
らが
何處
いづこ
の
者
もの
なるかを
知
し
らず、
惡
あく
をなす
者
もの
どもよ、
皆
みな
われを
離
はな
れ
去
さ
れ」と
言
い
はん。
28
汝
なんぢ
らアブラハム、イサク、ヤコブ
及
およ
び
凡
すべ
ての
預言者
よげんしゃ
の、
神
かみ
の
國
くに
に
居
を
り、
己
おのれ
らの
逐󠄃
お
ひ
出
いだ
さるるを
見
み
ば、
其處
そこ
にて
哀哭
なげき
・
切齒
はがみ
する
事
こと
あらん。
〘108㌻〙
29
また
人々
ひとびと
、
東
ひがし
より
西
にし
より
南
みなみ
より
北
きた
より
來
きた
りて、
神
かみ
の
國
くに
の
宴
えん
に
就
つ
くべし。
30
視
み
よ、
後
あと
なる
者
もの
の
先
さき
になり、
先
さき
なる
者
もの
の
後
あと
になる
事
こと
あらん』
31
そのとき
或
あ
るパリサイ
人
びと
ら、イエスに
來
きた
りて
言
い
ふ『いでて
此處
ここ
を
去
さ
り
給
たま
へ、ヘロデ
汝
なんぢ
を
殺
ころ
さんとす』
32
答
こた
へて
言
い
ひ
給
たま
ふ『
徃
ゆ
きてかの
狐
きつね
に
言
い
へ。
視
み
よ、われ
今日
けふ
明日
あす
、
惡鬼
あくき
を
逐󠄃
お
ひ
出
いだ
し、
病
やまひ
を
醫
いや
し、
而
しか
して
三日
みっか
めに
全󠄃
まった
うせられん。
33
されど
今日
けふ
も
明日
あす
も
次
つぎ
の
日
ひ
も
我
われ
は
進󠄃
すゝ
み
徃
ゆ
くべし。それ
預言者
よげんしゃ
のエルサレムの
外
ほか
にて
死
し
ぬることは
有
あ
るまじきなり。
34
噫
あゝ
エルサレム、エルサレム、
預言者
よげんしゃ
たちを
殺
ころ
し、
遣󠄃
つかは
されたる
人々
ひとびと
を
石
いし
にて
擊
う
つ
者
もの
よ、
牝鷄
めんどり
の
己
おの
が
雛
ひな
を
翼
つばさ
のうちに
集
あつ
むるごとく、
我
われ
なんぢの
子
こ
どもを
集
あつ
めんとせしこと
幾度
いくたび
ぞや。
然
さ
れど
汝
なんぢ
らは
好
この
まざりき。
35
視
み
よ、
汝
なんぢ
らの
家
いへ
は
棄
す
てられて
汝
なんぢ
らに
遺󠄃
のこ
らん。
我
われ
なんぢらに
吿
つ
ぐ、「
讃
ほ
むべきかな、
主
しゅ
の
名
な
によりて
來
きた
る
者
もの
」と、
汝
なんぢ
らの
言
い
ふ
時
とき
の
至
いた
るまでは、
我
われ
を
見
み
ざるべし』
第14章
1
イエス
安息
あんそく
日
にち
に
食󠄃事
しょくじ
せんとて、
或
あ
るパリサイ
人
びと
の
頭
かしら
の
家
いへ
に
入
い
り
給
たま
へば、
人々
ひとびと
これを
窺
うかゞ
ふ。
2
視
み
よ、
御前󠄃
みまへ
に
水腫
すゐき
をわづらふ
人
ひと
ゐたれば、
3
イエス
答
こた
へて
敎法師
けうほふし
とパリサイ
人
びと
とに
言
い
ひたまふ『
安息
あんそく
日
にち
に
人
ひと
を
醫
いや
すことは
善
よ
しや
否
いな
や』
4
かれら
默然
もくねん
たり。イエスその
人
ひと
を
執
と
り、
醫
いや
して
去
さ
らしめ、
5
且
かつ
かれらに
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢらの
中
うち
その《[*]》
子
こ
あるひは
其
そ
の
牛
うし
、
井
ゐど
に
陷
おちい
らんに、
安息
あんそく
日
にち
には
直
たゞ
ちに
之
これ
を
引揚
ひきあ
げぬ
者
もの
あるか』[*異本「驢馬」とあり。]
6
彼
かれ
等
ら
これに
對
たい
して
物
もの
言
い
ふこと
能
あた
はず。
148㌻
7
イエス
招
まね
かれたる
者
もの
の、
上席
じゃうせき
をえらぶを
見
み
、
譬
たとへ
をかたりて
言
い
ひ
給
たま
ふ、
8
『なんぢ
婚筵
こんえん
に
招
まね
かるるとき、
上席
じゃうせき
に
著
つ
くな。
恐
おそ
らくは
汝
なんぢ
よりも
貴
たふと
き
人
ひと
の
招
まね
かれんに、
9
汝
なんぢ
と
彼
かれ
とを
招
まね
きたる
者
もの
きたりて「この
人
ひと
に
席
せき
を
讓
ゆづ
れ」と
言
い
はん。さらば
其
そ
の
時
とき
なんぢ
恥
は
ぢて
末席
ばっせき
に
徃
ゆ
きはじめん。
10
招
まね
かるるとき、
寧
むし
ろ
徃
ゆ
きて
末席
ばっせき
に
著
つ
け、さらば
招
まね
きたる
者
もの
きたりて「
友
とも
よ、
上
かみ
に
進󠄃
すゝ
め」と
言
い
はん。その
時
とき
なんぢ
同席
どうせき
の
者
もの
の
前󠄃
まへ
に
譽
ほまれ
あるべし。
11
凡
おほよ
そおのれを
高
たか
うする
者
もの
は
卑
ひく
うせられ、
己
おのれ
を
卑
ひく
うする
者
もの
は
高
たか
うせらるるなり』
12
また
己
おのれ
を
招
まね
きたる
者
もの
にも
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢ
晝餐󠄃
ひるげ
または
夕餐󠄃
ゆふげ
を
設
まう
くるとき、
朋友
ほういう
・
兄弟
きゃうだい
・
親族
しんぞく
・
富
と
める
隣
となり
人
ひと
などをよぶな。
恐
おそ
らくは
彼
かれ
らも
亦
また
なんぢを
招
まね
きて
報
むくい
をなさん。
13
饗宴
ふるまひ
を
設
まう
くる
時
とき
は、
寧
むし
ろ
貧󠄃
まづ
しき
者
もの
・
不具󠄄
かたは
・
跛者
あしなへ
・
盲人
めしひ
などを
招
まね
け。
〘109㌻〙
14
彼
かれ
らは
報
むく
ゆること
能
あた
はぬ
故
ゆゑ
に、なんぢ
幸福
さいはひ
なるべし。
正
たゞ
しき
者
もの
の
復活
よみがへり
の
時
とき
に
報
むく
いらるるなり』
15
同席
どうせき
の
者
もの
の
一人
ひとり
これらの
事
こと
を
聞
き
きてイエスに
言
い
ふ『おほよそ
神
かみ
の
國
くに
にて
食󠄃事
しょくじ
する
者
もの
は
幸福
さいはひ
なり』
16
之
これ
に
言
い
ひたまふ『
或
ある
人
ひと
、
盛
さかん
なる
夕餐󠄃
ゆふげ
を
設
まう
けて、
多
おほ
くの
人
ひと
を
招
まね
く。
17
夕餐󠄃
ゆふげ
の
時
とき
いたりて、
招
まね
きおきたる
者
もの
の
許
もと
に
僕
しもべ
を
遣󠄃
つかは
して「
來
きた
れ、
旣
すで
に
備
そなは
りたり」と
言
い
はしめたるに、
18
皆
みな
ひとしく
辭
ことわ
りはじむ。
初
はじめ
の
者
もの
いふ「われ
田地
でんち
を
買
か
へり。
徃
ゆ
きて
見
み
ざるを
得
え
ず。
請󠄃
こ
ふ、
許
ゆる
されんことを」
19
他
ほか
の
者
もの
いふ「われ
五
いつ
耜
くびき
の
牛
うし
を
買
か
へり、
之
これ
を
驗
ため
すために
徃
ゆ
くなり。
請󠄃
こ
ふ、
許
ゆる
されんことを」
20
また
他
ほか
も
者
もの
いふ「われ
妻
つま
を
娶
めと
れり、
此
こ
の
故
ゆゑ
に
徃
ゆ
くこと
能
あた
はず」
21
僕
しもべ
かへりて
此
これ
等
ら
の
事
こと
をその
主人
しゅじん
に
吿
つ
ぐ、
家主
いへあるじ
いかりて
僕
しもべ
に
言
い
ふ「とく
町
まち
の
大路
おほじ
と
小路
こうぢ
とに
徃
ゆ
きて、
貧󠄃
まづ
しき
者
もの
・
不具󠄄
かたは
者
もの
・
盲人
めしひ
・
跛者
あしなへ
などを
此處
ここ
に
連
つ
れきたれ」
149㌻
22
僕
しもべ
いふ「
主
しゅ
よ、
仰
おほせ
のごとく
爲
な
したれど、
尙
な
ほ
餘
あまり
の
席
せき
あり」
23
主人
しゅじん
、
僕
しもべ
に
言
い
ふ「
道󠄃
みち
や
籬
まがき
の
邊
ほとり
にゆき、
人々
ひとびと
を
强
し
ひて
連
つ
れきたり、
我
わ
が
家
いへ
に
充
み
たしめよ。
24
われ
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、かの
招
まね
きおきたる
者
もの
のうち、
一人
ひとり
だに
我
わ
が
夕餐󠄃
ゆふげ
を
味
あぢは
ひ
得
う
る
者
もの
なし」』
25
さて
大
おほい
なる
群衆
ぐんじゅう
イエスに
伴󠄃
ともな
ひゆきたれば、
顧󠄃
かへり
みて
之
これ
に
言
い
ひたまふ、
26
『
人
ひと
もし
我
われ
に
來
きた
りて、その
父󠄃
ちち
母
はは
・
妻
つま
子
こ
・
兄弟
きゃうだい
・
姉妹
しまい
・
己
おの
が
生命
いのち
までも
憎
にく
まずば、
我
わ
が
弟子
でし
となるを
得
え
ず。
27
また
己
おの
が
十字架
じふじか
を
負󠄅
お
ひて
我
われ
に
從
したが
ふ
者
もの
ならでは、
我
わ
が
弟子
でし
と
爲
な
るを
得
え
ず。
28
汝
なんぢ
らの
中
うち
たれか
櫓
やぐら
を
築
きづ
かんと
思
おも
はば、
先
ま
づ
坐
ざ
して
其
そ
の
費
つひえ
をかぞへ、
己
おの
が
所󠄃有
もちもの
、
竣工
しゅんこう
までに
足
た
るか
否
いな
かを
計
はか
らざらんや。
29
然
しか
らずして
基
もとゐ
を
据
す
ゑ、もし
成就
じゃうじゅ
すること
能
あた
はずば、
見
み
る
者
もの
みな
嘲笑
あざわら
ひて、
30
「この
人
ひと
は
築
きづ
きかけて
成就
じゃうじゅ
すること
能
あた
はざりき」と
言
い
はん。
31
又󠄂
また
いづれの
王
わう
か
出
い
でて
他
ほか
の
王
わう
と
戰爭
たゝかひ
をせんに、
先
ま
づ
坐
ざ
して、
此
こ
の
一萬
いちまん
人
にん
をもて、かの
二萬
にまん
人
にん
を
率󠄃
ひき
ゐきたる
者
もの
に
對
むか
ひ
得
う
るか
否
いな
か
籌
はか
らざらんや。
32
もし
及
し
かずば、
敵
てき
なほ
遠󠄄
とほ
く
隔
へだて
るうちに
使
つかひ
を
遣󠄃
つかは
して
和睦
わぼく
を
請󠄃
こ
ふべし。
33
斯
かく
のごとく
汝
なんぢ
らの
中
うち
その
一切
すべて
の
所󠄃有
もちもの
を
退󠄃
しりぞ
くる
者
もの
ならでは、
我
わ
が
弟子
でし
となるを
得
え
ず。
34
鹽
しほ
は
善
よ
きものなり、
然
さ
れど
鹽
しほ
もし
效力
かうりょく
を
失
うしな
はば、
何
なに
によりてか
味
あぢ
つけられん。
35
土
つち
にも
肥料
こえ
にも
適󠄄
てき
せず、
外
そと
に
棄
す
てらるるなり。
聽
き
く
耳
みみ
ある
者
もの
は
聽
き
くべし』
〘110㌻〙
第15章
1
取税人
しゅぜいにん
・
罪人
つみびと
等
ども
みな
御言
みことば
を
聽
き
かんとて
近󠄃寄
ちかよ
りたれば、
2
パリサイ
人
びと
・
學者
がくしゃ
ら
呟
つぶや
きて
言
い
ふ、『この
人
ひと
は
罪人
つみびと
を
迎󠄃
むか
へて
食󠄃
しょく
を
共
とも
にす』
150㌻
3
イエス
之
これ
に
譬
たとへ
を
語
かた
りて
言
い
ひ
給
たま
ふ、
4
『なんぢらの
中
うち
たれか
百匹
ひゃくひき
の
羊
ひつじ
を
有
も
たんに、
若
もし
その
一匹
いっぴき
を
失
うしな
はば、
九
く
十
じふ
九
く
匹
ひき
を
野
の
におき、
徃
ゆ
きて
失
う
せたる
者
もの
を
見
み
出
いだ
すまでは
尋󠄃
たづ
ねざらんや。
5
遂󠄅
つひ
に
見出
みいだ
さば、
喜
よろこ
びて
之
これ
を
己
おの
が
肩
かた
にかけ、
6
家
いへ
に
歸
かへ
りて
其
そ
の
友
とも
と
隣
となり
人
ひと
とを
呼
よ
び
集
あつ
めて
言
い
はん「
我
われ
とともに
喜
よろこ
べ、
失
う
せたる
我
わ
が
羊
ひつじ
を
見出
みいだ
せり」
7
われ
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
斯
かく
のごとく
悔改
くいあらた
むる
一人
ひとり
の
罪人
つみびと
のためには、
悔改
くいあらため
の
必要󠄃
ひつえう
なき
九
く
十
じふ
九
く
人
にん
の
正
たゞ
しき
者
もの
にも
勝󠄃
まさ
りて、
天
てん
に
歡喜
よろこび
あるべし。
8
又󠄂
また
いづれの
女
をんな
か
銀貨
ぎんくわ
十
じふ
枚
まい
を
有
も
たんに、
若
も
しその
一
いち
枚
まい
を
失
うしな
はば、
燈火
ともしび
をともし、
家
いへ
を
掃
は
きて
見
み
出
いだ
すまでは
懇
ねんご
ろに
尋󠄃
たづ
ねざらんや。
9
遂󠄅
つひ
に
見出
みいだ
さば、
其
そ
の
友
とも
と
隣
となり
人
ひと
とを
呼
よ
び
集
あつ
めて
言
い
はん、「
我
われ
とともに
喜
よろこ
べ、わが
失
うしな
ひたる
銀貨
ぎんくわ
を
見出
みいだ
せり」
10
われ
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
斯
かく
のごとく
悔改
くいあらた
むる
一人
ひとり
の
罪人
つみびと
のために、
神
かみ
の
使
つかひ
たちの
前󠄃
まへ
に
歡喜
よろこび
あるべし』
11
また
言
い
ひたまふ『
或
ある
人
ひと
に
二人
ふたり
の
息子
むすこ
あり、
12
おとうと
父󠄃
ちち
に
言
い
ふ「
父󠄃
ちち
よ、
財產
ざいさん
のうち
我
わ
が
受
う
くべき
分󠄃
ぶん
を
我
われ
にあたへよ」
父󠄃
ちち
その
身代
しんだい
を
二人
ふたり
に
分󠄃
わ
けあたふ。
13
幾日
いくひ
も
經
へ
ぬに、
弟
おとうと
おのが
物
もの
をことごとく
集
あつ
めて、
遠󠄄國
ゑんごく
にゆき、
其處
そこ
にて
放蕩
はうたう
にその
財產
ざいさん
を
散
ちら
せり。
14
ことごとく
費
つひや
したる
後
のち
、その
國
くに
に
大
おほい
なる
饑饉
ききん
おこり、
自
みづか
ら
乏
とぼ
しくなり
始
はじ
めたれば、
15
徃
ゆ
きて
其
そ
の
地
ち
の
或
ある
人
ひと
に
依附
よりすが
りしに、
其
そ
の
人
ひと
かれを
畑
はた
に
遣󠄃
つかは
して
豚
ぶた
を
飼
か
はしむ。
16
かれ
豚
ぶた
の
食󠄃
くら
ふ
蝗
いなご
豆
まめ
にて、
己
おの
が
腹
はら
を
充
みた
さんと
思
おも
ふ
程
ほど
なれど
何
なに
をも
與
あた
ふる
人
ひと
なかりき。
17
此
こ
のとき
我
われ
に
反
かへ
りて
言
い
ふ『わが
父󠄃
ちち
の
許
もと
には
食󠄃物
しょくもつ
あまれる
雇人
やとひびと
いくばくぞや、
然
しか
るに
我
われ
は
飢󠄄
う
ゑてこの
處
ところ
に
死
し
なんとす。
18
起󠄃
た
ちて
我
わ
が
父󠄃
ちち
にゆき「
父󠄃
ちち
よ、われは
天
てん
に
對
たい
し、また
汝
なんぢ
の
前󠄃
まへ
に
罪
つみ
を
犯
をか
したり。
19
今
いま
より
汝
なんぢ
の
子
こ
と
稱
とな
へらるるに
相應
ふさは
しからず、
雇人
やとひびと
の
一人
ひとり
のごとく
爲
な
し
給
たま
へ』と
言
い
はん」
151㌻
20
乃
すなは
ち
起󠄃
た
ちて
其
そ
の
父󠄃
ちち
のもとに
徃
ゆ
く。なほ
遠󠄄
とほ
く
隔
へだて
りたるに、
父󠄃
ちち
これを
見
み
て
憫
あはれ
み、
走
はし
りゆき、
其
そ
の
頸
くび
を
抱
いだ
きて
接吻
くちつけ
せり。
21
子
こ
、
父󠄃
ちち
にいふ「
父󠄃
ちち
よ、
我
われ
は
天
てん
に
對
たい
し
又󠄂
また
なんぢの
前󠄃
まへ
に
罪
つみ
を
犯
をか
したり。
今
いま
より
汝
なんぢ
の
子
こ
と
稱
とな
へらるるに
相應
ふさは
しからず」
22
然
さ
れど
父󠄃
ちち
、
僕
しもべ
どもに
言
い
ふ「とくとく
最上
さいじゃう
の
衣
ころも
を
持
も
ち
來
きた
りて
之
これ
に
著
き
せ、その
手
て
に
指輪
ゆびわ
をはめ、
其
そ
の
足
あし
に
鞋
くつ
をはかせよ。
23
また
肥
こ
えたる
犢
こうし
を
牽
ひ
ききたりて
屠
ほふ
れ、
我
われ
ら
食󠄃
しょく
して
樂
たの
しまん。
〘111㌻〙
24
この
我
わ
が
子
こ
、
死
し
にて
復
また
生
い
き、
失
う
せて
復
また
得
え
られたり」
斯
かく
て、かれら
樂
たの
しみ
始
はじ
む。
25
然
しか
るに
其
そ
の
兄
あに
、
畑
はた
にありしが、
歸
かへ
りて
家
いへ
に
近󠄃
ちか
づきたるとき、
音󠄃樂
なりもの
と
舞踏
をどり
との
音󠄃
おと
を
聞
き
き、
26
僕
しもべ
の
一人
ひとり
を
呼
よ
びてその
何事
なにごと
なるかを
問
と
ふ。
27
答
こた
へて
言
い
ふ「なんぢの
兄弟
きゃうだい
、
歸
かへ
りたり、その
恙
つゝが
なきを
迎󠄃
むか
へたれば、
汝
なんぢ
の
父󠄃
ちち
、
肥
こ
えたる
犢
こうし
を
屠
ほふ
れるなり」
28
兄
あに
、
怒
いか
りて
內
うち
に
入
い
ることを
好
この
まざりしかば、
父󠄃
ちち
いでて
勸
すゝ
めしに、
29
答
こた
へて
父󠄃
ちち
に
言
い
ふ「
視
み
よ、
我
われ
は
幾歳
いくとせ
も、なんぢに
仕
つか
へて、
未
いま
だ
汝
なんぢ
の
命令
めいれい
に
背
そむ
きし
事
こと
なきに、
我
われ
には
小
こ
山羊
やぎ
一匹
いっぴき
だに
與
あた
へて
友
とも
と
樂
たの
しましめし
事
こと
なし。
30
然
しか
るに
遊󠄃女
あそびめ
らと
共
とも
に、
汝
なんぢ
の
身代
しんだい
を
食󠄃
くら
ひ
盡
つく
したる
此
こ
の
汝
なんぢ
の
子
こ
、
歸
かへ
り
來
きた
れば、
之
これ
がために
肥
こ
えたる
犢
こうし
を
屠
ほふ
れり」
31
父󠄃
ちち
いふ「
子
こ
よ、なんぢは
常
つね
に
我
われ
とともに
在
あ
り、わが
物
もの
は
皆
みな
なんぢの
物
もの
なり。
32
然
さ
れど
此
こ
の
汝
なんぢ
の
兄弟
きゃうだい
は
死
し
にて
復
また
生
い
き、
失
う
せて
復
また
得
え
られたれば、
我
われ
らの
樂
たの
しみ
喜
よろこ
ぶは
當然
たうぜん
なり」』
第16章
1
イエスまた
弟子
でし
たちに
言
い
ひ
給
たま
ふ『
或
ある
富
と
める
人
ひと
に
一人
ひとり
の
支配人
しはいにん
あり、
主人
しゅじん
の
所󠄃有
もちもの
を
費
つひや
しをりと
訴
うった
へられたれば、
2
主人
しゅじん
かれを
呼
よ
びて
言
い
ふ「わが
汝
なんぢ
につきて
聞
き
く
所󠄃
ところ
は、これ
何事
なにごと
ぞ、
務
つとめ
の
報吿
はうこく
をいだせ、
汝
なんぢ
こののち
支配人
しはいにん
たるを
得
え
じ」
3
支配人
しはいにん
、
心
こゝろ
のうちに
言
い
ふ「
如何
いかに
せん、
主人
しゅじん
わが
職
つとめ
を
奪
うば
ふ。われ
土
つち
掘
ほ
るには
力
ちから
なく、
物
もの
乞
こ
ふは
恥
はづ
かし。
152㌻
4
我
われ
なすべき
事
こと
こそ
知
し
りたれ、
斯
か
く
爲
せ
ば
職
つとめ
を
罷
や
めらるるとき、
人々
ひとびと
その
家
いへ
に
我
われ
を
迎󠄃
むか
ふるならん」とて、
5
主人
しゅじん
の
負󠄅債者
ふさいしゃ
を
一人
ひとり
一人
ひとり
呼
よ
びよせて、
初
はじめ
の
者
もの
に
言
い
ふ「なんぢ
我
わ
が
主人
しゅじん
より
負󠄅
お
ふところ
何
なに
程
ほど
あるか」
6
答
こた
へて
言
い
ふ「
油
あぶら
、
百
ひゃく
樽
たる
」
支配人
しはいにん
いふ「なんぢの
證書
しょうしょ
をとり、
早
はや
く
坐
ざ
して
五
ご
十
じふ
と
書
か
け」
7
又󠄂
また
ほかの
者
もの
に
言
い
ふ「
負󠄅
お
ふところ
何
なに
程
ほど
あるか」
答
こた
へて
言
い
ふ「
麥
むぎ
、
百
ひゃく
石
こく
」
支配人
しはいにん
いふ「なんぢの
證書
しょうしょ
をとりて
八
はち
十
じふ
と
書
か
け」
8
爰
こゝ
に
主人
しゅじん
、
不義
ふぎ
なる
支配人
しはいにん
の
爲
な
しし
事
こと
の
巧
たくみ
なるによりて、
彼
かれ
を
譽
ほ
めたり。この
世
よ
の
子
こ
らは、
己
おの
が
時代
じだい
の
事
こと
には、
光
ひかり
の
子
こ
らよりも
巧
たくみ
なり。
9
われ
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
不義
ふぎ
の
富
とみ
をもて、
己
おの
がために
友
とも
をつくれ。さらば
富
とみ
の
失
う
する
時
とき
、その
友
とも
なんぢらを
永遠󠄄
とこしへ
の
住󠄃居
すまひ
に
迎󠄃
むか
へん。
10
小事
せうじ
に
忠
ちゅう
なる
者
もの
は
大事
だいじ
にも
忠
ちゅう
なり。
小事
せうじ
に
不
ふ
忠
ちゅう
なる
者
もの
は
大事
だいじ
にも
不
ふ
忠
ちゅう
なり。
11
然
さ
らば
汝
なんぢ
等
ら
もし
不義
ふぎ
の
富
とみ
に
忠
ちゅう
ならずば、
誰
たれ
か
眞
まこと
の
富
とみ
を
汝
なんぢ
らに
任
まか
すべき。
12
また
汝
なんぢ
等
ら
もし
人
ひと
のものに
忠
ちゅう
ならずば、
誰
たれ
か
汝
なんぢ
等
ら
のものを
汝
なんぢ
らに
與
あた
ふべき。
13
僕
しもべ
は
二人
ふたり
の
主
しゅ
に
兼󠄄
かね
事
つか
ふること
能
あた
はず、
或
あるひ
は
之
これ
を
憎
にく
み
彼
かれ
を
愛
あい
し、
或
あるひ
は
之
これ
に
親
した
しみ
彼
かれ
を
輕
かろ
しむべければなり。
汝
なんぢ
ら
神
かみ
と
富
とみ
とに
兼󠄄
かね
事
つか
ふること
能
あた
はず』
〘112㌻〙
14
爰
こゝ
に
慾
よく
深
ふか
きパリサイ
人
びと
等
ら
この
凡
すべ
ての
事
こと
を
聞
き
きてイエスを
嘲笑
あざわら
ふ。
15
イエス
彼
かれ
らに
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢらは
人
ひと
のまへに
己
おのれ
を
義
ぎ
とする
者
もの
なり。
然
さ
れど
神
かみ
は
汝
なんぢ
らの
心
こゝろ
を
知
し
りたまふ。
人
ひと
のなかに
尊󠄅
たふと
ばるる
者
もの
は、
神
かみ
のまへに
憎
にく
まるる
者
もの
なり。
16
律法
おきて
と
預言者
よげんしゃ
とは、ヨハネまでなり、その
時
とき
より
神
かみ
の
國
くに
は
宣傳
のべつた
へられ、
人
ひと
みな
烈
はげ
しく
攻
せ
めて
之
これ
に
入
い
る。
17
されど
律法
おきて
の
一畫
いっかく
の
落
お
つるよりも
天
てん
地
ち
の
過󠄃
す
ぎ
徃
ゆ
くは
易
やす
し。
18
凡
すべ
てその
妻
つま
を
出
いだ
して、
他
ほか
に
娶
めと
る
者
もの
は、
姦淫
かんいん
を
行
おこな
ふなり。また
夫
をっと
より
出
いだ
されたる
女
をんな
を
娶
めと
る
者
もの
も
姦淫
かんいん
を
行
おこな
ふなり。
153㌻
19
或
あ
る
富
と
める
人
ひと
あり、
紫色
むらさき
の
衣
ころも
と
細布
ほそぬの
とを
著
き
て、
日々
ひび
奢
おご
り
樂
たの
しめり。
20
又󠄂
また
ラザロといふ
貧󠄃
まづ
しき
者
もの
あり、
腫物
しゅもつ
にて
腫
は
れただれ、
富
と
める
人
ひと
の
門
もん
に
置
お
かれ、
21
その
食󠄃卓
しょくたく
より
落
お
つる
物
もの
にて
飽󠄄
あ
かんと
思
おも
ふ。
而
しか
して
犬
いぬ
ども
來
きた
りて
其
そ
の
腫物
しゅもつ
を
舐
ねぶ
れり。
22
遂󠄅
つひ
にこの
貧󠄃
まづ
しきもの
死
し
に、
御使
みつかひ
たちに
携
たづさ
へられてアブラハムの
懷裏
ふところ
に
入
い
れり。
富
と
める
人
ひと
もまた
死
し
にて
葬
はうむ
られしが、
23
黄泉
よみ
にて
苦惱
くるしみ
の
中
うち
より
目
め
を
擧
あ
げて
遙
はるか
にアブラハムと
其
そ
の
懷裏
ふところ
にをるラザロとを
見
み
る。
24
乃
すなは
ち
呼
よ
びて
言
い
ふ「
父󠄃
ちち
アブラハムよ、
我
われ
を
憐
あはれ
みて、ラザロを
遣󠄃
つかは
し、その
指
ゆび
の
先
さき
を
水
みづ
に
浸
ひた
して
我
わ
が
舌
した
を
冷
ひや
させ
給
たま
へ、
我
われ
はこの
焰
ほのほ
のなかに
悶
もだ
ゆるなり」
25
アブラハム
言
い
ふ「
子
こ
よ、
憶
おも
へ、なんぢは
生
い
ける
間
あひだ
、なんぢの
善
よ
き
物
もの
を
受
う
け、ラザロは
惡
あ
しき
物
もの
を
受
う
けたり。
今
いま
ここにて
彼
かれ
は
慰
なぐさ
められ、
汝
なんぢ
は
悶
もだ
ゆるなり。
26
然
しか
のみならず
此處
ここ
より
汝
なんぢ
らに
渡
わた
り
徃
ゆ
かんとすとも
得
え
ず、
其處
そこ
より
我
われ
らに
來
きた
り
得
え
ぬために、
我
われ
らと
汝
なんぢ
らとの
間
あひだ
に
大
おほい
なる
淵
ふち
定
さだ
めおかれたり」
27
富
と
める
人
ひと
また
言
い
ふ「さらば
父󠄃
ちち
よ、
願
ねがは
くは
我
わ
が
父󠄃
ちち
の
家
いへ
にラザロを
遣󠄃
つかは
したまへ。
28
我
われ
に
五
ご
人
にん
の
兄弟
きゃうだい
あり、この
苦痛
くるしみ
のところに
來
きた
らぬやう、
彼
かれ
らに
證
あかし
せしめ
給
たま
へ」
29
アブラハム
言
い
ふ「
彼
かれ
らにはモーセと
預言者
よげんしゃ
とあり、
之
これ
に
聽
き
くべし」
30
富
と
める
人
ひと
いふ「いな
父󠄃
ちち
アブラハムよ、もし
死人
しにん
の
中
うち
より
彼
かれ
らに
徃
ゆ
く
者
もの
あらば、
悔改
くいあらた
めん」
31
アブラハム
言
い
ふ「もしモーセと
預言者
よげんしゃ
とに
聽
き
かずば、たとひ
死人
しにん
の
中
うち
より
甦
よみが
へる
者
もの
ありとも、
其
そ
の
勸
すゝめ
を
納󠄃
い
れざるべし」』
第17章
1
イエス
弟子
でし
たちに
言
い
ひ
給
たま
ふ『
躓物
つまづき
は
必
かなら
ず
來
きた
らざるを
得
え
ず、されど
之
これ
を
來
きた
らす
者
もの
は
禍害󠄅
わざはひ
なるかな。
2
この
小
ちひさ
き
者
もの
の
一人
ひとり
を
躓
つまづ
かするよりは、
寧
むし
ろ
碾臼
ひきうす
の
石
いし
を
頸
くび
に
懸
か
けられて、
海
うみ
に
投
な
げ
入
い
れられんかた
善
よ
きなり。
154㌻
3
汝
なんぢ
等
ら
みづから
心
こゝろ
せよ。もし
汝
なんぢ
の
兄弟
きゃうだい
、
罪
つみ
を
犯
をか
さば、これを
戒
いまし
めよ。もし
悔改
くいあらた
めなば
之
これ
をゆるせ。
〘113㌻〙
4
もし
一日
いちにち
に
七度
なゝたび
なんぢに
罪
つみ
を
犯
をか
し、
七度
なゝたび
「くい
改
あらた
む」と
言
い
ひて、
汝
なんぢ
に
歸
かへ
らば
之
これ
をゆるせ』
5
使徒
しと
たち
主
しゅ
に
言
い
ふ『われらの
信仰
しんかう
を
增
ま
したまへ』
6
主
しゅ
いひ
給
たま
ふ『もし
芥種
からしだね
一粒
ひとつぶ
ほどの
信仰
しんかう
あらば、
此
こ
の《[*]》
桑
くは
の
樹
き
に「
拔
ぬ
けて、
海
うみ
に
植
うわ
れ」と
言
い
ふとも
汝
なんぢ
らに
從
したが
ふべし。[*原語「スカミノ」]
7
汝
なんぢ
等
ら
のうち
誰
たれ
か
或
あるひ
は
耕
たがや
し、
或
あるひ
は
牧
ぼく
する
僕
しもべ
を
有
も
たんに、その
僕
しもべ
、
畑
はた
より
歸
かへ
りたる
時
とき
、これに
對
むか
ひて「
直
たゞ
ちに
來
きた
り
食󠄃
しょく
に
就
つ
け」と
言
い
ふ
者
もの
あらんや。
8
反
かへ
つて「わが
夕餐󠄃
ゆふげ
の
備
そなへ
をなし、
我
わ
が
飮食󠄃
のみくひ
するあひだ、
帶
おび
して
給仕
きふじ
せよ、
然
しか
る
後
のち
に、なんぢ
飮食󠄃
のみくひ
すべし」と
言
い
ふにあらずや。
9
僕
しもべ
、
命
めい
ぜられし
事
こと
を
爲
な
したればとて、
主人
しゅじん
これに
謝
しゃ
すべきか。
10
斯
かく
のごとく
汝
なんぢ
らも
命
めい
ぜられし
事
こと
をことごとく
爲
な
したる
時
とき
「われらは
無
む
益
えき
なる
僕
しもべ
なり、
爲
な
すべき
事
こと
を
爲
な
したるのみ」と
言
い
へ』
11
イエス、エルサレムに
徃
ゆ
かんとて、サマリヤとガリラヤとの
間
あひだ
をとほり、
12
或
ある
村
むら
に
入
い
り
給
たま
ふとき、
十
じふ
人
にん
の
癩病人
らいびゃうにん
これに
遇󠄃
あ
ひて、
遙
はるか
に
立
た
ち
止
とゞ
まり、
13
聲
こゑ
を
揚
あ
げて
言
い
ふ『
君
きみ
イエスよ、
我
われ
らを
憫
あはれ
みたまへ』
14
イエス
之
これ
を
見
み
て
言
い
ひたまふ『なんぢら
徃
ゆ
きて
身
み
を
祭司
さいし
らに
見
み
せよ』
彼
かれ
ら
徃
ゆ
く
間
あひだ
に
潔󠄄
きよ
められたり。
15
その
中
うち
の
一人
ひとり
、おのが
醫
いや
されたるを
見
み
て、
大聲
おほごゑ
に
神
かみ
を
崇
あが
めつつ
歸
かへ
りきたり、
16
イエスの
足下
あしもと
に
平󠄃伏
ひれふ
して
謝
しゃ
す。これはサマリヤ
人
びと
なり。
17
イエス
答
こた
へて
言
い
ひたまふ『
十
じふ
人
にん
みな
潔󠄄
きよ
められしならずや、
九
く
人
にん
は
何處
いづこ
に
在
あ
るか。
18
この
他國人
たこくにん
のほかは、
神
かみ
に
榮光
えいくわう
を
歸
き
せんとて
歸
かへ
りきたる
者
もの
なきか』
19
斯
かく
て
之
これ
に
言
い
ひたまふ『
起󠄃
た
ちて
徃
ゆ
け、なんぢの
信仰
しんかう
なんぢを
救
すく
へり』
20
神
かみ
の
國
くに
の
何時
いつ
きたるべきかをパリサイ
人
びと
に
問
と
はれし
時
とき
、イエス
答
こた
へて
言
い
ひたまふ『
神
かみ
の
國
くに
は
見
み
ゆべき
狀
さま
にて
來
きた
らず。
155㌻
21
また「
視
み
よ、
此處
ここ
に
在
あ
り」「
彼處
かしこ
に
在
あ
り」と
人々
ひとびと
言
い
はざるべし。
視
み
よ、
神
かみ
の
國
くに
は
汝
なんぢ
らの
中
うち
に
在
あ
るなり』
22
かくて
弟子
でし
たちに
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢら
人
ひと
の
子
こ
の
日
ひ
の
一日
ひとひ
を
見
み
んと
思
おも
ふ
日
ひ
きたらん、
然
さ
れど
見
み
ることを
得
え
じ。
23
そのとき、
人々
ひとびと
なんぢらに「
見
み
よ
彼處
かしこ
に、
見
み
よ
此處
ここ
に」と
言
い
はん、
然
さ
れど
徃
ゆ
くな、
從
したが
ふな。
24
それ
電光
いなづま
の
天
てん
の
彼方
かなた
より
閃
ひらめ
きて、
天
てん
の
此方
こなた
に
輝
かゞや
くごとく、
人
ひと
の
子
こ
もその
日
ひ
には
然
しか
あるべし。
25
然
さ
れど
人
ひと
の
子
こ
は
先
ま
づ
多
おほ
くの
苦難
くるしみ
を
受
う
け、かつ
今
いま
の
代
よ
に
棄
す
てらるべきなり。
26
ノアの
日
ひ
にありし
如
ごと
く、
人
ひと
の
子
こ
の
日
ひ
にも
然
しか
あるべし。
27
ノア
方舟
はこぶね
に
入
い
る
日
ひ
までは、
人々
ひとびと
飮
の
み
食󠄃
く
ひ
娶
めと
り
嫁
とつ
ぎなど
爲
し
たりしが、
洪水
こうずゐ
きたりて
彼
かれ
等
ら
をことごとく
滅
ほろぼ
せり。
〘114㌻〙
28
ロトの
日
ひ
にも
斯
かく
のごとく、
人々
ひとびと
飮
の
み
食󠄃
く
ひ、
賣
う
り
買
か
ひ、
植
う
ゑつけ、
家
や
造󠄃
づく
りなど
爲
し
たりしが、
29
ロトのソドムを
出
い
でし
日
ひ
に、
天
てん
より
火
ひ
と
硫黄
いわう
と
降
ふ
りて、
彼
かれ
等
ら
をことごとく
滅
ほろぼ
せり。
30
人
ひと
の
子
こ
の
顯
あらは
るる
日
ひ
にも、その
如
ごと
くなるべし。
31
その
日
ひ
には
人
ひと
もし
屋
や
の
上
うへ
にをりて、
器
うつは
物
もの
、
家
いへ
の
內
うち
にあらば、
之
これ
を
取
と
らんとて
下
くだ
るな。
畑
はた
にをる
者
もの
も
同
おな
じく
歸
かへ
るな。
32
ロトの
妻
つま
を
憶
おも
へ。
33
おほよそ
己
おの
が
生命
いのち
を
全󠄃
まった
うせんとする
者
もの
は、これを
失
うしな
ひ、
失
うしな
ふ
者
もの
は、これを
保
たも
つべし。
34
われ
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、その
夜
よ
ふたりの
男
をとこ
、
一
ひと
つ
寢臺
ねだい
に
居
を
らんに、
一人
ひとり
は
取
と
られ、
一人
ひとり
は
遣󠄃
つかは
されん。
35
二人
ふたり
の
女
をんな
ともに
臼
うす
ひき
居
を
らんに、
一人
ひとり
は
取
と
られ、
一人
ひとり
は
遣󠄃
のこ
されん』
36
[なし]《[*]》[*異本「二人の男畑に居らんに、一人は取られ、一人は遺󠄃されん」との句あり。]
37
弟子
でし
たち
答
こた
へて
言
い
ふ『
主
しゅ
よ、それは
何處
いづこ
ぞ』イエス
言
い
ひたまふ『
屍體
しかばね
のある
處
ところ
には《[*]》
鷲
わし
も
亦
また
あつまらん』[*或は「兀鷹」と譯す。]
第18章
1
また
彼
かれ
らに
落膽
きおち
せずして
常
つね
に
祈
いの
るべきことを、
譬
たとへ
にて
語
かた
り
言
い
ひ
給
たま
ふ
2
『
或
ある
町
まち
に
神
かみ
を
畏
おそ
れず、
人
ひと
を
顧󠄃
かへり
みぬ
裁判󠄄人
さいばんにん
あり。
156㌻
3
その
町
まち
に
寡婦󠄃
やもめ
ありて、
屡次
しばしば
その
許
もと
にゆき「
我
わ
がために
仇
あた
を
審
さば
きたまへ」と
言
い
ふ。
4
かれ
久
ひさ
しく
聽
き
き
入
い
れざりしが、
其
そ
ののち
心
こゝろ
の
中
うち
に
言
い
ふ「われ
神
かみ
を
畏
おそ
れず、
人
ひと
を
顧󠄃
かへり
みねど、
5
此
こ
の
寡婦󠄃
やもめ
われを
煩
わづら
はせば、
我
われ
かれが
爲
ため
に
審
さば
かん、
然
しか
らずば
絕
た
えず
來
きた
りて
我
われ
を
惱
なやま
さん」と』
6
主
しゅ
いひ
給
たま
ふ『
不義
ふぎ
なる
裁判󠄄人
さいばんにん
の
言
い
ふことを
聽
き
け、
7
まして
神
かみ
は
夜晝
よるひる
よばはる
選󠄄民
せんみん
のために、
縱
たと
ひ
遲
おそ
くとも
遂󠄅
つひ
に
審
さば
き
給
たま
はざらんや。
8
我
われ
なんぢらに
吿
つ
ぐ、
速󠄃
すみや
かに
審
さば
き
給
たま
はん。
然
さ
れど
人
ひと
の
子
こ
の
來
きた
るとき
地上
ちじゃう
に
信仰
しんかう
を
見
み
んや』
9
また
己
おのれ
を
義
ぎ
と
信
しん
じ、
他人
たにん
を
輕
かろ
しむる
者
もの
どもに
此
こ
の
譬
たとへ
を
言
い
ひたまふ、
10
『
二人
ふたり
のもの
祈
いの
らんとて
宮
みや
にのぼる、
一人
ひとり
はパリサイ
人
びと
、ひとりは
取税人
しゅぜいにん
なり。
11
パリサイ
人
びと
、たちて
心
こゝろ
の
中
うち
に
斯
か
く
祈
いの
る「
神
かみ
よ、
我
われ
はほかの
人
ひと
の、
强奪
うばひ
・
不義
ふぎ
・
姦淫
かんいん
するが
如
ごと
き
者
もの
ならず、
又󠄂
また
この
取税人
しゅぜいにん
の
如
ごと
くならぬを
感謝
かんしゃ
す。
12
我
われ
は
一週󠄃
ひとまはり
のうちに
二度
ふたゝび
斷食󠄃
だんじき
し、
凡
すべ
て
得
う
るものの
十分󠄃
じふぶん
の
一
いち
を
獻
さゝ
ぐ」
13
然
しか
るに
取税人
しゅぜいにん
は
遙
はるか
に
立
た
ちて、
目
め
を
天
てん
に
向
む
くる
事
こと
だにせず、
胸
むね
を
打
う
ちて
言
い
ふ「
神
かみ
よ、
罪人
つみびと
なる
我
われ
を
憫
あはれ
みたまへ」
14
われ
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、この
人
ひと
は、かの
人
ひと
よりも
義
ぎ
とせられて、
己
おの
が
家
いへ
に
下
くだ
り
徃
ゆ
けり。おほよそ
己
おのれ
を
高
たか
うする
者
もの
は
卑
ひく
うせられ、
己
おのれ
を
卑
ひく
うする
者
もの
は
高
たか
うせらるるなり』
〘115㌻〙
15
イエスの
觸
さは
り
給
たま
はんことを
望󠄇
のぞ
みて、
人々
ひとびと
嬰兒
みどりご
らを
連
つ
れ
來
きた
りしに、
弟子
でし
たち
之
これ
を
見
み
て
禁
いまし
めたれば、
16
イエス
幼兒
をさなご
らを
呼
よ
びよせて
言
い
ひたまふ『
幼兒
をさなご
らの
我
われ
に
來
きた
るを
許
ゆる
して
止
とゞ
むな、
神
かみ
の
國
くに
は
斯
かく
のごとき
者
もの
の
國
くに
なり。
17
われ
誠
まこと
に
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、おほよそ
幼兒
をさなご
のごとくに、
神
かみ
の
國
くに
をうくる
者
もの
ならずば、
之
これ
に
入
い
ることは
能
あた
はず』
157㌻
18
或
ある
司
つかさ
、
問
と
ひて
言
い
ふ『
善
よ
き
師
し
よ、われ
何
なに
をなして
永遠󠄄
とこしへ
の
生命
いのち
を
嗣
つ
ぐべきか』
19
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『なにゆゑ
我
われ
を
善
よ
しと
言
い
ふか、
神
かみ
ひとりの
他
ほか
に
善
よ
き
者
もの
なし。
20
誡命
いましめ
は、なんぢが
知
し
る
所󠄃
ところ
なり「
姦淫
かんいん
するなかれ」「
殺
ころ
すなかれ」「
盜
ぬす
むなかれ」「
僞證
ぎしょう
を
立
た
つる
勿
なか
れ」「なんぢの
父󠄃
ちち
と
母
はは
とを
敬
うやま
へ」』
21
彼
かれ
いふ『われ
幼
おさな
き
時
とき
より
皆
みな
これを
守
まも
れり』
22
イエス
之
これ
をききて
言
い
ひたまふ『なんぢなほ
足
た
らぬこと
一
ひと
つあり、
汝
なんぢ
の
有
も
てる
物
もの
を、ことごとく
賣
う
りて
貧󠄃
まづ
しき
者
もの
に
分󠄃
わか
ち
與
あた
へよ、
然
さ
らば
財寶
たから
を
天
てん
に
得
え
ん。かつ
來
きた
りて
我
われ
に
從
したが
へ』
23
彼
かれ
は
之
これ
をききて
甚
いた
く
悲
かな
しめり、
大
おほい
に
富
と
める
者
もの
なればなり。
24
イエス
之
これ
を
見
み
て
言
い
ひたまふ『
富
と
める
者
もの
の
神
かみ
の
國
くに
に
入
い
るは
如何
いか
に
難
かた
いかな。
25
富
と
める
者
もの
の
神
かみ
の
國
くに
に
入
い
るよりは、
駱駝
らくだ
の
針
はり
の
穴󠄄
あな
をとほるは
反
かへ
つて
易
やす
し』
26
之
これ
をきく
人々
ひとびと
いふ『さらば
誰
たれ
か
救
すく
はるる
事
こと
を
得
え
ん』
27
イエス
言
い
ひたまふ『
人
ひと
のなし
得
え
ぬところは、
神
かみ
のなし
得
う
る
所󠄃
ところ
なり』
28
ペテロ
言
い
ふ『
視
み
よ
我等
われら
わが《[*]》
物
もの
をすてて
汝
なんぢ
に
從
したが
へり』[*或は「我が家」と譯す。]
29
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『われ
誠
まこと
に
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
神
かみ
の
國
くに
のために、
或
あるひ
は
家
いへ
、
或
あるひ
は
妻
つま
、
或
あるひ
は
兄弟
きゃうだい
、あるひは
兩親
ふたおや
、あるひは
子
こ
を
棄
す
つる
者
もの
は、
誰
たれ
にても、
30
今
いま
の
時
とき
に
數倍
すうばい
を
受
う
け、また
後
のち
の
世
よ
にて、
永遠󠄄
とこしへ
の
生命
いのち
を
受
う
けぬはなし』
31
イエス
十二
じふに
弟子
でし
を
近󠄃
ちか
づけて
言
い
ひたまふ『
視
み
よ、
我
われ
らエルサレムに
上
のぼ
る。
人
ひと
の
子
こ
につき
預言者
よげんしゃ
たちによりて
錄
しる
されたる
凡
すべ
ての
事
こと
は、
成
な
し
遂󠄅
と
げらるべし。
32
人
ひと
の
子
こ
は
異邦人
いはうじん
に
付
わた
され、
嘲弄
てうろう
せられ、
辱
はづか
しめられ、
唾
つばき
せられん。
33
彼
かれ
等
ら
これを
鞭
むち
うち、かつ
殺
ころ
さん。
斯
かく
て
彼
かれ
は
三日
みっか
めに
甦
よみが
へるべし』
34
弟子
でし
たち
此
これ
等
ら
のことを
一
ひと
つだに
悟
さと
らず、
此
こ
の
言
ことば
かれらに
隱
かく
れたれば、その
言
い
ひ
給
たま
ひしことを
知
し
らざりき。
158㌻
35
イエス、エリコに
近󠄃
ちか
づき
給
たま
ふとき、
一人
ひとり
の
盲人
めしひ
、
路
みち
の
傍
かたは
らに
坐
ざ
して、
物
もの
乞
こ
ひ
居
ゐ
たりしが、
36
群衆
ぐんじゅう
の
過󠄃
す
ぐるを
聞
き
きて、その
何事
なにごと
なるかを
問
と
ふ。
37
人々
ひとびと
ナザレのイエスの
過󠄃
す
ぎたまふ
由
よし
を
吿
つ
げたれば、
38
盲人
めしひ
、
呼
よば
はりて
言
い
ふ『ダビデの
子
こ
イエスよ、
我
われ
を
憫
あはれ
みたまへ』
39
先
さき
だち
徃
ゆ
く
者
もの
ども、
彼
かれ
を
禁
いまし
めて
默
もだ
さしめんと
爲
し
たれど、
增々
ますます
さけびて
言
い
ふ『ダビデの
子
こ
よ、
我
われ
を
憫
あはれ
みたまへ』
〘116㌻〙
40
イエス
立
た
ち
止
とゞま
り
盲人
めしひ
を
連
つ
れ
來
きた
るべきことを
命
めい
じ
給
たま
ふ。かれ
近󠄃
ちか
づきたれば、
41
イエス
問
と
ひ
給
たま
ふ『わが
汝
なんぢ
に
何
なに
を
爲
な
さんことを
望󠄇
のぞ
むか』
彼
かれ
いふ『
主
しゅ
よ、
見
み
えんことなり』
42
イエス
彼
かれ
に『
見
み
ることを
得
え
よ、なんぢの
信仰
しんかう
なんぢを
救
すく
へり』と
言
い
ひ
給
たま
へば、
43
立刻
たちどころ
に
見
み
ることを
得
え
、
神
かみ
を
崇
あが
めてイエスに
從
したが
ふ。
民
たみ
みな
之
これ
を
見
み
て
神
かみ
を
讃美
さんび
せり。
第19章
1
エリコに
入
い
りて
過󠄃
す
ぎゆき
給
たま
ふとき、
2
視
み
よ、
名
な
をザアカイといふ
人
ひと
あり、
取税人
しゅぜいにん
の
長
かしら
にて
富
と
める
者
もの
なり。
3
イエスの
如何
いか
なる
人
ひと
なるかを
見
み
んと
思
おも
へど、
丈
たけ
矮
ひく
うして
群衆
ぐんじゅう
のために
見
み
ること
能
あた
はず、
4
前󠄃
まへ
に
走
はし
りゆき、《[*]》
桑
くは
の
樹
き
にのぼる。イエスその
路
みち
を
過󠄃
す
ぎんとし
給
たま
ふ
故
ゆゑ
なり。[*原語「スカモラ」]
5
イエス
此處
ここ
に
至
いた
りしとき、
仰
あふ
ぎ
見
み
て
言
い
ひたまふ『ザアカイ、
急󠄃
いそ
ぎおりよ、
今日
けふ
われ
汝
なんぢ
の
家
いへ
に
宿
やど
るべし』
6
ザアカイ
急󠄃
いそ
ぎおり、
喜
よろこ
びてイエスを
迎󠄃
むか
ふ。
7
人々
ひとびと
みな
之
これ
を
見
み
て
呟
つぶや
きて
言
い
ふ『かれは
罪人
つみびと
の
家
いへ
に
入
い
りて
客
きゃく
となれり』
8
ザアカイ
立
た
ちて
主
しゅ
に
言
い
ふ『
主
しゅ
、
視
み
よ、わが
所󠄃有
もちもの
の
半󠄃
なかば
を
貧󠄃
まづ
しき
者
もの
に
施
ほどこ
さん、
若
も
し、われ
誣
し
ひ
訴
うった
へて
人
ひと
より
取
と
りたる
所󠄃
ところ
あらば、
四
し
倍
ばい
にして
償
つぐの
はん』
9
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『けふ
救
すくひ
はこの
家
いへ
に
來
きた
れり、
此
こ
の
人
ひと
もアブラハムの
子
こ
なればなり。
10
それ
人
ひと
の
子
こ
の
來
きた
れるは、
失
う
せたる
者
もの
を
尋󠄃
たづ
ねて
救
すく
はん
爲
ため
なり』
159㌻
11
人々
ひとびと
これらの
事
こと
を
聽
き
きゐたるとき、
譬
たとへ
を
加
くは
へて
言
い
ひ
給
たま
ふ。これはイエス、エルサレムに
近󠄃
ちか
づき
給
たま
ひ、
神
かみ
の
國
くに
たちどころに
現
あらは
るべしと
彼
かれ
らが
思
おも
ふ
故
ゆゑ
なり。
12
乃
すなは
ち
言
い
ひたまふ『
或
あ
る
貴人
きにん
、
王
わう
の
權
けん
を
受
う
けて
歸
かへ
らんとて
遠󠄄
とほ
き
國
くに
へ
徃
ゆ
くとき、
13
十
じふ
人
にん
の
僕
しもべ
をよび、
之
これ
に
金
きん
十
じふ
ミナを
付
わた
して
言
い
ふ「わが
歸
かへ
るまで
商賣
しゃうばい
せよ」
14
然
しか
るに
其
そ
の
地
ち
の
民
たみ
かれを
憎
にく
み、
後
あと
より
使
つかひ
を
遣󠄃
つかは
して「
我
われ
らは
此
こ
の
人
ひと
の
我
われ
らの
王
わう
となることを
欲
ほっ
せず」と
言
い
はしむ。
15
貴人
きにん
、
王
わう
の
權
けん
をうけて
歸
かへ
り
來
きた
りしとき、
銀
かね
を
付
わた
し
置
お
きたる
僕
しもべ
どもの、
如何
いか
に
商賣
しゃうばい
せしかを
知
し
らんとて
彼
かれ
らを
呼
よ
ばしむ。
16
初
はじめ
のもの
進󠄃
すゝ
み
出
い
でて
言
い
ふ「
主
しゅ
よ、なんぢの
一
いち
ミナは
十
じふ
ミナを
贏
まう
けたり」
17
王
わう
いふ「
善
よ
いかな、
良
よ
き
僕
しもべ
、なんぢは
小事
せうじ
に
忠
ちゅう
なりしゆゑ、
十
とを
の
町
まち
を
司
つかさ
どるべし」
18
次
つぎ
の
者
もの
きたりて
言
い
ふ「
主
しゅ
よ、なんぢの
一
いち
ミナは
五
ご
ミナを
贏
まう
けたり」
19
王
わう
また
言
い
ふ「なんぢも
五
いつ
つの
町
まち
を
司
つかさ
どるべし」
20
また
一人
ひとり
きたりて
言
い
ふ「
主
しゅ
、
視
み
よ、なんぢの
一
いち
ミナは
此處
ここ
に
在
あ
り。
我
われ
これを
袱紗
ふくさ
に
包
つゝ
みて
藏
をさ
め
置
お
きたり。
〘117㌻〙
21
これ
汝
なんぢ
の
嚴
きび
しき
人
ひと
なるを
懼
おそ
れたるに
因
よ
る。なんぢは
置
お
かぬものを
取
と
り、
播
ま
かぬものを
刈
か
るなり」
22
王
わう
いふ「
惡
あ
しき
僕
しもべ
、われ
汝
なんぢ
の
口
くち
によりて
汝
なんぢ
を
審
さば
かん。
我
われ
の
嚴
きび
しき
人
ひと
にて、
置
お
かぬものを
取
と
り、
播
ま
かぬものを
刈
か
るを
知
し
るか。
23
何
なに
ぞわが
金
かね
を
銀行
ぎんかう
に
預
あづ
けざりし、
然
さ
らば
我
われ
きたりて
元金
もときん
と
利子
りし
とを
請󠄃求
せいきう
せしものを」
24
斯
かく
て
傍
かたは
らに
立
た
つ
者
もの
どもに
言
い
ふ「かれの
一
いち
ミナを
取
と
りて
十
じふ
ミナを
有
も
てる
人
ひと
に
付
わた
せ」
25
彼
かれ
等
ら
いふ「
主
しゅ
よ、かれは
旣
すで
に
十
じふ
ミナを
有
も
てり」
26
「われ
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
凡
すべ
て
有
も
てる
人
ひと
はなほ
與
あた
へられ、
有
も
たぬ
人
ひと
は
有
も
てるものをも
取
と
らるべし。
27
而
しか
して
我
わ
が
王
わう
たる
事
こと
を
欲
ほっ
せぬ、かの
仇
あた
どもを、
此處
ここ
に
連
つ
れきたり
我
わ
が
前󠄃
まへ
にて
殺
ころ
せ」』
28
イエス
此
これ
等
ら
のことを
言
い
ひてのち、
先
さき
だち
進󠄃
すゝ
みてエルサレムに
上
のぼ
り
給
たま
ふ。
160㌻
29
オリブといふ
山
やま
の
麓
ふもと
なるベテパゲ
及
およ
びベタニヤに
近󠄃
ちか
づきし
時
とき
、イエス
二人
ふたり
の
弟子
でし
を
遣󠄃
つかは
さんとして
言
い
ひ
給
たま
ふ、
30
『
向
むか
ひの
村
むら
にゆけ、
其處
そこ
に
入
い
らば
一度
ひとたび
も
人
ひと
の
乘
の
りたる
事
こと
なき
驢馬
ろば
の
子
こ
の
繋
つな
ぎあるを
見
み
ん、それを
解
と
きて
牽
ひ
ききたれ。
31
誰
たれ
かもし
汝
なんぢ
らに「なにゆゑ
解
と
くか」と
問
と
はば、
斯
か
く
言
い
ふべし「
主
しゅ
の
用
よう
なり」と』
32
遣󠄃
つかは
されたる
者
もの
ゆきたれば、
果
はた
して
言
い
ひ
給
たま
ひし
如
ごと
くなるを
見
み
る。
33
かれら
驢馬
ろば
の
子
こ
をとく
時
とき
、その
持主
もちぬし
ども
言
い
ふ『なにゆゑ
驢馬
ろば
の
子
こ
を
解
と
くか』
34
答
こた
へて
言
い
ふ『
主
しゅ
の
用
よう
なり』
35
かくて
驢馬
ろば
の
子
こ
をイエスの
許
もと
に
牽
ひ
ききたり、
己
おの
が
衣
ころも
をその
上
うへ
にかけて、イエスを
乘
の
せたり。
36
その
徃
ゆ
き
給
たま
ふとき、
人々
ひとびと
おのが
衣
ころも
を
途󠄃
みち
に
敷
し
く。
37
オリブ
山
やま
の
下
くだ
りあたりまで
近󠄃
ちか
づき
來
きた
り
給
たま
へば、
群
む
れゐる
弟子
でし
等
たち
みな
喜
よろこ
びて、その
見
み
しところの
能力
ちから
ある
御業
みわざ
につき、
聲
こゑ
高
たか
らかに
神
かみ
を
讃美
さんび
して
言
い
ひ
始
はじ
む、
38
『
讃
ほ
むべきかな、
主
しゅ
の
名
な
によりて
來
きた
る
王
わう
。
天
てん
には
平󠄃和
へいわ
、
至高
いとたか
き
處
ところ
には
榮光
えいくわう
あれ』
39
群衆
ぐんじゅう
のうちの
或
あ
るパリサイ
人
びと
ら、イエスに
言
い
ふ『
師
し
よ、なんぢの
弟子
でし
たちを
禁
いまし
めよ』
40
答
こた
へて
言
い
ひ
給
たま
ふ『われ
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
此
こ
のともがら
默
もだ
さば、
石
いし
叫
さけ
ぶべし』
41
旣
すで
に
近󠄃
ちか
づきたるとき、
都
みやこ
を
見
み
やり、
之
これ
がために
泣
な
きて
言
い
ひ
給
たま
ふ、
42
『ああ
汝
なんぢ
、なんぢも
若
も
しこの
日
ひ
の
間
うち
に
平󠄃和
へいわ
にかかはる
事
こと
を
知
し
りたらんには――
然
さ
れど
今
いま
なんぢの
目
め
に
隱
かく
れたり。
43
日
ひ
きたりて
敵
てき
なんぢの
周󠄃圍
まはり
に
壘
るゐ
をきづき、
汝
なんぢ
を
取圍
とりかこ
みて
四方
しはう
より
攻
せ
め、
44
汝
なんぢ
と、その
內
うち
にある
子
こ
らとを
地
ち
に
打倒
うちたふ
し、
一
ひと
つの
石
いし
をも
石
いし
の
上
うへ
に
遺󠄃
のこ
さざるべし。なんぢ
眷顧󠄃
かへりみ
の
時
とき
を
知
し
らざりしに
因
よ
る』
〘118㌻〙
45
斯
かく
て
宮
みや
に
入
い
り、
商
あきな
ひする
者
もの
どもを
逐󠄃
お
ひ
出
いだ
しはじめ、
46
之
これ
に
言
い
ひたまふ『「わが
家
いへ
は
祈
いのり
の
家
いへ
たるべし」と
錄
しる
されたるに、
汝
なんぢ
らは
之
これ
を
强盜
がうたう
の
巢
す
となせり』
161㌻
47
イエス
日々
ひゞ
宮
みや
にて
敎
をし
へたまふ。
祭司長
さいしちゃう
・
學者
がくしゃ
ら
及
およ
び
民
たみ
の
重立
おもだ
ちたる
者
もの
ども
之
これ
を
殺
ころ
さんと
思
おも
ひたれど、
48
民
たみ
みな
耳
みみ
を
傾
かたむ
けて、イエスに
聽
き
きたれば
爲
な
すべき
方
かた
を
知
し
らざりき。
第20章
1
或
ある
日
ひ
イエス
宮
みや
にて
民
たみ
を
敎
をし
へ、
福音󠄃
ふくいん
を
宣
の
べゐ
給
たま
ふとき、
祭司長
さいしちゃう
・
學者
がくしゃ
らは、
長老
ちゃうらう
どもと
共
とも
に
近󠄃
ちか
づき
來
きた
り、
2
イエスに
語
かた
りて
言
い
ふ『なにの
權威
けんゐ
をもて
此
これ
等
ら
の
事
こと
をなすか、
此
こ
の
權威
けんゐ
を
授
さづ
けし
者
もの
は
誰
たれ
か、
我
われ
らに
吿
つ
げよ』
3
答
こた
へて
言
い
ひ
給
たま
ふ『われも
一言
ひとこと
なんぢらに
問
と
はん、
答
こた
へよ。
4
ヨハネのバプテスマは
天
てん
よりか、
人
ひと
よりか』
5
彼
かれ
ら
互
たがひ
に
論
ろん
じて
言
い
ふ『もし「
天
てん
より」と
言
い
はば「なに
故
ゆゑ
かれを
信
しん
ぜざりし」と
言
い
はん。
6
もし「
人
ひと
より」と
言
い
はんか、
民
たみ
みなヨハネを
預言者
よげんしゃ
と
信
しん
ずるによりて
我
われ
らを
石
いし
にて
擊
う
たん』
7
遂󠄅
つひ
に
何處
いづこ
よりか
知
し
らぬ
由
よし
を
答
こた
ふ。
8
イエス
言
い
ひたまふ『われも
何
なに
の
權威
けんゐ
をもて
此
これ
等
ら
の
事
こと
をなすか、
汝
なんぢ
らに
吿
つ
げじ』
9
斯
かく
て
次
つぎ
の
譬
たとへ
を
民
たみ
に
語
かた
りいで
給
たま
ふ『ある
人
ひと
、
葡萄園
ぶだうぞの
を
造󠄃
つく
りて
農夫
のうふ
どもに
貸
か
し、
遠󠄄
とほ
く
旅立
たびだち
して
久
ひさ
しくなりぬ。
10
時
とき
至
いた
りて、
葡萄園
ぶだうぞの
の
所󠄃得
しょとく
を
納󠄃
をさ
めしめんとて、
一人
ひとり
の
僕
しもべ
を
農夫
のうふ
の
許
もと
に
遣󠄃
つかは
ししに
農夫
のうふ
ども
之
これ
を
打
う
ちたたき、
空󠄃手
むなで
にて
歸
かへ
らしめたり。
11
又󠄂
また
ほかの
僕
しもべ
を
遣󠄃
つかは
ししに、
之
これ
をも
打
う
ちたたき
辱
はづか
しめ、
空󠄃手
むなで
にて
歸
かへ
らしめたり。
12
なほ
三度
みたび
めの
者
もの
を
遣󠄃
つかは
ししに、
之
これ
をも
傷
きず
つけて
逐󠄃
お
ひ
出
いだ
したり。
13
葡萄園
ぶだうぞの
の
主
ぬし
いふ「われ
何
なに
を
爲
な
さんか。
我
わ
が
愛
いつく
しむ
子
こ
を
遣󠄃
つかは
さん、
或
あるひ
は
之
これ
を
敬
うやま
ふなるべし」
14
農夫
のうふ
ども
之
これ
を
見
み
て
互
たがひ
に
論
ろん
じて
言
い
ふ「これは
世嗣
よつぎ
なり。いざ
殺
ころ
して
其
そ
の
嗣業
しげふ
を
我
われ
らの
物
もの
とせん」
15
斯
かく
てこれを
葡萄園
ぶだうぞの
の
外
そと
に
逐󠄃
お
ひ
出
いだ
して
殺
ころ
せり。さらば
葡萄園
ぶだうぞの
の
主
ぬし
、かれらに
何
なに
を
爲
な
さんか、
16
來
きた
りてかの
農夫
のうふ
どもを
亡
ほろぼ
し、
葡萄園
ぶだうぞの
を
他
ほか
の
者
もの
どもに
與
あた
ふべし』
人々
ひとびと
これを
聽
き
きて
言
い
ふ『
然
しか
はあらざれ』
162㌻
17
イエス
彼
かれ
らに
目
め
を
注
と
めて
言
い
ひ
給
たま
ふ『されば 「
造󠄃家者
いへつくり
らの
棄
す
てたる
石
いし
は、 これぞ
隅
すみ
の
首石
おやいし
となれる」と
錄
しる
されたるは
何
なん
ぞや。
18
凡
おほよ
そその
石
いし
の
上
うへ
に
倒
たふ
るる
者
もの
は
碎
くだ
け、
又󠄂
また
その
石
いし
、
人
ひと
の
上
うへ
に
倒
たふ
るれば、その
人
ひと
を
微塵
みぢん
にせん』
〘119㌻〙
19
此
こ
のとき
學者
がくしゃ
・
祭司長
さいしちゃう
ら、イエスに
手
て
をかけんと
思
おも
ひたれど、
民
たみ
を
恐
おそ
れたり。この
譬
たとへ
の
己
おのれ
どもを
指
さ
して
言
い
ひ
給
たま
へるを
悟
さと
りしに
因
よ
る。
20
かくて
彼
かれ
ら
機
き
を
窺
うかゞ
ひ、イエスを
司
つかさ
の
支配
しはい
と
權威
けんゐ
との
下
もと
に
付
わた
さんとて、その
言
ことば
を
捉
とら
ふるために
義人
ぎじん
の
樣
さま
したる
間諜
まはしもの
どもを
遣󠄃
つかは
したれば、
21
其
そ
の
者
もの
どもイエスに
問
と
ひて
言
い
ふ『
師
し
よ、
我
われ
らは
汝
なんぢ
の
正
たゞ
しく
語
かた
り、かつ
敎
をし
へ、
外貌
うはべ
を
取
と
らず、
眞
まこと
をもて
神
かみ
の
道󠄃
みち
を
敎
をし
へ
給
たま
ふを
知
し
る。
22
われら
貢
みつぎ
をカイザルに
納󠄃
をさ
むるは、
善
よ
きか、
惡
あ
しきか』
23
イエスその
惡巧
わるだくみ
を
知
し
りて
言
い
ひ
給
たま
ふ、
24
『デナリを
我
われ
に
見
み
せよ。これは
誰
たれ
の
像
かたち
、たれの
號
しるし
なるか』『カイザルのなり』と
答
こた
ふ。
25
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『さらばカイザルの
物
もの
はカイザルに、
神
かみ
の
物
もの
は
神
かみ
に
納󠄃
をさ
めよ』
26
かれら
民
たみ
の
前󠄃
まへ
にて
其
そ
の
言
ことば
をとらへ
得
え
ず、
且
かつ
その
答
こたへ
を
怪
あや
しみて
默
もだ
したり。
27
また
復活
よみがへり
なしと
言
い
ひ
張
は
るサドカイ
人
びと
の
或
ある
者
もの
ども、イエスに
來
きた
り
問
と
ひて
言
い
ふ、
28
『
師
し
よ、モーセは
人
ひと
の
兄弟
きゃうだい
、もし
妻
つま
あり、
子
こ
なくして
死
し
なば、
其
そ
の
兄弟
きゃうだい
かれの
妻
つま
を
娶
めと
りて、
兄弟
きゃうだい
のために
嗣子
よつぎ
を
擧
あ
ぐべしと、
我
われ
らに
書
か
き
遣󠄃
のこ
したり。
29
さて
茲
こゝ
に
七人
しちにん
の
兄弟
きゃうだい
ありて、
兄
あに
、
妻
つま
を
娶
めと
り、
子
こ
なくして
死
し
に、
30
第二
だいに
、
第三
だいさん
の
者
もの
も
之
これ
を
娶
めと
り、
31
七人
しちにん
みな
同
おな
じく
子
こ
を
殘
のこ
さずして
死
し
に、
32
後
のち
には
其
そ
の
女
をんな
も
死
し
にたり。
33
されば
復活
よみがへり
の
時
とき
、この
女
をんな
は
誰
たれ
の
妻
つま
たるべきか、
七人
しちにん
これを
妻
つま
としたればなり』
163㌻
34
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『この
世
よ
の
子
こ
らは
娶
めと
り
嫁
とつ
ぎすれど、
35
かの
世
よ
に
入
い
るに、
死人
しにん
の
中
うち
より
甦
よみが
へるに、
相應
ふさは
しと
爲
せ
らるる
者
もの
は、
娶
めと
り
嫁
とつ
ぎすることなし。
36
彼
かれ
等
ら
ははや
死
し
ぬること
能
あた
はざればなり。
御使
みつかひ
たちに
等
ひと
しく、また
復活
よみがへり
の
子
こ
どもにして、
神
かみ
の
子供
こども
たるなり。
37
死
し
にたる
者
もの
の
甦
よみが
へる
事
こと
は、モーセも
柴
しば
の
條
くだり
に、
主
しゅ
を「アブラハムの
神
かみ
、イサクの
神
かみ
、ヤコブの
神
かみ
」と
呼
よ
びて
之
これ
を
示
しめ
せり。
38
神
かみ
は
死
し
にたる
者
もの
の
神
かみ
にあらず、
生
い
ける
者
もの
の
神
かみ
なり。それ
神
かみ
の
前󠄃
まへ
には
皆
みな
生
い
けるなり』
39
學者
がくしゃ
のうちの
或
ある
者
もの
ども
答
こた
へて『
師
し
よ、
善
よ
く
言
い
ひ
給
たま
へり』と
言
い
ふ。
40
彼
かれ
等
ら
ははや、
何事
なにごと
をも
問
と
ひ
得
え
ざりし
故
ゆゑ
なり。
41
イエス
彼
かれ
らに
言
い
ひたまふ『
如何
いか
なれば
人々
ひとびと
、キリストをダビデの
子
こ
と
言
い
ふか。
42
ダビデ
自
みづか
ら
詩
し
篇
へん
に
言
い
ふ、 「
主
しゅ
わが
主
しゅ
に
言
い
ひたまふ、
43
われ
汝
なんぢ
の
敵
てき
を
汝
なんぢ
の
足臺
あしだい
となすまでは、 わが
右
みぎ
に
坐
ざ
せよ」
44
ダビデ
斯
か
く
彼
かれ
を
主
しゅ
と
稱
とな
ふれば、
爭
いか
でその
子
こ
ならんや』
〘120㌻〙
45
民
たみ
の
皆
みな
ききをる
中
うち
にて、イエス
弟子
でし
たちに
言
い
ひ
給
たま
ふ、
46
『
學者
がくしゃ
らに
心
こゝろ
せよ。
彼
かれ
らは
長
なが
き
衣
ころも
を
著
き
て
步
あゆ
むことを
好
この
み、
市場
いちば
にての
敬禮
けいれい
、
會堂
くわいだう
の
上座
じゃうざ
、
饗宴
ふるまひ
の
上席
じゃうせき
を
喜
よろこ
び、
47
また
寡婦󠄃
やもめ
らの
家
いへ
を
呑
の
み、
外見
みえ
をつくりて
長
なが
き
祈
いのり
をなす。
其
そ
の
受
う
くる
審判󠄄
さばき
は
更
さら
に
嚴
きび
しからん』
第21章
1
イエス
目
め
を
擧
あ
げて、
富
と
める
人々
ひとびと
の
納󠄃物
をさめもの
を、
賽錢函
さいせんばこ
に
投
な
げ
入
い
るるを
見
み
、
2
また
或
あ
る
貧󠄃
まづ
しき
寡婦󠄃
やもめ
のレプタ
二
ふた
つを
投
な
げ
入
い
るるを
見
み
て
言
い
ひ
給
たま
ふ、
3
『われ
實
まこと
をもて
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、この
貧󠄃
まづ
しき
寡婦󠄃
やもめ
は、
凡
すべ
ての
人
ひと
よりも
多
おほ
く
投
な
げ
入
い
れたり。
164㌻
4
彼
かれ
らは
皆
みな
その
豐
ゆたか
なる
內
うち
より
納󠄃物
をさめもの
の
中
なか
に
投
な
げ
入
い
れ、この
寡婦󠄃
やもめ
はその
乏
とぼ
しき
中
なか
より、
己
おの
が
有
も
てる
生命
いのち
の
料
しろ
をことごとく
投
な
げ
入
い
れたればなり』
5
或
あ
る
人々
ひとびと
、
美麗
みごと
なる
石
いし
と
獻物
さゝげもの
とにて
宮
みや
の
飾󠄃
かざ
られたる
事
こと
を
語
かた
りしに、イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ、
6
『なんぢらが
見
み
る
此
これ
等
ら
の
物
もの
は、
一
ひと
つの
石
いし
も
崩󠄃
くづ
されずして
石
いし
の
上
うへ
に
殘
のこ
らぬ
日
ひ
きたらん』
7
彼
かれ
ら
問
と
ひて
言
い
ふ『
師
し
よ、さらば
此
これ
等
ら
のことは
何時
いつ
あるか、
又󠄂
また
これらの
事
こと
の
成
な
らんとする
時
とき
は
如何
いか
なる
兆
しるし
あるか』
8
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢら
惑
まどは
されぬように
心
こゝろ
せよ、
多
おほ
くの
者
もの
わが
名
な
を
冐
をか
し
來
きた
り「われは
夫
それ
なり」と
言
い
ひ「
時
とき
は
近󠄃
ちか
づけり」と
言
い
はん、
彼
かれ
らに
從
したが
ふな。
9
戰爭
いくさ
と
騷亂
さわぎ
との
事
こと
を
聞
き
くとき、
怖
お
づな。
斯
かゝ
ることは
先
ま
づあるべきなり。
然
さ
れど
終󠄃
をはり
は
直
たゞ
ちに
來
きた
らず』
10
また
言
い
ひたまふ『「
民
たみ
は
民
たみ
に、
國
くに
は
國
くに
に
逆󠄃
さから
ひて
起󠄃
た
たん」
11
かつ
大
おほい
なる
地震
ぢしん
あり、
處々
ところどころ
に
疫病
えきびゃう
・
饑饉
ききん
あらん。
懼
おそ
るべき
事
こと
と
天
てん
よりの
大
おほい
なる
兆
しるし
とあらん。
12
すべて
此
これ
等
ら
のことに
先
さき
だちて、
人々
ひとびと
なんぢらに
手
て
をくだし、
汝
なんぢ
らを
責
せ
めん、
即
すなは
ち
汝
なんぢ
らを
會堂
くわいだう
および
獄
ひとや
に
付
わた
し、わが
名
な
のために
王
わう
たち
司
つかさ
たちの
前󠄃
まへ
に
曵
ひ
きゆかん。
13
これは
汝
なんぢ
らに
證
あかし
の
機
をり
とならん。
14
然
さ
れば
汝
なんぢ
ら
如何
いか
に
答
こた
へんと
預
あらか
じめ
思慮
おもんぱか
るまじき
事
こと
を
心
こゝろ
に
定
さだ
めよ。
15
われ
汝
なんぢ
らに
凡
すべ
て
逆󠄃
さから
ふ
者
もの
の、
言
い
ひ
逆󠄃
さから
ひ、
言
い
ひ
消󠄃
け
すことをなし
得
え
ざる
口
くち
と
智慧󠄄
ちゑ
とを
與
あた
ふべければなり。
16
汝
なんぢ
らは
兩親
ふたおや
・
兄弟
きゃうだい
・
親族
しんぞく
・
朋友
ほういう
にさへ
付
わた
されん。
又󠄂
また
かれらは
汝
なんぢ
らの
中
うち
の
或
ある
者
もの
を
殺
ころ
さん。
17
汝
なんぢ
等
ら
わが
名
な
の
故
ゆゑ
に
凡
すべ
ての
人
ひと
に
憎
にく
まるべし。
18
然
さ
れど
汝
なんぢ
らの
頭
かしら
の
髮
け
一
ひと
すぢだに
失
う
せじ。
19
汝
なんぢ
らは
忍󠄄耐
にんたい
によりて
其
そ
の《[*]》
靈魂
たましひ
を
得
う
べし。[*或は「生命」と譯す。]
165㌻
20
汝
なんぢ
らエルサレムが
軍勢
ぐんぜい
に
圍
かこ
まるるを
見
み
ば、その
亡
ほろび
近󠄃
ちか
づけりと
知
し
れ。
21
その
時
とき
ユダヤに
居
を
る
者
もの
どもは
山
やま
に
遁
のが
れよ、
都
みやこ
の
中
うち
にをる
者
もの
どもは
出
い
でよ、
田舍
ゐなか
にをる
者
もの
どもは
都
みやこ
に
入
い
るな、
22
これ
錄
しる
されたる
凡
すべ
ての
事
こと
の
遂󠄅
と
げらるべき
刑罰
けいばつ
の
日
ひ
なり。
〘121㌻〙
23
その
日
ひ
には
孕
みごも
りたる
者
もの
と、
乳󠄃
ちゝ
を
哺
のま
する
者
もの
とは
禍害󠄅
わざはひ
なるかな。
地
ち
に
大
おほい
なる
艱難
なやみ
ありて、
御怒
みいかり
この
民
たみ
に
臨
のぞ
み、
24
彼
かれ
らは
劍
つるぎ
の
刃󠄃
は
に
斃
たふ
れ、
又󠄂
また
は
捕
とら
はれて
諸國
しょこく
に
曵
ひ
かれん。
而
しか
してエルサレムは
異邦人
いはうじん
の
時
とき
滿
み
つるまで、
異邦人
いはうじん
に
蹂躪
ふみにじ
らるべし。
25
また
日
ひ
・
月
つき
・
星
ほし
に
兆
しるし
あらん。
地
ち
にては
國々
くにぐに
の
民
たみ
なやみ、
海
うみ
と
濤
なみ
との
鳴
な
り
轟
とゞろ
くによりて
狼狽
うろた
へ、
26
人々
ひとびと
おそれ、かつ
世界
せかい
に
來
きた
らんとする
事
こと
を
思
おも
ひて
膽
きも
を
失
うしな
はん。これ
天
てん
の
萬象
ばんしゃう
、
震
ふる
ひ
動
うご
けばなり。
27
其
そ
のとき
人々
ひとびと
、
人
ひと
の
子
こ
の
能力
ちから
と
大
おほい
なる
榮光
えいくわう
とをもて、
雲
くも
に
乘
の
りきたるを
見
み
ん。
28
これらの
事
こと
起󠄃
おこ
り
始
はじ
めなば、
仰
あふ
ぎて
首
かうべ
を
擧
あ
げよ。
汝
なんぢ
らの
贖罪
あがなひ
、
近󠄃
ちか
づけるなり』
29
また
譬
たとへ
を
言
い
ひたまふ『
無花果
いちぢく
の
樹
き
、また
凡
すべ
ての
樹
き
を
見
み
よ、
30
旣
すで
に
芽
めざ
せば、
汝
なんぢ
等
ら
これを
見
み
てみづから
夏
なつ
の
近󠄃
ちか
きを
知
し
る。
31
斯
かく
のごとく
此
これ
等
ら
のことの
起󠄃
おこ
るを
見
み
ば、
神
かみ
の
國
くに
の
近󠄃
ちか
きを
知
し
れ。
32
われ
誠
まこと
に
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、これらの
事
こと
ことごとく
成
な
るまで、
今
いま
の
代
よ
は
過󠄃
す
ぎゆくことなし。
33
天
てん
地
ち
は
過󠄃
す
ぎゆかん、
然
さ
れど
我
わ
が
言
ことば
は
過󠄃
す
ぎゆくことなし。
34
汝
なんぢ
等
ら
みづから
心
こゝろ
せよ、
恐
おそ
らくは
飮食󠄃
いんしょく
にふけり、
世
よ
の
煩勞
わずらひ
にまとはれて
心
こゝろ
鈍
にぶ
り、
思
おも
ひがけぬ
時
とき
、かの
日
ひ
羂
わな
のごとく
來
きた
らん。
35
これは
徧
あまね
く
地
ち
の
面
おもて
に
住󠄃
す
める
凡
すべ
ての
人
ひと
に
臨
のぞ
むべきなり。
36
この
起󠄃
おこ
るべき
凡
すべ
ての
事
こと
をのがれ、
人
ひと
の
子
こ
のまへに
立
た
ち
得
う
るやう、
常
つね
に
祈
いの
りつつ
目
め
を
覺
さま
しをれ』
37
イエス
晝
ひる
は
宮
みや
にて
敎
をし
へ、
夜
よる
は
出
い
でてオリブといふ
山
やま
に
宿
やど
りたまふ。
38
民
たみ
はみな
御敎
みをしへ
を
聽
き
かんとて、
朝󠄃
あさ
とく
宮
みや
にゆき、
御許
みもと
に
集
あつま
れり。
166㌻
第22章
1
さて
過󠄃越
すぎこし
といふ
除酵祭
じょかうさい
、
近󠄃
ちか
づけり。
2
祭司長
さいしちゃう
・
學者
がくしゃ
らイエスを
殺
ころ
さんとし、その
手段
てだて
いかにと
求
もと
む、
民
たみ
を
懼
おそ
れたればなり。
3
時
とき
にサタン、
十二
じふに
の
一人
ひとり
なるイスカリオテと
稱
とな
ふるユダに
入
い
る。
4
ユダ
乃
すなは
ち
祭司長
さいしちゃう
・
宮守頭
みやもりがしら
どもに
徃
ゆ
きて、イエスを
如何
いか
にして
付
わた
さんと
議
はか
りたれば、
5
彼
かれ
ら
喜
よろこ
びて
銀
かね
を
與
あた
へんと
約
やく
す。
6
ユダ
諾
うべな
ひて
群衆
ぐんじゅう
の
居
を
らぬ
時
とき
にイエスを
付
わた
さんと
好
よ
き
機
をり
をうかがふ。
7
過󠄃越
すぎこし
の
羔羊
こひつじ
を
屠
ほふ
るべき
除酵祭
じょかうさい
の
日
ひ
、
來
きた
りたれば、
8
イエス、ペテロとヨハネとを
遣󠄃
つかは
さんとして
言
い
ひたまふ『
徃
ゆ
きて
我
われ
らの
食󠄃
しょく
せん
爲
ため
に
過󠄃越
すぎこし
の
備
そなへ
をなせ』
9
彼
かれ
ら
言
い
ふ『
何處
いづこ
に
備
そな
ふることを
望󠄇
のぞ
み
給
たま
ふか』
10
イエス
言
い
ひたまふ『
視
み
よ、
都
みやこ
に
入
い
らば、
水
みづ
をいれたる
瓶
かめ
を
持
も
つ
人
ひと
なんぢらに
遇󠄃
あ
ふべし、
之
これ
に
從
したが
ひゆき、その
入
い
る
所󠄃
ところ
の
家
いへ
にいりて、
〘122㌻〙
11
家
いへ
の
主人
あるじ
に「
師
し
なんぢに
言
い
ふ、われ
弟子
でし
らと
共
とも
に
過󠄃越
すぎこし
の
食󠄃
しょく
をなすべき
座敷
ざしき
は
何處
いづこ
なるか」と
言
い
へ。
12
さらば
調
とゝの
へたる
大
おほい
なる
二階
にかい
座敷
ざしき
を
見
み
すべし。
其處
そこ
に
備
そな
へよ』
13
かれら
出
い
で
徃
ゆ
きて、イエスの
言
い
ひ
給
たま
ひし
如
ごと
くなるを
見
み
て
過󠄃越
すぎこし
の
設備
そなへ
をなせり。
14
時
とき
いたりてイエス
席
せき
に
著
つ
きたまひ、
使徒
しと
たちも
共
とも
に
著
つ
く。
15
斯
かく
て
彼
かれ
らに
言
い
ひ
給
たま
ふ『われ
苦難
くるしみ
の
前󠄃
まへ
に、なんぢらと
共
とも
にこの
過󠄃越
すぎこし
の
食󠄃
しょく
をなすことを
望󠄇
のぞ
みに
望󠄇
のぞ
みたり。
16
われ
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
神
かみ
の
國
くに
にて
過󠄃越
すぎこし
の
成就
じゃうじゅ
するまでは
我
われ
復
また
これを
食󠄃
しょく
せざるべし』
17
かくて
酒杯
さかづき
を
受
う
け、かつ
謝
しゃ
して
言
い
ひ
給
たま
ふ『これを
取
と
りて
互
たがひ
に
分󠄃
わか
ち
飮
の
め。
167㌻
18
われ
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ、
神
かみ
の
國
くに
の
來
きた
るまでは、われ
今
いま
よりのち
葡萄
ぶだう
の
果
み
より
成
な
るものを
飮
の
まじ』
19
またパンを
取
と
り
謝
しゃ
してさき、
弟子
でし
たちに
與
あた
へて
言
い
ひ
給
たま
ふ『これは
汝
なんぢ
らの
爲
ため
に
與
あた
ふる
我
わ
が
體
からだ
なり。
我
わ
が
記念
きねん
として
之
これ
を
行
おこな
へ』
20
夕餐󠄃
ゆふげ
ののち
酒杯
さかづき
をも
然
しか
して
言
い
ひ
給
たま
ふ『この
酒杯
さかづき
は
汝
なんぢ
らの
爲
ため
に
流
なが
す
我
わ
が
血
ち
によりて
立
た
つる
新
あたら
しき
契約
けいやく
なり。
21
然
さ
れど
視
み
よ、
我
われ
を
賣
う
る
者
もの
の
手
て
、われと
共
とも
に
食󠄃卓
しょくたく
の
上
うへ
にあり、
22
實
げ
に
人
ひと
の
子
こ
は、
定
さだ
められたる
如
ごと
く
逝󠄃
ゆ
くなり。
然
さ
れど
之
これ
をうる
者
もの
は
禍害󠄅
わざはひ
なるかな』
23
弟子
でし
たち
己
おのれ
らの
中
うち
にて
此
こ
の
事
こと
をなす
者
もの
は、
誰
たれ
ならんと
互
たがひ
に
問
と
ひ
始
はじ
む。
24
また
彼
かれ
らの
間
あひだ
に
己
おのれ
らの
中
うち
たれか
大
おほい
ならんとの
爭論
あらそひ
おこりたれば、
25
イエス
言
い
ひたまふ『
異邦人
いはうじん
の
王
わう
は、その
民
たみ
を
宰
つかさ
どり、また
民
たみ
を
支配
しはい
する
者
もの
は、
恩人
おんじん
と
稱
とな
へらる。
26
然
さ
れど
汝
なんぢ
らは
然
しか
あらざれ、
汝
なんぢ
等
ら
のうち
大
おほい
なる
者
もの
は
若
わか
き
者
もの
のごとく、
頭
かしら
たる
者
もの
は
事
つか
ふる
者
もの
の
如
ごと
くなれ。
27
食󠄃事
しょくじ
の
席
せき
に
著
つ
く
者
もの
と
事
つか
ふる
者
もの
とは、
何
いづ
れか
大
おほい
なる。
食󠄃事
しょくじ
の
席
せき
に
著
つ
く
者
もの
ならずや、
然
さ
れど
我
われ
は
汝
なんぢ
らの
中
うち
にて
事
つか
ふる
者
もの
のごとし。
28
汝
なんぢ
らは
我
わ
が
甞試
こゝろみ
のうちに
絕
た
えず
我
われ
とともに
居
を
りし
者
もの
なれば、
29
わが
父󠄃
ちち
の
我
われ
に
任
にん
じ
給
たま
へるごとく、
我
われ
も
亦
また
なんぢらに
國
くに
を
任
にん
ず。
30
これ
汝
なんぢ
らの
我
わ
が
國
くに
にて
我
わ
が
食󠄃卓
しょくたく
に
飮食󠄃
のみくひ
し、かつ
座位
くらゐ
に
坐
ざ
してイスラエルの
十二
じふに
の
族
やから
を
審
さば
かん
爲
ため
なり。
31
シモン、シモン、
視
み
よ、サタン
汝
なんぢ
らを
麥
むぎ
のごとく
篩
ふる
はんとて
請󠄃
こ
ひ
得
え
たり。
32
然
さ
れど
我
われ
なんぢの
爲
ため
にその
信仰
しんかう
の
失
う
せぬやうに
祈
いの
りたり、なんぢ
立
た
ち
歸
かへ
りてのち
兄弟
きゃうだい
たちを
堅
かた
うせよ』
33
シモン
言
い
ふ『
主
しゅ
よ、
我
われ
は
汝
なんぢ
とともに
獄
ひとや
にまでも、
死
し
にまでも
徃
ゆ
かんと
覺悟
かくご
せり』
34
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『ペテロよ
我
われ
なんぢに
吿
つ
ぐ、
今日
けふ
なんぢ
三度
みたび
われを
知
し
らずと
否
いな
むまでは
鷄
にはとり
鳴
な
かざるべし』
〘123㌻〙
168㌻
35
斯
かく
て
弟子
でし
たちに
言
い
ひ
給
たま
ふ『
財布
さいふ
・
嚢
ふくろ
・
鞋
くつ
をも
持
も
たせずして
汝
なんぢ
らを
遣󠄃
つかは
ししとき、
缺
か
けたる
所󠄃
ところ
ありしや』
彼
かれ
ら
言
い
ふ『
無
な
かりき』
36
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『されど
今
いま
は
財布
さいふ
ある
者
もの
は
之
これ
を
取
と
れ、
嚢
ふくろ
ある
者
もの
も
然
しか
すべし。また
劍
つるぎ
なき
者
もの
は
衣
ころも
を
賣
う
りて
劍
つるぎ
を
買
か
へ。
37
われ
汝
なんぢ
らに
吿
つ
ぐ「かれは
愆人
とがにん
と
共
とも
に
數
かぞ
へられたり」と
錄
しる
されたるは、
我
わ
が
身
み
に
成
なし
遂󠄅
と
げらるべし。
凡
おほよ
そ
我
われ
に
係
かゝ
はる
事
こと
は
成
なし
遂󠄅
と
げらるればなり』
38
弟子
でし
たち
言
い
ふ『
主
しゅ
、
見
み
たまへ、
茲
こゝ
に
劍
つるぎ
二振
ふたふり
あり』イエス
言
い
ひたまふ『
足
た
れり』
39
遂󠄅
つひ
に
出
い
でて
常
つね
のごとく、オリブ
山
やま
に
徃
ゆ
き
給
たま
へば、
弟子
でし
たちも
從
したが
ふ。
40
其處
そこ
に
至
いた
りて
彼
かれ
らに
言
い
ひたまふ『
誘惑
まどはし
に
入
い
らぬやうに
祈
いの
れ』
41
斯
かく
て
自
みづか
らは
石
いし
の
投
な
げらるる
程
ほど
かれらより
隔
へだ
てり、
跪
ひざま
づきて
祈
いの
り
言
い
ひたまふ、
42
『
父󠄃
ちち
よ、
御旨
みむね
ならば、
此
こ
の
酒杯
さかづき
を
我
われ
より
取
と
り
去
さ
りたまへ、
然
さ
れど
我
わ
が
意󠄃
こゝろ
にあらずして
御意󠄃
みこゝろ
の
成
な
らんことを
願
ねが
ふ』
43
時
とき
に
天
てん
より
御使
みつかひ
、
現
あらは
れて、イエスに
力
ちから
を
添
そ
ふ。
44
イエス
悲
かな
しみ
迫󠄃
せま
り、いよいよ
切
せつ
に
祈
いの
り
給
たま
へば、
汗
あせ
は
地上
ちじゃう
に
落
お
つる
血
ち
の
雫
しづく
の
如
ごと
し。
45
祈
いのり
を
了
を
へ、
起󠄃
た
ちて
弟子
でし
たちの
許
もと
にきたり、その
憂
うれひ
によりて
眠
ねむ
れるを
見
み
て
言
い
ひたまふ、
46
『なんぞ
眠
ねむ
るか、
起󠄃
た
て
誘惑
まどはし
に
入
い
らぬやうに
祈
いの
れ』
47
なほ
語
かた
りゐ
給
たま
ふとき、
視
み
よ、
群衆
ぐんじゅう
あらはれ、
十二
じふに
の
一人
ひとり
なるユダ
先
さき
だち
來
きた
り、イエスに
接吻
くちつけ
せんとて
近󠄃寄
ちかよ
りたれば、
48
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『ユダ、なんぢは
接吻
くちつけ
をもて
人
ひと
の
子
こ
を
賣
う
るか』
49
御側
みそば
に
居
を
る
者
もの
ども
事
こと
の
及
およ
ばんとするを
見
み
て
言
い
ふ『
主
しゅ
よ、われら
劍
つるぎ
をもて
擊
う
つべきか』
50
その
中
うち
の
一人
ひとり
、
大
だい
祭司
さいし
の
僕
しもべ
を
擊
う
ちて、
右
みぎ
の
耳
みみ
を
切
き
り
落
おと
せり。
51
イエス
答
こた
へて
言
い
ひたまふ『
之
これ
にてゆるせ』
而
しか
して
僕
しもべ
の
耳
みみ
に
手
て
をつけて
醫
いや
し
給
たま
ふ。
169㌻
52
かくて
己
おのれ
に
向
むか
ひて
來
きた
れる
祭司長
さいしちゃう
・
宮守頭
みやもりがしら
・
長老
ちゃうらう
らに
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢら
强盜
がうたう
に
向
むか
ふごとく
劍
つるぎ
と
棒
ぼう
とを
持
も
ちて
出
い
できたるか。
53
我
われ
は
日々
ひび
なんぢらと
共
とも
に
宮
みや
に
居
を
りしに
我
わ
が
上
うへ
に
手
て
を
伸
の
べざりき。
然
さ
れど
今
いま
は
汝
なんぢ
らの
時
とき
、また
暗󠄃黑
くらき
の
權威
けんゐ
なり』
54
遂󠄅
つひ
に
人々
ひとびと
イエスを
捕
とら
へて、
大
だい
祭司
さいし
の
家
いへ
に
曵
ひ
きゆく。ペテロ
遠󠄄
とほ
く
離
はな
れて
從
したが
ふ。
55
人々
ひとびと
、
中庭
なかには
のうちに
火
ひ
を
焚
た
きて、
諸共
もろとも
に
坐
ざ
したれば、ペテロもその
中
なか
に
坐
ざ
す。
56
或
あ
る
婢女
はしため
ペテロの
火
ひ
の
光
ひかり
を
受
う
けて
坐
ざ
し
居
を
るを
見
み
、これに
目
め
を
注
そゝ
ぎて
言
い
ふ『この
人
ひと
も
彼
かれ
と
偕
とも
にゐたり』
57
ペテロ
肯
うけが
はずして
言
い
ふ『をんなよ、
我
われ
は
彼
かれ
を
知
し
らず』
58
暫
しばら
くして
他
ほか
の
者
もの
ペテロを
見
み
て
言
い
ふ『なんぢも
彼
かれ
の
黨與
ともがら
なり』ペテロ
言
い
ふ『
人
ひと
よ、
然
しか
らず』
59
一
ひと
時
とき
ばかりして
又󠄂
また
ほかの
男
をとこ
、
言
い
ひ
張
は
りて
言
い
ふ『まさしく
此
こ
の
人
ひと
も
彼
かれ
とともに
在
あ
りき、
是
これ
ガリラヤ
人
びと
なり』
〘124㌻〙
60
ペテロ
言
い
ふ『
人
ひと
よ、
我
われ
なんぢの
言
い
ふことを
知
し
らず』なほ
言
い
ひ
終󠄃
を
へぬに
頓
やが
て
鷄
にはとり
鳴
な
きぬ。
61
主
しゅ
、
振反
ふりかへ
りてペテロに
目
め
をとめ
給
たま
ふ。ここにペテロ
主
しゅ
の『
今日
けふ
にはとり
鳴
な
く
前󠄃
まへ
に、なんぢ
三度
みたび
われを
否
いな
まん』と
言
い
ひ
給
たま
ひし
御言
みことば
を
憶
おも
ひいだし、
62
外
そと
に
出
い
でて
甚
いた
く
泣
な
けり。
63
守
まも
る
者
もの
どもイエスを
嘲弄
てうろう
し、
之
これ
を
打
う
ち、
64
その
目
め
を
蔽
おほ
ひ
問
と
ひて
言
い
ふ『
預言
よげん
せよ、
汝
なんぢ
を
擊
う
ちし
者
もの
は
誰
たれ
なるか』
65
この
他
ほか
なほ
多
おほ
くのことを
言
い
ひて、
譏
そし
れり。
66
夜明
よあけ
になりて
民
たみ
の
長老
ちゃうらう
・
祭司長
さいしちゃう
・
學者
がくしゃ
ら
相
あひ
集
あつま
り、イエスをその
議會
ぎくわい
に
曵
ひ
き
出
いだ
して
言
い
ふ、
67
『なんぢ
若
も
しキリストならば、
我
われ
らに
言
い
へ』イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『われ
言
い
ふとも
汝
なんぢ
ら
信
しん
ぜじ、
68
又󠄂
また
われ
問
と
ふとも
汝
なんぢ
ら
答
こた
へじ。
69
然
さ
れど
人
ひと
の
子
こ
は
今
いま
よりのち
神
かみ
の
能力
ちから
の
右
みぎ
に
坐
ざ
せん』
70
皆
みな
いふ『されば
汝
なんぢ
は
神
かみ
の
子
こ
なるか』
答
こた
へ
給
たま
ふ『なんぢらの
言
い
ふごとく
我
われ
はそれなり』
170㌻
71
彼
かれ
ら
言
い
ふ『
何
なに
ぞなほ
他
ほか
に
證據
しょうこ
を
求
もと
めんや。
我
われ
ら
自
みづか
らその
口
くち
より
聞
き
けり』
第23章
1
民衆
みんしゅう
みな
起󠄃
た
ちて、イエスをピラトの
前󠄃
まへ
に
曵
ひ
きゆき、
2
訴
うった
へ
出
い
でて
言
い
ふ『われら
此
こ
の
人
ひと
が、わが
國
くに
の
民
たみ
を
惑
まどは
し、
貢
みつぎ
をカイザルに
納󠄃
をさ
むるを
禁
きん
じ、かつ
自
みづか
ら
王
わう
なるキリストと
稱
とな
ふるを
認󠄃
みと
めたり』
3
ピラト、イエスに
問
と
ひて
言
い
ふ『なんぢはユダヤ
人
びと
の
王
わう
なるか』
答
こた
へて
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢの
言
い
ふが
如
ごと
し』
4
ピラト
祭司長
さいしちゃう
らと
群衆
ぐんじゅう
とに
言
い
ふ『われ
此
こ
の
人
ひと
に
愆
とが
あるを
見
み
ず』
5
彼
かれ
等
ら
ますます
言
い
ひ
募
つの
り『かれはユダヤ
全󠄃國
ぜんこく
に
敎
をしへ
をなして
民
たみ
を
騷
さわ
がし、ガリラヤより
始
はじ
めて、
此處
ここ
に
至
いた
る』と
言
い
ふ。
6
ピラト
之
これ
を
聞
き
き、そのガリラヤ
人
びと
なるかを
問
と
ひて、
7
ヘロデの
權下
けんか
の
者
もの
なるを
知
し
り、ヘロデ
此
こ
の
頃
ころ
エルサレムに
居
ゐ
たれば、イエスをその
許
もと
に
送󠄃
おく
れり。
8
ヘロデ、イエスを
見
み
て
甚
いた
く
喜
よろこ
ぶ。これは
彼
かれ
に
就
つ
きて
聞
き
く
所󠄃
ところ
ありたれば、
久
ひさ
しく
逢
あ
はんことを
欲
ほっ
し、
何
なに
をか
徴
しるし
を
行
おこな
ふを
見
み
んと
望󠄇
のぞ
み
居
ゐ
たる
故
ゆゑ
なり。
9
かくて
多
おほ
くの
言
ことば
をもて
問
と
ひたれど、イエス
何
なに
をも
答
こた
へ
給
たま
はず。
10
祭司長
さいしちゃう
・
學者
がくしゃ
ら
起󠄃
た
ちて
激甚
ていた
くイエスを
訴
うった
ふ。
11
ヘロデその
兵卒
へいそつ
と
共
とも
にイエスを
侮
あなど
り、かつ
嘲弄
てうろう
し、
華美
はなやか
なる
衣
ころも
を
著
き
せて、ピラトに
返󠄄
かへ
す。
12
ヘロデとピラトと
前󠄃
さき
には
仇
あた
たりしが、
此
こ
の
日
ひ
たがひに
親
した
しくなれり。
13
ピラト、
祭司長
さいしちゃう
らと
司
つかさ
らと
民
たみ
とを
呼
よ
び
集
あつ
めて
言
い
ふ、
14
『
汝
なんぢ
らこの
人
ひと
を
民
たみ
を
惑
まどは
す
者
もの
として
曵
ひ
き
來
きた
れり。
視
み
よ、われ
汝
なんぢ
らの
前󠄃
まへ
にて
訊
ただ
したれど、
其
そ
の
訴
うった
ふる
所󠄃
ところ
に
就
つ
きて、この
人
ひと
に
愆
とが
あるを
見
み
ず。
〘125㌻〙
15
ヘロデも
亦
また
然
しか
り、
彼
かれ
を
我
われ
らに
返󠄄
かへ
したり。
視
み
よ、
彼
かれ
は
死
し
に
當
あた
るべき
業
わざ
を
爲
な
さざりき。
16
されば
懲
こら
しめて
之
これ
を
赦
ゆる
さん』
17
[なし]《[*]》[*異本「かれは祭每に必す一人を赦すべきなり」との句あり。]
18
民衆
みんしゅう
ともに
叫
さけ
びて
言
い
ふ『この
人
ひと
を
除
のぞ
け、
我
われ
らにバラバを
赦
ゆる
せ』
171㌻
19
此
こ
のバラバは、
都
みやこ
に
起󠄃
おこ
りし
一揆
いっき
と
殺人
ひとごろし
との
故
ゆゑ
によりて、
獄
ひとや
に
入
い
れられたる
者
もの
なり。
20
ピラトはイエスを
赦
ゆる
さんと
欲
ほっ
して、
再
ふたゝ
び
彼
かれ
らに
吿
つ
げたれど、
21
彼
かれ
ら
叫
さけ
びて『
十字架
じふじか
につけよ、
十字架
じふじか
につけよ』と
言
い
ふ。
22
ピラト
三度
みたび
まで『
彼
かれ
は
何
なに
の
惡事
あくじ
を
爲
な
ししか、
我
われ
その
死
し
に
當
あた
るべき
業
わざ
を
見
み
ず、
故
ゆゑ
に
懲
こら
しめて
赦
ゆる
さん』と
言
い
ふ。
23
されど
人々
ひとびと
、
大聲
おほごゑ
をあげ
迫󠄃
せま
りて、
十字架
じふじか
につけんことを
求
もと
めたれば、
遂󠄅
つひ
にその
聲
こゑ
勝󠄃
か
てり。
24
ここにピラトその
求
もとめ
の
如
ごと
くすべしと
言渡
いひわた
し、
25
その
求
もと
むるままに、かの
一揆
いっき
と
殺人
ひとごろし
との
故
ゆゑ
によりて
獄
ひとや
に
入
い
れられたる
者
もの
を
赦
ゆる
し、イエスを
付
わた
して
彼
かれ
らの
心
こゝろ
の
隨
まま
ならしめたり。
26
人々
ひとびと
イエスを
曵
ひ
きゆく
時
とき
、シモンといふクレネ
人
びと
の
田舍
ゐなか
より
來
きた
るを
執
とら
へ、
十字架
じふじか
を
負󠄅
お
はせてイエスの
後
うしろ
に
從
したが
はしむ。
27
民
たみ
の
大
おほい
なる
群
むれ
と、
歎
なげ
き
悲
かな
しめる
女
をんな
たちの
群
むれ
と
之
これ
に
從
したが
ふ。
28
イエス
振反
ふりかへ
りて
女
をんな
たちに
言
い
ひ
給
たま
ふ『エルサレムの
娘
むすめ
よ、わが
爲
ため
に
泣
な
くな、ただ
己
おの
がため、
己
おの
が
子
こ
のために
泣
な
け。
29
視
み
よ「
石婦󠄃
うまずめ
、
兒
こ
產
う
まぬ
腹
はら
、
哺
の
ませぬ
乳󠄃
ちち
は
幸福
さいはひ
なり」と
言
い
ふ
日
ひ
きたらん。
30
その
時
とき
ひとびと「
山
やま
に
向
むか
ひて
我
われ
らの
上
うへ
に
倒
たふ
れよ、
岡
をか
に
向
むか
ひて
我
われ
らを
掩
おほ
へ」と
言
い
ひ
出
い
でん。
31
もし
靑
あを
樹
き
に
斯
か
く
爲
な
さば、
枯樹
かれき
は
如何
いか
にせられん』
32
また
他
ほか
に
二人
ふたり
の
惡人
あくにん
をも、
死罪
しざい
に
行
おこな
はんとてイエスと
共
とも
に
曵
ひ
きゆく。
33
髑髏
されかうべ
といふ
處
ところ
に
到
いた
りて、イエスを
十字架
じふじか
につけ、また
惡人
あくにん
の
一人
ひとり
をその
右
みぎ
、
一人
ひとり
をその
左
ひだり
に
十字架
じふじか
につく。
34
かくてイエス
言
い
ひたまふ『
父󠄃
ちち
よ、
彼
かれ
らを
赦
ゆる
し
給
たま
へ、その
爲
な
す
所󠄃
ところ
を
知
し
らざればなり』
彼
かれ
らイエスの
衣
ころも
を
分󠄃
わか
ちて
䰗取
くじとり
にせり、
172㌻
35
民
たみ
は
立
た
ちて
見
み
ゐたり。
司
つかさ
たちも
嘲
あざけ
りて
言
い
ふ『かれは
他人
たにん
を
救
すく
へり、もし
神
かみ
の
選󠄄
えら
び
給
たま
ひしキリストならば、
己
おのれ
をも
救
すく
へかし』
36
兵卒
へいそつ
どもも
嘲弄
てうろう
しつつ、
近󠄃
ちか
よりて
酸
す
き
葡萄酒
ぶだうしゅ
をさし
出
いだ
して
言
い
ふ、
37
『なんぢ
若
も
しユダヤ
人
びと
の
王
わう
ならば、
己
おのれ
を
救
すく
へ』
38
又󠄂
また
イエスの
上
うへ
には『これはユダヤ
人
びと
の
王
わう
なり』との
罪標
すてふだ
あり。
39
十字架
じふじか
に
懸
か
けられたる
惡人
あくにん
の
一人
ひとり
、イエスを
譏
そし
りて
言
い
ふ『なんぢはキリストならずや、
己
おのれ
と
我
われ
らとを
救
すく
へ』
〘126㌻〙
40
他
ほか
の
者
もの
これに
答
こた
へ
禁
いまし
めて
言
い
ふ『なんぢ
同
おな
じく
罪
つみ
に
定
さだ
められながら、
神
かみ
を
畏
おそ
れぬか。
41
我
われ
らは
爲
な
しし
事
こと
の
報
むくい
を
受
う
くるなれば
當然
たうぜん
なり。されど
此
こ
の
人
ひと
は
何
なに
の
不
ふ
善
ぜん
をも
爲
な
さざりき』
42
また
言
い
ふ『イエスよ、
御國
みくに
に
入
い
り
給
たま
ふとき、
我
われ
を
憶
おぼ
えたまえ』
43
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『われ
誠
まこと
に
汝
なんぢ
に
吿
つ
ぐ、
今日
けふ
なんぢは
我
われ
と
偕
とも
にパラダイスに
在
あ
るべし』
44
晝
ひる
の
十二
じふに
時
じ
ごろ、
日
ひ
、
光
ひかり
をうしなひ、
地
ち
のうへ
徧
あまね
く
暗󠄃
くら
くなりて、
三時
さんじ
に
及
およ
び、
45
聖󠄄所󠄃
せいじょ
の
幕
まく
、
眞中
まなか
より
裂
さ
けたり。
46
イエス
大聲
おほごゑ
に
呼
よば
はりて
言
い
ひたまふ『
父󠄃
ちち
よ、わが
靈
れい
を
御手
みて
にゆだぬ』
斯
か
く
言
い
ひて
息
いき
絕
た
えたまふ。
47
百卒長
ひゃくそつちゃう
この
有
あ
りし
事
こと
を
見
み
て、
神
かみ
を
崇
あが
めて
言
い
ふ『
實
じつ
にこの
人
ひと
は
義人
ぎじん
なりき』
48
これを
見
み
んとて
集
あつま
りたる
群衆
ぐんじゅう
も、ありし
事
こと
どもを
見
み
て、みな
胸
むね
を
打
う
ちつつ
歸
かへ
れり。
49
凡
すべ
てイエスの
相識
しるべ
の
者
もの
およびガリラヤより
從
したが
ひ
來
きた
れる
女
をんな
たちも、
遙
はるか
に
立
た
ちて
此
これ
等
ら
のことを
見
み
たり。
50
議員
ぎゐん
にして
善
ぜん
かつ
義
ぎ
なるヨセフといふ
人
ひと
あり。
51
――この
人
ひと
はかの
評議
ひゃうぎ
と
仕業
しわざ
とに
與
くみ
せざりき――ユダヤの
町
まち
なるアリマタヤの
者
もの
にて、
神
かみ
の
國
くに
を
待
ま
ちのぞめり。
52
此
こ
の
人
ひと
ピラトの
許
もと
にゆき、イエスの
屍體
しかばね
を
乞
こ
ひ、
53
これを
取
と
りおろし、
亞麻󠄃
あま
布
ぬの
にて
包
つつ
み、
巖
いは
に
鑿
ほ
りたる
未
いま
だ
人
ひと
を
葬
はうむ
りし
事
こと
なき
墓
はか
に
納󠄃
をさ
めたり。
173㌻
54
この
日
ひ
は
準備
そなへ
日
び
なり、かつ
安息
あんそく
日
にち
近󠄃
ちか
づきぬ。
55
ガリラヤよりイエスと
共
とも
に
來
きた
りし
女
をんな
たち
後
あと
に
從
したが
ひ、その
墓
はか
と
屍體
しかばね
の
納󠄃
をさ
められたる
樣
さま
とを
見
み
、
56
歸
かへ
りて
香料
かうれう
と
香
にほひ
油
あぶら
とを
備
そな
ふ。
斯
かく
て
誡命
いましめ
に
遵󠄅
したが
ひて、
安息
あんそく
日
にち
を
休
やす
みたり。
第24章
1
一週󠄃
ひとまはり
の
初
はじめ
の
日
ひ
、
朝󠄃
あさ
まだき、
女
をんな
たち
備
そな
へたる
香料
かうれう
を
携
たづさ
へて
墓
はか
にゆく。
2
然
しか
るに
石
いし
の
旣
すで
に
墓
はか
より
轉
まろば
し
除
の
けあるを
見
み
、
3
內
うち
に
入
い
りたるに、
主
しゅ
イエスの
屍體
しかばね
を
見
み
ず、
4
これが
爲
ため
に
狼狽
うろた
へをりしに、
視
み
よ、
輝
かゞや
ける
衣
ころも
を
著
き
たる
二人
ふたり
の
人
ひと
その
傍
かたは
らに
立
た
てり。
5
女
をんな
たち
懼
おそ
れて
面
おもて
を
地
ち
に
伏
ふ
せたれば、その
二人
ふたり
の
者
もの
いふ『なんぞ
死
し
にし
者
もの
どもの
中
うち
に
生
い
ける
者
もの
を
尋󠄃
たづ
ぬるか。
6
彼
かれ
は
此處
ここ
に
在
いま
さず、
甦
よみが
へり
給
たま
へり。
尙
なほ
ガリラヤに
居給
ゐたま
へるとき、
如何
いか
に
語
かた
り
給
たま
ひしかを
憶
おも
ひ
出
い
でよ。
7
即
すなは
ち「
人
ひと
の
子
こ
は
必
かなら
ず
罪
つみ
ある
人
ひと
の
手
て
に
付
わた
され、
十字架
じふじか
につけられ、かつ
三日
みっか
めに
甦
よみが
へるべし」と
言
い
ひ
給
たま
へり』
8
ここに
彼
かれ
らその
御言
みことば
を
憶
おも
ひ
出
い
で、
9
墓
はか
より
歸
かへ
りて、
凡
すべ
て
此
これ
等
ら
のことを
十
じふ
一
いち
弟子
でし
および
凡
すべ
て
他
ほか
の
弟子
でし
たちに
吿
つ
ぐ。
〘127㌻〙
10
この
女
をんな
たちはマグダラのマリヤ、ヨハンナ
及
およ
びヤコブの
母
はは
マリヤなり、
而
しか
して
彼
かれ
らと
共
とも
に
在
あ
りし
他
ほか
の
女
をんな
たちも、
之
これ
を
使徒
しと
たちに
吿
つ
げたり。
11
使徒
しと
たちは
其
そ
の
言
ことば
を
妄語
たはごと
と
思
おも
ひて
信
しん
ぜず。
12
〔《[*]》ペテロは
起󠄃
た
ちて
墓
はか
に
走
はし
りゆき、
屈
かが
みて
布
ぬの
のみあるを
見
み
、ありし
事
こと
を
怪
あや
しみつつ
歸
かへ
れり〕[*異本十二節を缺く。]
13
視
み
よ、この
日
ひ
二人
ふたり
の
弟子
でし
、エルサレムより
三里
さんり
ばかり
隔
へだ
たりたるエマオといふ
村
むら
に
徃
ゆ
きつつ、
14
凡
すべ
て
有
あ
りし
事
こと
どもを
互
たがひ
に
語
かた
りあふ。
15
語
かた
りかつ
論
ろん
じあふ
程
ほど
に、イエス
自
みづか
ら
近󠄃
ちか
づきて
共
とも
に
徃
ゆ
き
給
たま
ふ。
16
されど
彼
かれ
らの
目
め
遮󠄄
さ
へられて、イエスたるを
認󠄃
みと
むること
能
あた
はず。
174㌻
17
イエス
彼
かれ
らに
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢら
步
あゆ
みつつ
互
たがひ
に
語
かた
りあふ
言
こと
は
何
なん
ぞや』かれら
悲
かな
しげなる
狀
さま
にて
立
た
ち
止
とゞま
り、
18
その
一人
ひとり
なるクレオパと
名
な
づくるもの
答
こた
へて
言
い
ふ『なんぢエルサレムに
寓
やど
り
居
ゐ
て、
獨
ひと
り
此
こ
の
頃
ころ
かしこに
起󠄃
おこ
りし
事
こと
どもを
知
し
らぬか』
19
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『
如何
いか
なる
事
こと
ぞ』
答
こた
へて
言
い
ふ『ナザレのイエスの
事
こと
なり、
彼
かれ
は
神
かみ
と
凡
すべ
ての
民
たみ
との
前󠄃
まへ
にて、
業
わざ
にも
言
ことば
にも
能力
ちから
ある
預言者
よげんしゃ
なりしに、
20
祭司長
さいしちゃう
ら
及
およ
び
我
わ
が
司
つかさ
らは、
死罪
しざい
に
定
さだ
めんとて
之
これ
を
付
わた
し
遂󠄅
つひ
に
十字架
じふじか
につけたり。
21
我
われ
らはイスラエルを
贖
あがな
ふべき
者
もの
は、この
人
ひと
なりと
望󠄇
のぞ
みゐたり、
然
しか
のみならず、
此
こ
の
事
こと
の
有
あ
りしより
今日
けふ
ははや
三日
みっか
めなるが、
22
なほ
我等
われら
のうちの
或
ある
女
をんな
たち、
我
われ
らを
驚
をどろ
かせり、
即
すなは
ち
彼
かれ
ら
朝󠄃
あさ
夙
はや
く
墓
はか
に
徃
ゆ
きたるに、
23
屍體
しかばね
を
見
み
ずして
歸
かへ
り、かつ
御使
みつかひ
たち
現
あらは
れて、イエスは
活
い
き
給
たま
ふと
吿
つ
げたりと
言
い
ふ。
24
我
われ
らの
朋輩
ともがら
の
數人
すにん
もまた
墓
はか
に
徃
ゆ
きて
見
み
れば、
正
まさ
しく
女
をんな
たちの
言
い
ひし
如
ごと
くにしてイエスを
見
み
ざりき』
25
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『ああ
愚
おろか
にして
預言者
よげんしゃ
たちの
語
かた
りたる
凡
すべ
てのことを
信
しん
ずるに
心
こゝろ
鈍
にぶ
き
者
もの
よ。
26
キリストは
必
かなら
ず
此
これ
らの
苦難
くるしみ
を
受
う
けて、
其
そ
の
榮光
えいくわう
に
入
い
るべきならずや』
27
かくてモーセ
及
およ
び
凡
すべ
ての
預言者
よげんしゃ
をはじめ、
己
おのれ
に
就
つ
きて
凡
すべ
ての
聖󠄄書
せいしょ
に
錄
しる
したる
所󠄃
ところ
を
説
と
き
示
しめ
したまふ。
28
遂󠄅
つひ
に
徃
ゆ
く
所󠄃
ところ
の
村
むら
に
近󠄃
ちか
づきしに、イエスなほ
進󠄃
すゝ
みゆく
樣
さま
なれば、
29
强
し
ひて
止
と
めて
言
い
ふ『
我
われ
らと
共
とも
に
留
とゞま
れ、
時
とき
夕
ゆふべ
に
及
およ
びて、
日
ひ
も
早
は
や
暮
く
れんとす』
乃
すなは
ち
留
とゞま
らんとて
入
い
りたまふ。
30
共
とも
に
食󠄃事
しょくじ
の
席
せき
に
著
つ
きたまふ
時
とき
、パンを
取
と
りて
祝
しく
し、
擘
さ
きて
與
あた
へ
給
たま
へば、
31
彼
かれ
らの
目
め
開
ひら
けてイエスなるを
認󠄃
みと
む、
而
しか
してイエス
見
み
えずなり
給
たま
ふ。
32
かれら
互
たがひ
に
言
い
ふ『
途󠄃
みち
にて
我
われ
らと
語
かた
り、
我
われ
らに
聖󠄄書
せいしょ
を
説明
ときあか
し
給
たま
へるとき、
我
われ
らの
心
こゝろ
、
內
うち
に
燃
も
えしならずや』
175㌻
33
かくて
直
ただ
ちに
立
た
ちエルサレムに
歸
かへ
りて
見
み
れば、
十
じふ
一
いち
弟子
でし
および
之
これ
と
偕
とも
なる
者
もの
あつまり
居
ゐ
て
言
い
ふ、
〘128㌻〙
34
『
主
しゅ
は
實
じつ
に
甦
よみが
へりて、シモンに
現
あらは
れ
給
たま
へり』
35
二人
ふたり
の
者
もの
もまた
途󠄃
みち
にて
有
あ
りし
事
こと
と、パンを
擘
さ
き
給
たま
ふによりてイエスを
認󠄃
みと
めし
事
こと
とを
述󠄃
の
ぶ。
36
此
これ
等
ら
のことを
語
かた
る
程
ほど
に、イエスその
中
なか
に
立
た
ち《[*]》〔『
平󠄃安
へいあん
なんぢらに
在
あ
れ』と
言
い
ひ〕
給
たま
ふ。[*異本この句を缺く。]
37
かれら
怖
お
ぢ
懼
おそ
れて、
見
み
る
所󠄃
ところ
のものを
靈
れい
ならんと
思
おも
ひしに、
38
イエス
言
い
ひ
給
たま
ふ『なんぢら
何
なに
ぞ
心
こゝろ
騷
さわ
ぐか、
何
なに
ゆゑ
心
こゝろ
に
疑惑
うたがひ
おこるか、
39
我
わ
が
手
て
わが
足
あし
を
見
み
よ、これ
我
われ
なり。
我
われ
を
撫
な
でて
見
み
よ、
靈
れい
には
肉
にく
と
骨
ほね
となし、
我
われ
にはあり、
汝
なんぢ
らの
見
み
るごとし』
40
〔《[*]》
斯
か
く
言
い
ひて
手
て
と
足
あし
とを
示
しめ
し
給
たま
ふ〕[*異本四十節を缺く。]
41
かれら
歡喜
よろこび
の
餘
あまり
に
信
しん
ぜずして
怪
あや
しめる
時
とき
、イエス
言
い
ひたまふ『
此處
ここ
に
何
なに
か
食󠄃物
しょくもつ
あるか』
42
かれら
炙
あぶ
りたる
魚
うを
一片
ひときれ
を
捧
ささ
げたれば、
43
之
これ
を
取
と
り、その
前󠄃
まへ
にて
食󠄃
しょく
し
給
たま
へり。
44
また
言
い
ひ
給
たま
ふ『これらの
事
こと
は、
我
わ
がなほ
汝
なんぢ
らと
偕
とも
に
在
あ
りし
時
とき
に
語
かた
りて、
我
われ
に
就
つ
きモーセの
律法
おきて
・
預言者
よげんしゃ
および
詩
し
篇
へん
に
錄
しる
されたる
凡
すべ
ての
事
こと
は、
必
かなら
ず
遂󠄅
と
げらるべしと
言
い
ひし
所󠄃
ところ
なり』
45
ここに
聖󠄄書
せいしょ
を
悟
さと
らしめんとて、
彼
かれ
らの
心
こゝろ
を
開
ひら
きて
言
い
ひ
給
たま
ふ、
46
『かく
錄
しる
されたり、キリストは
苦難
くるしみ
を
受
う
けて、
三日
みっか
めに
死人
しにん
の
中
うち
より
甦
よみが
へり、
47
且
かつ
その
名
な
によりて
罪
つみ
の
赦
ゆるし
を
得
え
さする
悔改
くいあらため
は、エルサレムより
始
はじま
りて、もろもろの
國人
くにびと
に
宣傳
のべつた
へらるべしと。
48
汝
なんぢ
らは
此
これ
等
ら
のことの
證人
しょうにん
なり。
49
視
み
よ、
我
われ
は
父󠄃
ちち
の
約
やく
し
給
たま
へるものを
汝
なんぢ
らに
贈
おく
る。
汝
なんぢ
ら
上
うへ
より
能力
ちから
を
著
き
せらるるまでは
都
みやこ
に
留
とゞま
れ』
176㌻
50
遂󠄅
つひ
にイエス
彼
かれ
らをベタニヤに
連
つ
れゆき、
手
て
を
擧
あ
げて
之
これ
を
祝
しく
したまふ。
51
祝
しく
する
間
うち
に、
彼
かれ
らを
離
はな
れ《[*]》〔
天
てん
に
擧
あ
げられ〕
給
たま
ふ。[*異本この句を缺く。]
52
彼
かれ
ら[
之
これ
を
拜
はい
し]
大
おほい
なる
歡喜
よろこび
をもてエルサレムに
歸
かへ
り、
53
常
つね
に
宮
みや
に
在
あ
りて、
神
かみ
を
讃
ほ
めゐたり。
〘129㌻〙
177㌻